第10話 齟齬
お父さんとお母さんの動きは素早くて、は私がはっとした時には何も言わずに立ち上がっていた。言わずもがなこんな時間に帰ってくるのは1人しかいないだろう。
お父さんがつっかえをはずして出てみれば実際そこにいたのは兄だった。それに前とあまり変わってないように見える。どうやらしっかりと食べてはいるみたいだ。さすがに盗みとかしてないといいけど。
「ルードゥ、、、お前!俺たちがどれだけ心配したと思って、、、!」
変わってない兄の姿を見て安堵したのか、父は不安をぶつけるように言った。
「————してないだろ、、、」
「は、、、?何を言って、、、」
「どうせ俺の心配なんてしてないだろって言ってんだよ!!」
叫ぶような声に父も思わず黙り私も母も面を食らったような顔をしているはずだ。
「親父も母さんも、ルインが生まれてから俺に興味がなくなったんだろ?そりゃそうだよなぁ、表向き素直で優秀な可愛い娘と不出来で頭も悪い息子、どっちがいいかなんてわかりきってる」
そんなわけない!お父さんだって厳しいことを言ってもお兄ちゃんのことを心配していた。お母さんだって気が気じゃなかった。
「ルインが魔術を使えるようになってからは特にそうだった。ルインは褒められて反対に使えない俺はまた比較された!みんなが俺を妹に劣った不出来な兄だって馬鹿にしてきた!言って奴らだって使えないのに!」
目が合った。足が震えた。呼吸が浅くなった。殺される、そう思った。
「お前が悪いんだぞルイン、、、お前がいる限り俺は一生馬鹿にし続けられる、、、俺はずっと1人の人間として見られない!お前の引き立て役にしかならねえんだよッ!」
そんなこと、、、
「ムカついた。お前は大したことないって、全然まだまだだって、、、お前がくだらない謙遜をするたびに俺が貶められた。内心じゃ人のことを馬鹿にしてるくせに。いい子ぶって、、、俺が何言っても喋りもしねえくせにによッ!」
それは私が何言ったって兄ちゃんが、、、
「結局俺のことを理解してくれたのはモニカだけだった、、、モニカだけがわかってくれた、、、」
誰も何も言えなかった。きっとお兄ちゃんは勘違いしてる。でもそれはお兄ちゃんの周りの環境がそうさせたんだ。何も知らない間に誰かが勝手に追い詰めてしまっていた。
それに誰も気づかなかった。気づけなかった。いつのまにか深い溝を作ってしまったんだ。
「———お前は勘違いしてる、、、でもそれは俺たちのせいだ。すまなかった、、、」
そう溢したのは父だった。
「———ごめんなさい、もっと早く気づくべきだった。でも私たちはあなたのことを馬鹿にしたことなんてないし興味ないなんて思ったことないわ、、、。もちろんルインもよ。だから話し合いましょう、、、?きっと話せばわかるわ、、、」
母も続くように言った。場を静寂が支配する。せめて話合えばきっと分かり合える。お兄ちゃんが帰ってきてくれれば、、、。
「———そっか、やっぱりわかってくれないか。それならいいんだ。みんな騙されてるだけなんだし、、、きっとすぐにわかる」
え、、、、、、、、、?
どういうこと、、、?わかってもらえなかった、、、?
それに、、、
「騙されてるって、、、誰に、、、?」
「そんなの決まってるだろ、、、?
目が合った、、、、、、、、
————お前だよ、卑劣な魔女が、」
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