【大正浪漫短編小説】花街月影吉原幻灯　―月を詠む人と共に―（約10,000字）

　明治から大正へ。
　近代化の波が押し寄せる東京・新吉原で、一人の遊女が月を見上げていた。
　古い世界の美しさと、新しい時代の息吹。
　その狭間で揺れ動く運命の物語が、今、幕を開ける。
　文学に心を奪われた遊女・雪乃。
　彼女の前に現れた青年は、本の中にしか存在しないはずの理想を持つ人物だった。
　しかし、現実は残酷に二人を引き裂こうとする。
　姉のように慕う遊女・寿々香の失踪。
　迫り来る関東大震災の足音。
　そして、逃れられない運命の選択。
　雪乃の選んだ道は……。