第13話 権力に頼ります



 攻略対象である細マッチョな美形の名前はアンドレ。

 精悍な体つきをしている短い赤毛の少年。


 やる気に満ちていて、強気な印象を受ける顔つきだ。


 アンドレは何事もなく、大会の控室がある方へ向かった。

 誰かを探していたようで、キョロキョロしていたけれど、あの分だと、見つけられなかったのだろう。


 幸いだ。

 

 次はヒロインを探さなくては!


「いた。こっちですよ、お嬢様」


 今度はクリスが先に見つけた。


 いじめられっ子なヒロインは、ほかの大会参加者にからまれていたようだ。


 ゲームなら、ここでアンドレが助けるらしいが。


「アンドレ、控室に行っちゃったわよね。気づかなかったのかしら」

「忘れ物か何かでまた戻ってくるのかもしれません。その前に、彼女をここから遠ざけなくては」

「それもそうね」


 私は彼らの前に出て、手っ取り早く権力を振りかざした。

 自分で言うのもなんだが、このあたりの貴族としては名前がある方だ。


 だからこそ、家柄を重視する悪役マローナの取り巻きになってしまったのだと思うが、今はそれは置いておく。


「女の子一人に何をしようとしてるの。その子は私の学校の同級生よ。フラウメント・パール・ダイシィシャードを敵にまわしたいのかしら?」

「げっ、ダイシィシャードだと、貴族がなんでこんなとこに!」


 本当なんでこんなところに来ることになってしまったのやら。

 追求されると困る。


 しかし相手の男たちは、無駄口をたたいて怒りを買う事を恐れたようだ。

 権力は効果抜群だった。


 屈強な男たちは、冷や汗をかきながら、その場から去っていった。


 この大会には優勝金目当てに、多数の平民が出場している。


 戦いの前に余計ないざこざを起こしたくないのだろう。


 

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