第15話 杖を修復



翌日、


イーフさんに困っている物はないか尋ねたら、杖がもうすぐ寿命だと言う。


イーフさんの杖を見せてもらうとボロボロだった。


イーフさんは元シスターで回復魔法は初級のキュア(解毒魔法)とヒール(回復魔法)が使える。


昔は町の中にある教会でシスターをしていた。

しかし、正教会の司祭がこの町から撤退することになった。

正教会は孤児院も兼ねていた。

シスターイーフは正教会に所属していたが正教会が無くなるということは孤児院もなくなる。



そうすると子供たちの行き場がなくなってしまう。


イーフさんはシスターをやめて子供たちを守ろうとした。

しかし、正教会だった建物は使うことができず、町から出た元兵舎だったところを譲ってもらい孤児院として住んでいるのだそうだ。


なるほど。それで町の外にあるのね。


なぜ、町の中の建物に住まないのか聞くと

孤児は身元不詳になるのだそうだ。

多くは気にせず接してくれるが、中には心無い言葉を浴びせたり、差別する人もいるという。


子供を貰いたい人が現れないかぎり、身分証はギルド証を作るしかないので、15歳まで待つしかないとか。



そういえば王族でも親や親族を、すべて殺されてしまった幼い王子は、奴隷として売られたり、スラムで生きるような話もあったっけ。


変な人に貰われたら過酷な人生になりそうだし、これは難しいね。


世知辛い世の中だ・・・

孤児を守る法がいないのか・・・



イーフさんは本物の聖人だよ。






孤児院はイーフさんが使える回復魔法で生計を立てているという。


杖は魔力の補助になるので杖がない状態で魔法を使うと効果が減少してしまう。



「この杖は、もうすぐ寿命です。杖を買うお金はありませんから少しでも長持ちするように大切に使っています」

イーフさんは杖を大事そうに撫でている。


その大事な杖を修復しようと思った。


「杖をお借りしてもいいですか」

「どうぞ」



杖を貸してもらってポケットに収納してみると「古びた修道士の杖 魔力補助10%」と出た。


魔力補助10%って性能がいい杖のような気がする。

大事にする気持ちが分かった。



「修復」



すると、「修道士の杖 魔力補助10%」と表示が変わった。



ポケットから出してみる。


ポン!



「まあ 新しい杖になっているわ」

新品の杖になって出てきた。


成功だ。良かった。



修復スキルはポケットに入れたものなら修復出来るようだ。



イーフさんに杖を渡した。


「杖をなおしましたので、まだまだ使えます」


「ありがとうございます!ありがとう」


イーフさんは涙を流して喜んでいた。




この孤児院じたいが、ぎりぎりでやりくりしてるので何もかもが年季が入っている。


建物は雨漏りしてないのが救いだが、外壁などはボロボロだ。




杖を修復したあと、孤児院の備品などをポケットに収納すると鑑定できた。


1日1回の修復をしたあとでも、ポケットにものを入れれば鑑定だけは出来ることがわかった。


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