第5話 夢




 昔から風邪をひいたり、熱を出した時は悪夢を見ていた。


 今回ももうなされるかな、と思ったらやっぱりそうだった。


 体調が悪いと夢見が悪くなるのよね。


 背後から悪魔だか魔王だかなんだかよく分かんないものが追いかけてくる。


 私は必死に逃げるんだけど、なぜかうまく走れない。


 そして、とうとう変な化け物に追いつかれてしまう。


 足がもつれてその場にばったり。

 私は「きゃああああっ!」と悲鳴をあげるしかなかった。


 けれど、そこにクリスがやってくる。


「お嬢様には指一本触れさせない!」

「クリス!」


 私はそんなクリスの姿を見て、自分の思いに正直になる。


 ああ、私はクリスの事が。


 そこで夢が終わった。





 目を覚ますと、ベッドの近くにクリスがいた。


 彼は私の様子に気づかず、何かテンション高くなってしゃべっていた。


 真面目な顔で、「ああ、私はクリスの事が好きだったのね。クリスは、なんて恰好いいのかしら」とかふざけた事を言っていた。


 どうやら私の夢の脚本は、クリスが書いていた様だ。


 目覚めた私はクリスを部屋から追い出した。


「クリス、ハウス」

「おっ、お嬢様!? いつから起きて!!」


 やっぱり彼は前世通り、危ないストーカーだったらしい。


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