最終話 それからの茨の城

数年後


けいらは田辺さんからソース作りの極意を学び修行から戻った。

ソースやシロップだけではなく、仕事への取組み方、その精神を見せられたことが大きく、

栗はもちろん、梨、メロン、ブドウ・・・

茨の城領で獲れたフルーツ、食材を使ったケーキで数々の賞を獲得し、

名実ともに茨の城領一のケーキ職人として、地元の産業発展に貢献した。


ただ、カミーネへのアプローチは進展を見せることはなかった。




梨花はしょうたと結婚し、学生の研修を取り入れながら梨園を経営する傍ら、茨の城領内の梨園を回り、農法、新品種の研究、

後継者問題や経営難に苦しむ梨園の相談、援助、吸収などを繰り返し、茨の城領の梨の女王と呼ばれるようになった。




ひかりの『今日の海鮮朝ごはん』はVチューブでは日ノ本有数の人気チャンネルになっている。

それを切っ掛けに、海女さん志望の女子や海女さん食堂の2,3号店も賑わいを見せている。



海外からの発信により、大岩神社の神秘性が国内でも認知度が上がり、大岩神社いがいの歴史ある茨の城領内の施設への観光も見直された。




日ノ本全体で漁業権は見直され、オリンピック方式から漁獲割り当て方式に移行された。

これにより、漁師は価値の高い魚種のみを狙って漁をすることが可能になり、年々少しずつ秋刀魚の1匹の平均重量が増えるようになり、茨の城領内の近海で金の秋刀魚が再び獲れるようになった。




としやは某アフリカの国に招待され、サツマイモアドバイザーとして農法、調理法の伝授に、そして、今も芋ほりに忙しくしている。

結果として、茨の城領内の市町がアフリカや欧米のいくつかの市町と姉妹都市を形成するにいたった。




『わたしは水戸光山の娘、水戸神峰と申します。

この度、領主候補者の1人としてたくさんの方から推薦していただきました。

しかし、わたしにはやりたいことがあるので領主になることを優先する気はわたしにはございません。


わたしのやりたいこと。


以前はこの領が行きたい領ワースト1位だったことを嘆き、これを返上しようと行動を起こしたこともありました。

でも、それはわたしの無知で我儘な短慮でしかなかったです。


今は、この領に住む民、働く人々、そして訪れる人たちにが幸福を感じられる・・・

そんな領にしていきたいと思っています。


それにはもっとこの領を知り、人の話を聞き、理解を深めていきたいです。

時代は流れ変化していきます。

その中で守るものは守り、変更が必要なら変更し、発生した問題を解決し、

そして、新たなチャレンジを推奨、実践していきます。


領主の下に老中という役職を新設していただきました。

わたしはこの領の初代老中としてこれからも領の民を見ながら仕事に邁進していく所存でございます』





もう、茨の城領に、行きたい領ワーストだった以前の面影はない。


茨の城で生産される農作物や水産資源は良質でそこには生産者や関係者の魂や愛情が籠っていて、それが受け取る側にもきちんと伝わるようになっていた。


こころを込めて仕事をする。魂を伝える。情熱を持って取り組む。


カミーネが動いたことでどうなったかは本当のところはわからない。


ただ、宣言通り、カミーネは自らの仕事に邁進していくだけであった。



                               おわり







ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。


自身、初めて書き上げた作品です。


読み苦しい点、表現不足な点、地域限定の話題など、稚拙な文章が多々あったかと思いますがご容赦いただけましたら幸いです。


どの話が面白かった、共感した、等


ご意見ご感想をいただけるとうれしいです。



                              SIYORI

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

茨の城領へようこそ・行きたい領ワーストなんて許せませんわ! SIYORI @jori888

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画