第7話 孤児院にて
「あなたは、町の方ではないですよね」
若いシスター風の女性が言う。
「はい。他の国から来たのですが迷ってしまいまして」
森を抜けてきたことは話さなかった。
異世界からきたと言っても信じてもらえないだろう。
ただ、他の国から来たのは間違いない。
「そうですか。では、ケガが良くなるまでここでお過ごしください」
「いいんですか?」
詳しく語らない、素性も分からない俺を置いてくれるのか。
とても親切なシスターだ。
「はい。困っている人を見捨てることは出来ません」
若いシスター風の女性は笑顔で答えた。
回復するまでの間、町外れの孤児院でお世話になるのだった。
・・・・・・・・
ここは町の外れにあるジャックナ孤児院。
俺は森を抜けて町が見えるところで気を失った。
「ここはなんという町ですか」
「ここはラティーナ大陸エツマル王国の町ストファです。北のはずれの町です」
シスター風の女性は優しく答えてくれる。
俺が召喚されたのはエーダイ王国だった。
エーダイ王国のことを聞くと森の先にある国だと教えてくれた。
森は魔の森と呼ばれていて深部には強力な魔物がいるため越えることは出来ないのだとか。
俺はそんな危険な森を突っ切って隣の国に来てしまったのか。
危険な森に放逐されたのだ、成金国王は俺が死んだと思っているだろう。
とりあえず俺は生き延びることが出来た。
ハジメくん大丈夫かな。
・・・・
あれから3日ほど経った。
ケガはだいぶ良くなり、なんとか動けるようになった。
「サンタさん。お仕事を探すのですか」
名前を聞かれたとき、俺はサンタと名乗った。
地球でも「サンタさん」と呼ばれていたので問題ないだろう。
オオバサンタロウだから「サンタ」だ。
むかし、オオバカサンタロウと言われてぶちギレしたこともあった。
「そういうならオオバカサンタロウになってやろうじゃねーか」といってボコボコにぶちのめしたことがあるが、今はもう昔のことだ。
「はい。もう動けるようになりましたから、いつまでもお世話になりっぱなしでは心苦しいですから」
「まだケガが完治していませんよ」
「大丈夫です」
「そうですか。あの、身分証はありますか」
そうだ、俺は身分証をもっていない。
「身分証はありません」
「それなら、冒険者ギルドで登録すると冒険者証をもらえます。それが身分証にもなります」
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