サイドストーリー1/3:2030年11月2日 土曜日 佐伯カナ
VR作戦会議パート カナ
ギルドハウスの隠し部屋。いつもの賑やかな共有スペースとは違い、ひっそりとした空間だ。ここは主にギルドの作戦会議や密談に使われる場所。私は意気揚々と部屋に飛び込んだ。
「ハル~!緊急会議だよ!今回のは絶対成功させなきゃ!」
部屋の隅にいたハルがゆっくりと振り返り、私を見た。その冷静な目は、「また何か突拍子もないことを言い出したんだろう」という疑いを隠していなかった。
「また突拍子もないことか?で、今度は何を考えたんだ?」
ハルが手にしていた資料を置きながら、椅子に腰を下ろす。私は胸を張り、作戦を伝えるべく大きく息を吸った。
「タカコさんとユウキをリアルで引き合わせる作戦だよ!二人とも好きなのに、なんでこんなに避け合ってるのか、私には理解不能!」
その言葉に、ハルは驚くでもなく、少し笑ったような顔をして腕を組んだ。
「リアルで会うのは簡単じゃないさ。特に二人にはそれぞれ事情があるからな。」
「だから!代理人システムを使えばいいの!コラボカフェ、チェックポイントイベントがちょうどいいじゃん!」
勢い込んで言う私に、ハルは目を細めた。
「コラボカフェか……確かにあそこならギルド専用個室があるし、代理人のチェックポイントが簡単に設定できるな。」
ハルが頷いたのを見て、私は自信満々に微笑む。
「でしょ!しかも、私が先に行ってチェックポイントを済ませるから、ユウキには『簡単に受け取りボタンを押すだけでOK』って伝える!」
ハルは少し驚いた顔を見せた後、また冷静な顔に戻る。
「なるほど。それならユウキも警戒せずに来るかもしれないな。」
「で、タカコさんには『カナがどうしても都合が悪くなったから、代わりにお願い』って言うの!二人とも絶対断らないよー!」
私が拳を握りしめながらそう言うと、ハルは少し考え込むようにうなずいた。
「ただ、二人を同じ個室に入れるには、時間差で誘導する必要があるな。タカコには先にチェックポイントを設定させて、ユウキには後から来てもらう形だ。」
「完璧じゃん!天才だ、私たち!」私は勢いよく机を叩いた。
ハルは肩をすくめながら苦笑いを浮かべる。「カナ、お前が暴走しない限りはな。」
「私が暴走なんてするわけないでしょ!」
その言葉に、ハルは「それが一番心配なんだよ」とぼそりと呟いた。私は聞こえないふりをして、計画の次のステップを考える。
作戦の細かい段取りを詰めながら、私は心の中で強く思った。
(タカコさんとユウキを引き合わせて、二人を笑顔にさせる。それが私の役目だ!)
ハルが冷静に最後の確認をする。
「コラボカフェの予約と、チェックポイントの設定は俺が確認する。だが、失敗したら後始末も頼むぞ。」
「任せてよ!」私は力強く頷いた。
こうして、ギルドの未来をかけた作戦会議は幕を閉じた。これが成功すれば、きっと二人の関係は変わる。そんな期待を胸に、私は次の計画に向けて動き始めた。
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