サイドストーリー2/3:2030年11月3日 日曜日 西園寺ハルカ
邂逅パート ハル
待ち合わせのカフェの外に立ちながら、私は腕を組んで辺りを見回していた。カフェテラスには数組の客がのんびりと談笑している。柔らかな秋風が通りを吹き抜け、落ち葉がくるりと踊る。
「……遅いな。」
小さく呟いたその瞬間、大きな声が遠くから響いた。
「ハル~!あんた、女だったの!?」
その勢いに、私は目を丸くした。声の方向を振り返ると、元気よく駆け寄ってくる一人の女性――カナの姿があった。彼女の明るさに呆れるのを通り越して、少し感心してしまう。
彼女が目の前に立つと、私が見上げる形になり、目を輝かせている。その視線を受けながら、私は軽くため息をついて、少し意地悪な口調で言った。
「そういうカナこそ……デカいね。」
その言葉に、一瞬だけ驚いた顔を見せた彼女だったが、すぐに胸を張り、豪快に笑った。
「デカいですよ!ほーら!」
次の瞬間、私の肩に手がかかったかと思うと、宙に浮いた感覚がした。カナが私を軽々と持ち上げたのだ。
「ちょっと!やめなさいよ、みんな見てるじゃない!」
私は必死に周りを見渡しながら抗議するが、カナはまったく意に介さない様子で得意げに笑う。通りすがりの人がこちらをちらりと見ている気配に、私は早く下ろしてほしくてたまらなかった。
「いや~、ハルがこんな華奢だとは思わなかったな~!あたしと同じくらいの、逞しい男だと思ってたよ!」
私をようやく地面に戻しながら、カナは楽しそうに続ける。その言葉に、私は服を整えながら冷静を装った。
「逞しい男だと思ってたのに……失望した?」
「全然!むしろ、こんなに小柄で可愛いとは思ってなかったし、ギャップがたまんない!」
彼女の笑顔は本当に楽しそうで、少し毒づく気にもなれない。仕方なく、私は肩をすくめながら苦笑した。
「小柄で可愛いって……カナ、そういうの、誰にでも言ってるんでしょ?」
「いやいや、ハルは特別!こんなに面白い人、見たことないもん!」
得意げに胸を張る彼女に、またしても呆れたような笑みがこぼれる。どうしてこの人はこんなにも真っ直ぐなんだろう、と内心思った。
「そう言って、また軽々しく持ち上げたりしないでね。」
私が釘を刺すと、彼女は大げさに片手を挙げて敬礼した。
「了解!でも、また気が向いたら持ち上げるから覚悟しといて!」
その言葉に、私は深いため息をついた。
「まったく……本当に想像以上ね。」
二人並んで歩きながら、次の計画について軽く話を始めた。カフェの並木道を抜けるたびに、カナのエネルギーに圧倒される気がして、どこか疲れつつも心地よかった。
「次のイベント、絶対に成功させようね!」
カナが拳を握りしめ、自信満々に言う。その姿に、私は少しだけ笑いながら、冷静に答えた。
「ええ。ただし、カナがまた暴走しない限りはね。」
彼女は元気よく頷くと、胸を張りながら先を歩いていく。その後ろ姿を見て、私は小さく肩をすくめた。
「まったく……頼もしいんだか、無鉄砲なんだか。」
それでも、こんなカナとならうまくいく気がする。彼女の勢いに押されながらも、私は次の一歩を踏み出した。
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