第二の壁

第7話 悪役令嬢参上



 私が倒れているという情報をどこから聞きつけたのか、乙女ゲームの中の悪役令嬢である女性マローナが、お見舞いに尋ねてきた。


 今すぐ、まわれ右して、帰ってください。


 なんて言えるわけもない。


 貴族社会は付き合いが大事だし、表面上は病人の友人をお見舞いに来ただけ。


 私は苦い表情で、そのクリスからその知らせを受け取った。


「眠っている事にしてくれない?」

「狸寝入りがばれたら、粛清されますよ」


 狸寝入りしただけで破滅って、どんな苛烈な悪役よ!


 はぁ、何で私、彼女の取り巻きになっちゃったのかしら。


 ヒロインがいじめられている所に、偶然立ち会ってしまったのが運のツキ。


 ヒロインイジメしたい要員だとマローナに誤解された私は、その日から彼女の取りまきになってしまったのだ。


 以来、ずっと顔色を窺い続けている。


 不満だからといって、下手に逆らってはいけない。


 苛烈な性格である彼女は、逆らう人間に容赦しないのだから。


 マローナに逆らった人間には、もれなく死の運命がついてくるらしい。


 反対に、味方でいる者には、相応の気遣いをみせてくれうるがわずかな救いだ。


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