第43話
最終章: 颯太との対決
山田は、再び「影の力」を手にする時が来たことを感じていた。世界は、急速に進化した軍事技術と人工知能に支配され、国家間の緊張は頂点に達していた。彼が求めていた平和の道は、あまりにも遠く、現実には無力に思えることもあった。しかし、彼にはまだ、平将門の魂から受け継いだ力がある。影の力を使うことで、今この瞬間に立ち上がらなければならない。
その時、彼の前に現れたのは、かつて彼の影となり、戦いの中で出会った青年、颯太だった。颯太は、山田が心の中で封じ込めた「力」を解き放ち、彼の力を引き出す存在だった。しかし、颯太は今やその力をどこか歪んだ形で使おうとしていた。彼の中にも、平将門の魂の影響が色濃く残っていた。
「山田さん、あなたの言っていることは理想論に過ぎません。世界はすでに、力で解決する時代に突入しています。あの頃のように、あなたの力で戦争を止めることができるとでも思っているのですか?」颯太は冷徹な目を向け、言った。その目には、もはや山田に対する敬意はない。彼は、山田と同じ「影の力」を持ちながらも、その力の使い方を全く異なるものに変えていた。
山田は静かにその言葉を受け止め、深く息を吸い込んだ。颯太が抱く怒りと憎しみは、山田がこれまでに解きほぐそうとしてきたものだった。しかし、颯太はそれを解き放つことで力を求め、戦争を引き起こす道を選ぼうとしている。山田は、そのことに深い悲しみを感じた。
「颯太、お前の力を使えば、確かに力で物事を動かすことができる。だが、それが真の平和を生むわけではない。お前は、復讐のために力を振るい、戦いを引き起こすつもりなのか?」山田は、颯太の前に立ち、その目をじっと見据えた。
颯太はその問いに一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取り戻した。「私は、世界を変えるために戦う。そして、変わりたくない者たちを壊す。力こそがすべてだと、私は信じている。」
その言葉に、山田は深く考え込んだ。彼もまた、かつては力で全てを解決しようとした時期があった。しかし、今は違う。彼は、力を持つ者がそれをどう使うかにこそ真の意味があることを理解している。力で抑え込むことが平和を生むわけではないことを。
「お前が選ぶ道は、確かに力を使うことで一時的に戦争を止めるかもしれない。しかし、その力が永遠に続くわけではない。人々の心に残る怒りや憎しみが消えることはない。お前が戦いを引き起こせば、世界はまた新たな争いの種を蒔くだけだ。」
颯太は、それでも山田の言葉に耳を傾けようとはしなかった。彼の中の「影の力」は、もはや理性を超えて、暴走を始めていた。山田はその力の暴走を止めなければならない。
「颯太、お前を止めるために、私は戦うことを選ぶ。」山田は覚悟を決め、力を解き放った。影の力が再び彼の体を包み込み、その周囲の空気が一変した。
颯太もまた、怒りを胸に力を発揮した。彼の体から放たれるエネルギーは、まるで嵐のように荒れ狂い、周囲の景色を一瞬にして変えた。戦いの舞台は、もはや言葉では表せないほど激しいものとなった。山田と颯太の力が衝突するたびに、空気が震え、大地が揺れ、周囲のものがすべてその余波を受けた。
だが、山田はそれでも冷静さを保っていた。彼は知っていた。力で押さえ込んでも、戦いが終わるわけではない。最も大切なのは、颯太が心の中で本当に求めているものを見つけ出し、彼にそれを届けることだと。
戦いが続く中、山田は颯太に声をかけた。「お前が求めているのは、力ではない。怒りや憎しみを解き放つことで、真の平和を見つけることだ。それを私は知っている。お前も気づいているはずだ。」
その瞬間、颯太の顔に一瞬の迷いが見えた。だが、それもすぐに消え失せ、再び激しい戦闘へと突入した。山田は自らの力を抑え、颯太に対してのみ最大の力を使わずに接していた。彼の目的は、戦いを終わらせること、そして颯太の心を解放することだった。
最終的に、山田は颯太に力をぶつけるのではなく、心を合わせて彼を包み込むように力を解き放った。影の力が颯太の体を包み込み、彼の心の中に眠る怒りと憎しみが浄化されていく。颯太はその力に圧倒され、ついに膝をついて倒れた。
「私は…何をしていたんだ…」颯太はうなだれながら、深い悔いの表情を浮かべた。
山田は静かに颯太に歩み寄り、言った。「お前は間違っていたわけではない。ただ、道を誤っただけだ。だが、今お前の心は解放された。」
そして、山田は颯太を抱きしめ、彼を支えるように言葉をかけた。「一緒に新しい世界を築こう。この力を、争いではなく、平和のために使おう。」
颯太はゆっくりと頷き、涙を流しながら答えた。「はい…山田さん。」
戦闘機の轟音が遠くで響き渡り、地上では戦車が動き続けていた。しかし、山田と颯太の心には、少しずつではあるが、平和への道が開けていったのだった。
こんな大河ドラマが見たい!『将門伝』 鷹山トシキ @1982
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