第7話 失望

「なんで返事しないんだよ!それでお前は何やってるんだ!?」


 ピエールか。そんなの中を見ればわかるだろうに。そもそもこんな臭いがしてるのにわかんないのか?やっぱり馬鹿は馬鹿なんだな。


「おい、説明しろよ!なんで———」


「やめてピエール」



「なんで止めるんだよ!こいつがなんも言わないから———」


「わかるでしょ!」


 半ば叫ぶような声だった。彼女は俯き手をぎゅっと握っている。


「、、、、、、」


「ユーグに言わせるのはやめてあげて、」


「じゃあ本当に燃やしてるのは、、、」




「魔女だよ。僕の母様でもあるけど」


「「、、、、、、」」


 エルの声は震えていたし今も俯きながら震えている。ピエールも青くなったままだ。そりゃ親の死体を燃やしている子供がいたらそうなるだろう。


 火葬なんて滅多にしないし誰だって自分やその家族を死体とはいえ燃やすのには抵抗がある。普通なら土葬だ。でも僕にはそんなお金はない。そもそも魔女を埋葬するって言って誰が力を貸してくれんだろうか。



「これは火葬と言って、父様から教えてもらったんだけど、、、遺体を燃やしてその骨を埋めるんだ。腐敗を防げるし棺も必要ないから安く済む。それにこれ以上母様を貶められたくはないしね」


 パチパチと炎が燃える。臭いもさっきよりマシになってきた。2人はさっきから固まったままだけど、まぁ石を投げられないだけいいか。


「そろそろ追加で薪を入れたほうがいいか、ところで2人は何しに来たの?父様や母様に止められなかったの?僕と一緒にいると君らも魔女にされるのに。早く帰った方がいい」


 彼らが何しに来たのかわからない。きっと小さな村だし噂は広がってるはずだ。だからもう関わってくることなんてないと思ったのに。両親だって関わって欲しくないだろう。


「、、、何しに来ただって?帰った方がいいだって?!」


 キレてる?僕は彼らのことを思って言っただけなのになにを怒ってるんだ?


「ふざけんなよ!!」


 ガッ、と言う衝撃と共に僕の体は吹き飛んだ。煉瓦の塀に体を強くうち思わずグッという悲鳴が漏れた。


 、、、、、、、、、、、、、は?



「俺はお前のことは大っ嫌いだけどな!頭は良くて憎ったらしいことを言うけど根はいい奴だって思ってた!友達として信用してたッ!」


 痛い。


「だからッ!お前の母さんの話を聞いた時に何かの間違いだと思った!みんながお前を罵倒して石を投げたって聞いた時は心配したし間違ってるって思った!」


「なのにッ!お前はッ!俺たちのことをそんな風に考えてたんだなッ!結局俺たちのことを馬鹿にしてたんだろ!お前は俺たちのことを友達じゃなくてそこら辺にいるやつと同じですぐに裏切るようなやつだと思ってだんだろッ!」


 痛い。


「魔女がなんだよッ!異端者がなんだよッ!なんでずっと一緒に過ごしてきた俺たちを信じないんだよッ!なんで頼らなかったッ!?」


「ピエールもうやめて!やりずぎよ!」


「離せよエル!こいつは口で言ったってわかんねんだ!なら殴ってわからせるしかねえんだよ!」


「だからって暴力に頼るのは違うわよ!」


 エルが止めてくれた。口の中は切れて血の味がする。なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ。心配しただって?頼れだって?!なんだよそれ。それで、、、


「なんか変わんのかよ」


「は?」


「お前らにがなんかしたとこでどうにかできるのかよ」


「ッ、、、!」


 精一杯の嘲笑を込めて言ってやった。何も言い返せない。いい気味だ。何したってどうやったって無駄だし意味なんてないんだ。


「そんなに心配したって言うなら、頼れって言うなら、!母様を助けてみろよ。生き返らせて見せろよ!できたら友達として頼ってやるよ」


「お前えッ、、、!!」


 今にも殴りかかってきそうな剣幕だ。結局人の気持ちも知らずに偉そうなこと言ってるだけだ。こいつだって僕の立場になればわかる。



「、、、、、、どいて、」


 エルがピエールを押し退けてつかつかと前に出てくる。


「ユーグ、ピエールに謝って」


「は?なんでだよ」


「あなたがピエールを侮辱したから」


「別に事実だろ。あいつが勝手に偉そうに———」


 パァァァッン、


 、、、、、、は?打たれた?エルに?なんでだよ、、、なんで僕が殴られなきゃいけないんだ!


 エルを睨みつけるが怯むことなく睨み返してくる。エルの目は鋭く冷たい。


「あなたには同情する。きっと世界でもかなりの不幸者。でも、恥を知れッ!!」


 今まで聞いたことのないエルの声が響いた。


「それがあなたの本性なら私は同情するけどひどく軽蔑する」


 今まで言われたことのない侮蔑の言葉。軽蔑する。そう言われた時にズキリと傷んだ。


「行きましょう、」


「、、、、、、、、ああ、」


 2人の足音が遠ざかっていく。何も言い返せなかった。ただ失望が残る。


 なんだよ、結局お前らだって結局裏切るんじゃないか。僕は合っていた。間違っていなかったんだ。


 そう、僕は間違って、、、、、、

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

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