第14話 間一髪



 不埒な輩を追い払ったら、その後ヒロインが話しかけてくる。


「あの、ありがとうございます」


 彼女はそういって、ほっとしたような顔。


 そうよね。女の子一人に数人で絡んでくる筋肉って、かなり怖いわよね。


 また、あんなのに絡まれたらたまらない。


 私は、お礼を言ってくるヒロインの手を握って、その場から移動。


「早くこの場から移動しましょう。もたもたしてたら、またあんなのに話しかけられてしますわよ」

「はっ、はい」


 本当は出会いの場をつぶしたいだけだけど、それは言わない。

 自分の命を守るために!

 マローナのご機嫌取りのために!


 手を引いて歩くと、ヒロインはおとなしくついてきた。


 振り返ると、アンドレが何かを探しに出歩いている姿が見えた。

 危なかった。


 もう少し遅かったら、ヒロインが出会っていた。


「観客席まで、案内してさしあげますわ。感謝しなさいな」

「何から何まで。あっ、ありがとうございます!」


 自分のためなだけに、胸がものすごく痛い。


 罪悪感を抱えながら、ヒロインを観客席まで案内する。


 というか、彼女なんでこんなところにいたのだろう。


 観戦するためには、お金を払ってチケットを買わなければいけない。

 平民であるヒロインにはそんな余裕はないように思えたのだが。


 と、疑問に思ってクリスの方を見れば「ヒロインは運が良いんです」との言葉。


 詳しい理由を聞いたら、福引でチケットをあてたとか。


 で、捨てるのはもったいないので、アンドレの雄姿を見るために使ったと。


 ああ、ヒロイン補正の強運ね。


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