第13話 鍛治師ダンカン
「ここがモンゴメリー王国の王都メリーザか」
モンゴメリーの王都メリーザに来たのは俺、ティナ、エリカ、リディアの4人だ。
ナギには留守中のステリンの守護を任せている。
「とりあえず、宮殿の方に急ごう!」
エリカがそう言ったが、宮殿の場所がわからない。
「ティナよ、宮殿はどのあたりだ?」
「宮殿はこっちです!アルティ様のおかげでようやく父様に会えます!」
「感謝されるのは嬉しいが、俺は当たり前のことをしているだけだ」
「ご謙遜なさらなくても良いのに…………」
「とりあえず、宮殿へ行こう」
俺たちは宮殿へと急いだ。
しばらくして、宮殿の正門に到着した。
すると、人影がこちらに走ってきた。
「ティナ!!!愛しい我が娘よ!待ってたぞぉ〜!!!」
「ちょっ、陛下!落ち着いてください!」
どうやら人影はモンゴメリー王国の国王であるようだ。
国王は半泣きでこちらに走ってきた。
「もう!父様!落ち着いてよ!」
国王はティナの元に来ると、ティナを抱きしめた。
「アルティ様たちの前で恥ずかしいわよ!やめてよ!」
「ああ、ごめんごめん!しかしティナ、よくぞ生きて帰ってくれた!パパは今まで心配の余り、夜も眠れなかったんだぞ!」
国王は嬉し泣きした。
そして、次に俺たちの方を向いて土下座した。
「この度は娘を救っていただき、感謝の気持ちでいっぱいです!つきましては、あなた方をこの国の英雄として歓迎し、私にできる限り、あなた方のお望みを叶えます!」
「いえいえ、そんな事は…………」
「いや、私、娘を救ってくださった方々に何も与えぬ事など、絶対に出来ません!」
「分かりました。では考えておきます」
「はい!」
その後、俺たちはメリーザの街を歩いていた。
その理由は装備を造ってくれる鍛冶屋探しである。
ステリンには残念ながら、鍛治に長けた者がいない。
そのため今まで俺は、元からギルドが持っていた装備を使っていたが、それでは今後あるかもしれない強敵との戦いには頼りない。
なので、強力な装備が必要なのである。
俺以外の3人はそれなりに良い防具を持っているようなので、一旦俺の分だけだ。
もちろん、鍛治師をステリンに連れて帰るに越した事はないが、難しいだろう。
しばらく歩いていると、武器防具を売っている店を見つけた。
中に入ると、強面の店主が話しかけてきた。
「初めてうちに来た客か。何が欲しいんだっ…………ってリディア様ではないですか!どうしてこんなしょうもない武器屋にいらっしゃったのですか!」
どうやらリディアは他国でも有名らしい。流石にオルマンの王都みたいに、通りがかりの人全員が視線を向けるほどではないが。
「私の事は良いからアルティ様に尽くしなさい」
リディアが店主に圧をかける。
強面の店主は俺にへりくだった様子で話しかけてきた。
「お客様、どのようなものが欲しいのですか?」
「剣と全身の防具で、予算は金貨100枚だ」
「き、金貨100枚?!!!この店を買うつもりですか!!!」
「おかしかったか?でも、それだけの性能を持ったものが欲しい」
幸い、俺の財布にはまだ余裕があるので、かなりの額を出せる。
「しかし、そこまで高性能なものは当店には置いてません。ですが、もしかしたらダンカン様なら、高性能なものを造れるかも…………」
すると、それを聞いたエリカが反応した。
「ダンカンって、世界一の鍛治師として有名なダンカン・シルバーじゃん!何か知ってるの?」
「はい、ダンカン様はオレの師匠だったもので。今はこの街の西の外れにいるはずです」
「ありがとう。行ってみる事にする」
俺たちは武器屋を出て、ダンカンがいる場所へと向かった。
その後しばらくして、ダンカンがいるという小屋に入った。
中にはダンカンと思われる、髭をはやした初老のおじさんが何か考え事をしていた。
「お、お客さんとは珍しいな。しかし残念だが、今は依頼を受けてはいない」
「何でなんだ」
「資金不足だからだ。ブリットン帝国の連中に大量につくったにも関わらず、ろくに金を払わず持ち逃げされた。おかげで大赤字だ」
ブリットン帝国の連中って、俺を追放した奴らか。
確かに詐欺や窃盗を平気でしそうな奴らである。
「資金不足なら、俺がこれだけ援助するから、つくってくれないか?」
俺は聖金貨を1枚差し出した。聖金貨は金貨1000枚の価値がある。
「こ、これは聖金貨!!!初めて見たぞ!こんなにあれば十分すぎるぐらいだ!本当に良いのか?」
「ああ。ところで、俺はステリンという街の領主をしているんだが、そこでぜひダンカンさんに鍛冶屋をやってもらいたいんだが、どうだ?」
「おお、それはもちろんやりたい!しかしそれには国王の許可が必要だ」
許可が必要なのは納得だ。
確かに、国王は有名な鍛治師を自国から失いたくないだろうな。
しかし国王の説得を試みる価値はある。
「分かった。許可をとってこよう」
「それはありがたい!許可が取れたら、また来てくれ」
♢
ここはブリットン帝国の宮殿の一室だ。ここではデニス辺境伯と、平和教国から来た枢機卿の男であるドミニクによる密談が行われている。
「ドミニクよ、どうやら私の期待の星だった息子ハーマンがアルティによって殺されたようだ…………クソが!クソがぁぁぁ!!!」
デニスは酷く取り乱した。
「な、なんと!それは災難ですね。アルティを見くびっていたかも知れません」
「あ?ドミニクよ、アルティはたまたま強い武器を装備していただけだ。ハーマンの方が弱い訳がない!私が判断を誤ると思うか?」
「思いませんね。それに、ハーマンが討たれたとはいえ、我々がティナの小娘を操っている以上、モンゴメリーは今や我らのもの!!!」
「そうだな。まだ、アルティ暗殺計画を諦めてはならんな」
デニスは考えた。
モンゴメリーの王女を人質にとっている以上、モンゴメリーを乗っ取ったも同然であり、軍を指揮していつでもステリンに攻め込めると。
デニスはニヤついた。
「今回こそは憎きアルティを討てそうですな!」
「ああ、元は雑魚だった奴がちょっと良い武器つけただけだ。すぐに討てるだろう!」
デニスはアルティが強くなっている原因が、武器が良くなっているからだと思い込んでいた。
実際のアルティが【主神の使徒】を持っている事を知らずに、だ。
つまりデニスは、アルティの本来の強さを見誤っていたのである。
その見誤りにより、後に大変な目に遭う事を知らずに…………
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