第2話 前世の彼



 今の世界で、クリスにはとても世話になっている。

 身の回りの世話は彼に任せっぱなしだし、予定の管理も一任している。


 彼がいなければ、私の日常はもう少し、困りごとが増えていただろう


 能力は、他の使用人たちも一目置くほどで、何をやらせてもそつなくこなす。


 万能で完璧な存在だった。


 前の世界の彼も、大体そんな感じだった。


 表向きは。




 学校の高校に通っていた私は、彼と同じクラスだったから、彼の秀才ぶりはよく目にしていた。

 勉強の成績はいつもトップを独走していたし、運動もよくできる。

 コミュニケーションだって、しっかりとれてて、クラスの中心的存在だった。


 彼が喋る度に動く度に、大勢の人が称賛する。


 まさしく、太陽みたいな存在だと言っても過言ではないだろう。

 表向きは。


 でも、彼には重要な欠点がある。


「相田さん♪」

「ナンデショウカ」

「一緒にご飯を食べようよ」

「オコトワリデス」


 それは、誰にでも分け隔てなく接し過ぎるという事。


 そして、


「見つけた! 屋上なんかにいたんだね相田さん♪ 一人で寂しくないの? 一緒に話をしてもいいかな」

 

 しつこい。


 さらには。


「相田さんもクラスの皆と一緒に話ができるように、電話番号とか教えてあげといたよ」


 善意が押しつけがましい。


 あれなんだろう。

 成功し過ぎて、そうでない人の気持ちが分からなくなったポンコツなんだろう。


 人間できすぎると、ああなってしまうのだ。

 色んな意味で恐ろしかった。


 そんなわけで彼は、クラスで孤立しがちな不愛想な私を気にかけるあまり、無邪気な善意振りまき機、兼若干のストーカーと化していた。


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