第14話

将門の決意と新たな戦局


将門が冷徹に言い放った言葉は、京からの使者に強烈な印象を与えた。しかし、その言葉を受けて、朝廷もただ黙って見過ごすことはできなかった。東国の情勢はますます混沌とし、将門の権力は日に日に増していった。だが、その力が拡大すればするほど、将門の周囲には新たな敵が増えていった。


その頃、将門のもとに忠実な家臣である藤原秀郷が訪れ、将門に告げた。


「大将軍、朝廷からの使者が再び送られてきました。彼らは、貴公に従うことを強制しようとしております。私たちがこのまま抗戦を続ければ、京からの軍が動き出すのも時間の問題です。」


将門は静かにその言葉を受け入れ、しばらくの間沈黙を守った。彼の心の中では、勝利に対する確信と、同時にその勝利が引き起こすであろう更なる戦乱への覚悟が交錯していた。


「すでに戦の火種は燃え広がっている。」将門はつぶやき、やがて決意を固めるように言葉を続けた。「私は東国を統一し、この地に平穏をもたらす。京からの干渉を許すわけにはいかん。だが、今はまだ準備が整っていない。私の周囲の者たちの動き、そして敵の動きを慎重に見極める時だ。」


秀郷はその言葉に頷き、戦の準備を整えるように命じられた。将門の心には、すでに次の戦いの計画が渦巻いていた。それは単なる東国の豪族同士の争いではなく、京との戦争を見据えた壮大な戦略であった。


興世王の謀略と新たな同盟


将門が再び戦の準備を進める中、興世王はますます焦りを見せていた。将門の権力が強まることは、彼にとって許しがたい事態であり、何としてでもその勢力を削ごうと考えていた。しかし、興世王もまた、独力で将門を倒すことができないことを十分に理解していた。


ある夜、興世王は再び密使を将門のもとに送り、謀略の手を差し出す。


「将門殿、貴公の力を認める。だが、朝廷の力をもってすれば、いずれ貴公も孤立することになるだろう。しかし、もし私たちが手を結べば、東国を制覇し、朝廷に立ち向かうことができる。」使者は慎重に言葉を選び、将門に近づけようとした。


将門は、興世王の策略を見抜いていた。だが、表面上は冷静に返答する。


「興世王。私はすでに東国を支配し、独立の道を歩むことを決意した。私の力をもってすれば、朝廷の干渉など恐れるに足りぬ。」将門はその後、冷徹に使者を追い返した。


興世王の考えは失敗に終わったが、彼は将門の強さと決意を痛感し、さらに策を練る必要を感じた。興世王にとって、将門は手強い敵であり、また時に協力しなければならない存在でもあった。だが、将門はそのどちらも拒絶したのだった。


経基の陰謀と朝廷の策動


将門が朝廷に対して強硬な姿勢を見せる中、経基はその影響力を強化し、再び朝廷に働きかけた。彼は、将門の謀反を強調し、東国の豪族たちを味方に引き入れるために、京の権力者たちと連携を図った。経基は、将門がいかに強大で恐ろしい存在であるかを誇張し、朝廷の支持を集めようとした。


その一方で、将門は次第に東国を統一しつつあった。彼は数多くの豪族を討ち、または取り込んで支配下に置いていった。その力を駆使して、東国の各地に強固な支配基盤を築き、朝廷に対する独立を確立しつつあった。


将門と朝廷の決戦


将門が力を増す一方、朝廷もその脅威を無視することはできなかった。経基の訴えを受け、朝廷はついに決断を下す。将門に対する討伐軍を派遣することを決定し、京から大軍を東国に送る準備を進めた。


「今こそ、東国の戦が終結する時が来た。」将門は冷徹な目で、眼前の戦局を見つめながら言った。「私の力を証明するために、戦を起こすしかない。」


そして、再び戦の足音が東国に響き渡る。それは、将門の命運を決する大きな戦いの始まりを意味していた。


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