第11話 ミスリルゴーレム

 翌朝、俺はリディア、エリカ、ナギの3人を邸宅に呼んだ。


 ちなみにレインは、俺の邸宅に住まわせている。


 しかし、俺も忙しいのでレインにつきっきりという訳にもいかず、この邸宅のメイドを任せているお姉さんに面倒を見てもらっている。

 レインは不安そうだったが、仕方ない…………


 俺はリディアら3人に向けて、話し始める。


「君たち、昨日この街に移民が来たのは分かるよな?」


「はい、承知しております」


「その移民達なんだが、どうやら”謎の動く鉄の塊”に村を追われて、ここへ逃げ込んできたらしいんだ」


「”謎の動く鉄の塊”かぁ……もしかして、アイアンゴーレムじゃないの?」


「アイアンゴーレム、か」


 俺は前世にゲームなどで見たアイアンゴーレムを思い出した。


「アルティ、それ早く討伐しに行かないとやべーじゃん!」


「アルティ様、私がそのアイアンゴーレムを討伐しに行きます」


「ありがたい。じゃあリディア、頼んだ。移民達がいた村の方に行けばいるだろう」


「はい、承知しました。このリディア、全力でアルティ様のお力になる事を誓います」


 そしてリディアが去った。



 ♢

(リディア視点)


 今まで私は、戦闘においてアルティ様のお役に立てれたことが一度も無い。


 アルティ様は自分の力を謙遜なさっているが、あまりに聡明でありながら世界で一二を争う程の力を持つアルティ様に比べれば、私なんて虫ケラ以下。


 私が戦闘で必要になる事なんて、あり得なかった。


 しかし今はアルティ様が忙しいがゆえに、アイアンゴーレムを討伐するという重要な任務を任される事になり、久々に腕が鳴る。


 実を言うと私は、戦う事が好きなので今回の任務は嬉しいものであった。


 その後しばらく歩いていると、確かにアイアンゴーレムらしき影が見えた。


 早速、私はアイアンゴーレムらしき影に【スペースフローズン】を撃つ。


 しかし、なぜかあちらはビクリともしていない…………


「なぜなのか。Bランクのアイアンゴーレム程度なら、【スペースフローズン】一発で倒せるはずなのに…………いや、まさか…………」


 すると、アイアンゴーレムと思われた影が近づいてきて、くっきりと姿が見えるようになった。


 どうやら私の悪い予感が当たったようで、影はアイアンゴーレムではなく、”ミスリルゴーレム”だったようだ。


 ミスリルゴーレムはSSSランクに指定されている超危険な魔物であり、私では厳しいだろう。


「アルティ様に頼るしか…………いや、ここで退いていてはアルティ様の婚約者として失格…………」


 私は”必殺技”を使う事にした。その”必殺技”とは消滅魔法【エクリプス】だ。


 この魔法が効かなかったのはアルティ様を冤罪で処刑しようとした時のみであり、それ以外の強敵は全員、この【エクリプス】によって一瞬で消滅させられている程の、恐ろしすぎる魔法であった。


 いくらSSS ランクといえども【エクリプス】には耐えれないだろう。


 そう考え、私は全身全霊の力を込めて【エクリプス】を放った。


 しかし、【エクリプス】が相手に効くどころか、謎の魔法によって跳ね返されてしまった。


 幸い避ける事ができたが、私は打つ手無しの状況に追い込まれてしまった。


「チッ、無理…………」


 しかしここで逃げていてはアルティ様の婚約者としては失格。


 出来る限り、粘ってみよう。


 そう思い、私がもう一度【エクリプス】を撃つ準備をしていると、突然ミスリルゴーレムが真っ二つに割れた。


 何事かと思って後ろを見ると、アルティ様が立っていた。



 ♢



「ナギに教えてもらった剣技を試してみたかったんだ。リディア、ごめん!」


 俺は前に居るリディアに話しかけた。


「いや、マジでアルティの成長速度早すぎだろ!30分教えただけで最強クラスの剣士になりやがった」


「いやいやナギ、流石に最強は言いすぎだろ。アイアンゴーレム倒すぐらいなら普通の冒険者でも出来そうだけど」


 すると、リディアが俺に向かって急に跪いて来た。


「アルティ様、大変申し訳ございません!私はなんという失態を…………」


「きゅ、急にどうしたんだ?」


「忙しいアルティ様にミスリルゴーレムを倒させてしまって、私はなんと顔向けすれば良いか…………」


「いや、ゴーレムは俺の都合で倒しただけだが…………」


 ミスリルゴーレムとは何だ?


 そう疑問に思っていると、俺と一緒にいたエリカがゴーレムの亡骸を見て、驚きの声をあげた。


「これ、あのSSS ランクのミスリルゴーレムじゃん!…………あれ、このゴーレム、モンゴメリー王国の紋章が入ってる?!」


「おい!ゴーレムの亡骸の中に人がいるぞ!」


 ナギが指差すところを見ると、確かに少女がいた。どうやら意識を失っているようだ。


「うーん、これはあたしじゃ助けれないね…………」


 エリカはそう言ったが、俺がレインに使った謎の回復魔法ならば、もしかしたら助けれるんじゃないか。


 そう思った俺は、少女のおでこに手を当て、謎の回復魔法をかける。


 すると、俺の手から凄まじい光が出た。レインに使った時よりも、威力が増しているようだ。


「こ、ここは?…………」


「「「お、起きた!!!」」」


 どうやら少女が目覚めたようだ。


 俺は場所や、今までの経緯を少女に話した。


「ああ、やっぱり…………私、モンゴメリー王国の王女なのですが、ある日誘拐されて、その誘拐犯から呪いの腕輪を付けられて操られていたのです」


 確かに、少女の腕の近くに壊れた腕輪の破片があった。

 しかしモンゴメリー王国の王女だったとは、驚いた。


「今まで迷惑をかけてしまった人々に謝らないといけないですね…………」


「それは良い事だが、その前に俺が統治しているステリンに来てくれないか?まだ聞きたい話があるから」


「そうだな、ここは危ないから一回王女さんを連れて帰ろう」


 ナギは連れて帰るのに賛成のようだ。リディアとエリカも頷いている。


「ありがとうございます!では、ステリンの街に伺わせてもらいます!」


 そうして、モンゴメリー王国の王女をステリンに案内する事になった。






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