最終課題 ウォール・トゥ・クライム11
手を繋いで歩いているうちに、正気を取り戻したのか、
「なんで
「あー? それマジで言ってんの?」
「え。だって、
「アイツを見返してやるためね」
「この前の
「言ってたけど? でも、アタシが寄りを戻したいなんて一言でも言った? あと、今でも好きだとか言った?」
アタシの言葉に、
「それにしても
「え!? え。あ、いやそれはその」
「ホントに面白いよねー」
声を出して笑うと、
「だって、その、ペアも解消されるかもって」
「それは絶対有り得ない」
アタシは立ち止まって断言した。
「今回アタシたちが一番に成れたのは、
言い放って、歩き出す。
「だからアタシのペアは
「うん」
行きがけに、医務室から大きな泣き声が聞こえて来た。
ギョッとなってそちらを見ると、
なにがあったかはわからないけど、三人は大丈夫そうだった。
廊下の先にトボトボと歩く
「おっすー」
アタシが声をかけるとぎょっとした顔で
「
「え、わたし?」
「
「え?」
「あ、言ってなかったんだ。ま、
お節介だとは思うけど。
「アンタかわいいから、もったいないじゃん?」
「え!? わたしが……!?」
「うん。自分ではわかってないかもしれないけど。ナチュラルメイクめちゃ上手だよね。アタシにはできない。あ、そだ。今度教えてよ。だからアカウント教えて」
そう言ってスマフォに自分のQRコードを映して
フレンド登録完了。
「今度からかなみんって呼ぶね」
「あ、うん」
「よろしく。みんみん」
「え……かなみんじゃ」
「どっちでもいいじゃん。アタシもどういう風に呼んでもいいからさ」
「あ、うん! よろしくね。
みんみんが
さっき壁の向こう側で震えてたときのあの雰囲気ももうないし、多分大丈夫だと思う。大丈夫じゃなかったら飯誘ってやろう。
「あの、さっきの話なんだけど」
隣を歩く
「さっきの?」
授与式の準備はもう整っていて、インタビュアーの人たちがあっちこっち忙しそうに走っていた。
「うん。
「あー、言ってたかも」
「それって誰——」
握っていない方の手を
「
アタシは思わず笑ってしまう。からかったときと同じになっちゃった。でも気持ちは本当だ。今までの男や
表彰台の前に来たところでインタビュアーが近付いて来た。メダルかトロフィーか知らんけど、貰う前にインタビューを受けるっぽい。
「あ、あの……!」
「僕も
という一連の告白をすべてマイクが拾っていて、スタジアム全席にいる人たちから歓声が沸き上がった。
多分アタシも顔が真っ赤になっていると思う。いくらなんでもハズ過ぎる。
アタシの回答待ちって言うか、さっき好きって言っちゃったから、OK待ちになっちゃってる。え、なにこれ。どんな羞恥プレイ!?
偶然マイクで拾ってしまったインタビュアーが、アタシにマイクを向けている。今度はしっかりと、ちゃんとした意図をもって。
「ヨロ」
アタシが放った短い2文字に、スタジアムは割れんばかりの歓声に包まれた。
差し出された手を握ったら、両手でがっちりホールドされた。彼氏の
きっとこれからも二人のボルダリングペアは続いて行くんだろうなって思った。
ぎゃるだりんぐ 詩一 @serch
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます