第37話

新たな試練の予兆


山田孝之と脚本家牙城の間に芽生えた新たな信頼と絆。しかし、二人の関係が築かれたその矢先、さらなる試練が彼らを待ち受けていた。


ある日、山田は撮影現場で不意に別の役者から聞いた話に耳を傾ける。その役者、名を河内賢一という若手俳優は、撮影の合間にこんなことを口にする。「最近、あなたが演じたキャラクター、芹沢多摩雄が本当に現実世界に出てきたみたいだ。聞いたか? 牙城が新作を手掛けるという話。」


その言葉に、山田は微かに不安を覚える。牙城が関わった新作というのは、どうやら完全に異次元の世界を描いた、超常的な要素を持つ作品で、そこには「平将門」という人物が再び登場するというのだ。


「まさか……また『影の力』が絡んでくるのか?」


山田は自身が演じた芹沢多摩雄の冷徹さとその暗い影響を振り払おうとしていたが、彼の中にはすでに「芹沢多摩雄の影」が息づいていることに気づき始めていた。それが、彼の人生に新たな波紋を広げようとしていた。


平将門の再臨


物語が進むにつれ、平将門の「影の力」を描く作品が牙城の手によって進化していく。脚本が手にしたものは、単なる歴史劇や伝説ではなく、何か深遠な力が宿った神話のような存在。それは、戦国時代を超えて、現代にも「影の力」が生き続けていることを暗示するものであった。


山田はその脚本を読んだ瞬間、自らの中に眠っていた「芹沢多摩雄」の影がうごめき始めるのを感じる。彼の演技が、何か新たな運命を呼び込むかのように感じた。しかし、まだその意味を完全に理解することはできなかった。


その時、山田の前に現れたのは、かつての仲間である龍造寺勝永だった。勝永は、山田に一つの警告をもたらす。「お前、今度の作品、ただの映画じゃない。平将門の影が現代に再び現れる予兆だ。この物語には、俺たちがまだ知らない力が絡んでいる。」


その言葉に、山田は急激に心の中で何かが揺れ動くのを感じる。芹沢多摩雄の「影」は、彼を完全に支配することなく、逆に「力」に取り込まれていくような恐怖を感じ始める。


牙城の秘密と影の力


撮影が進む中、山田は牙城の秘密に次第に迫っていく。彼の脚本には、何か異常な力が働いていることに気づいたからだ。それはただの物語ではない。牙城の筆を通じて、どこかの時代から「影の力」が呼び寄せられているのだ。


ある晩、山田は再び芹沢多摩雄の姿に変わり、劇場のセットの中で牙城と対面する。


「お前、知っているだろう?」山田(芹沢多摩雄)は冷たく牙城を見つめた。「この物語にはただの歴史的な英雄の物語以上のものがある。『影の力』を操ろうとしているだろう?」


牙城はその言葉に動揺することなく、静かに答える。「もちろんだ。だが、それはお前にはまだわからないだろう。この世界において、物語の力が現実に影響を与えることがある。それを我々は理解し、使いこなそうとしている。だが、その代償を払わなければならないことも知っている。」


その瞬間、山田は何かが彼の内側で目覚めるのを感じる。芹沢多摩雄の冷徹さが、牙城が触れようとしていた「影の力」の源に強く引き寄せられていく。もしかしたら、自分がその力を完全に使いこなすことで、この物語の結末を変えることができるかもしれない――そんな予感が胸に広がった。


平将門、現代に蘇る


撮影が最高潮に達する頃、物語の中で「平将門」が現代に蘇るシーンが撮影される。牙城は、脚本を超えた何かを仕掛けようとし、山田はその「力」の使い方を決定的に知ることになる。


撮影が進む中、ある不穏な現象が起き始める。カメラが回る度に、キャストやスタッフが微妙に異変を感じるようになり、何か不自然な影が映り込むようになる。誰もがそれに気づかないふりをするが、山田と牙城だけはその異常を感じ取っていた。


そして、ついに「影の力」が完全に具現化し、平将門が現代の世界に出現する――。彼はまるで時空を越えたように姿を現し、その圧倒的な力で周囲を支配しようとする。


影の力との対決


山田孝之は、芹沢多摩雄の冷徹さと自らの俳優としての「力」を駆使し、平将門に立ち向かう決意を固める。しかし、彼の中で渦巻く「影の力」が、彼の行動に微妙な影響を及ぼし始める。果たして、山田はこの力を制御し、平将門を封じることができるのか? それとも、彼自身が「影の力」に飲み込まれてしまうのか?


物語は、山田孝之と牙城の心の葛藤、そして平将門との壮絶な対決を描きながら、次第に暗黒と光、そして人間の内面の戦いをテーマにしていく。


果たして、山田は自らの影を超え、真の力を手にすることができるのか――。


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