第42話
新たなる時代の幕開けから数年が過ぎ、世界は急速に変わり始めた。かつての戦国時代や武士の時代が遠い過去のものとなり、技術と科学が支配する未来が広がった。だが、その変革の中でも、山田の心に残るものがあった。それは「影の力」、そして平将門の魂が解放されたその瞬間の重さだった。
山田はその後、平和の守り手として名を馳せることはなかった。彼の力を理解する者も少なく、彼自身もその力を過去のものとして封印し、日々を過ごしていた。しかし、世界は変わり続け、次第に新たな脅威が顔を覗かせるようになった。
ある日、山田は突然、警察の高官から呼び出しを受けた。そこには、軍事技術や人工知能の発展により、国家間の緊張が激化しているという報告があった。戦車やマシンガン、ライフル、さらにはミサイルといった武器が、以前とは比べ物にならないほど強力なものへと進化し、戦争の兆しが世界のどこかで迫っていた。
「山田さん、あなたにお願いしたいことがあります。」警察高官は、山田の目を見据えて言った。「この技術の力をどう使うか、私たちが決めなければならない時が来ました。これ以上、武力で争うことは許されません。あなたが持つ力を、我々の側に貸してほしい。」
その言葉に、山田はしばらく黙り込んだ。彼の中には、芹沢多摩雄の冷徹さと、平将門の魂の力が今も残っていた。それらを使うべき時が来たのだろうか。
「君たちが求めているのは、単なる力の行使ではない。」山田は冷静に答えた。「力を使えば、確かに戦争を防ぐことができるかもしれない。しかし、力で押さえ込むだけでは、真の平和にはならない。」
その時、山田は「影の力」の使い方を思い出していた。過去に自分が平将門の魂を解放したように、今度は世界を、そして人々の心の中に眠る怒りや憎しみを解き放つ時が来たのかもしれない。だが、そのためには、新たな「影の力」をどのように使うべきか、彼はまだ決めかねていた。
その頃、世界の各地では戦争の兆しが現実となり、戦車が都市を行進し、マシンガンやライフルが街頭で交錯していた。軍事演習が日々行われ、ミサイルが発射されることを予感させる一触即発の状態が続いていた。どこか遠くで爆音が響き、煙が上がる。その風景は、かつて戦国時代に繰り広げられた壮絶な戦いのようであり、また、それを越える破壊力を秘めているように思えた。
山田は再び、頼朝の言葉を思い出した。「お前の戦いは、もう過去のものだ。」頼朝が言ったその言葉が、今の時代にも通じると感じた。復讐や力で全てを解決しようとする方法では、何も解決しない。平将門の魂を解放したように、この世界の争いを終わらせるためには、別の方法を見つけなければならない。
「私は、戦いを避けるために力を使いたい。」山田は、再び警察高官に言った。「もし世界が破滅する道を選ぶなら、私はその力を止めるために立ち上がる。」
その後、山田は政府の提案を受け入れ、新たな任務に就くこととなった。彼が携わったのは、軍事技術の管理ではなく、むしろその力を人々の心に働きかける方法を模索することだった。戦争を止めるためには、単に物理的な力を使うだけではなく、人々の怒りや憎しみを解きほぐす必要があった。
山田の前に現れたのは、かつての「影の力」を持つ者たちだった。彼らは平将門のように、強い怒りを抱えた魂であり、また新たな力を欲していた。山田は彼らに向かって静かに言った。
「力を使うだけでは解決しない。私たちは、今一度、心を解放し、戦いを止める方法を見つけなければならない。」
その言葉が、未来の新たな時代を切り開く鍵となるのか、それとも戦争の道をさらに加速させるのか。山田には、まだその答えが見えていなかった。しかし、彼は自らの使命を全うするため、再び「影の力」を使う準備を整えていた。
そして、空の上では、再び戦闘機が鋭い音を立てて飛び交い、地上では戦車が轟音を響かせて進み続けていた。
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