第1章-2 社会性と人間性の損益計算書

第5話 情けは人の為ならず 人間経営の損益計算

人間経営の損得計算(損得勘定?)

 こう申上げると何だか人間生活を損得勘定を徹底して生きていきましょうと言っているようでなんだかちょっとという気もしないではないなぁ。ですが、ここはひとつ昔からのことわざを、この複式簿記の原理に従って論じて参ります。

 そのことわざは、他でもありません。


情けは人の為ならず

 情けは、単に目先のその目の前の人の為だけにかけるのではない。その書けた情けというものは、巡りめぐって自分にも「帰って(!)」くるものである。


 このことわざの本来の意味を古語の教養の著しく欠けた低能無能の類はなんと、と言っても予想の範囲内過ぎるのが痛いところではあるが、

「情けなんか人にかけてもその人のためにならない。だからかけても仕方ない」

という解釈をするという、まあ、ヒトデナシ人非人の風上にも置けぬ、偏差値に例えればどこのFラン三流からもお引取願われる低次元の雑魚がいるそうな。私が高次元の人間様であるとは言わんけど。ま、そんな低能無能偏差値28未満は相手にしてもしょうがないので、先に勧めて参りますね。


金は天下の回り物

 金は天下で巡り巡っているものである。私が過去、たまたま目にしたドラマで、プロの詐欺師がある人にこんなことを言っていました。要は、詐偽なんかに手を出してはいけないよという趣旨で、ね。

「金は天下の回り物。失った金も、形を変えていつかあなたの元に戻って来ます」

 さて、このことわざもよくよく考えてみれば、先に述べたことわざと同じような構図を持っていることに気付かれましたか?


情けは天下の回り物


 どうでしょうか?

 これから、このことを複式簿記の原理になぞらえて論じて参ります。

 さあ、行ってみましょう。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


損益計算書

 複式簿記では必ず出てくる帳簿のひとつですね。貸借対照表は学び始めの人にはなんだかわけのわからない要素を持っていますけど、こちらはなんてことはない。

 要するに、どれだけ儲かってどれだけ金を使ったか。それで、どれだけお金がその事業をしたことによって余分に残ったのか。

 これなら、それこそ単式簿記の小学生でもつけられるお小遣いチョウのノリで何とか理解できそうでしょ。

 ま、そういうノリで少し説明しておきましょう。

 一般に商業簿記における損益計算書は、このような構図でできております。


借方 費用(経費)       / 貸方 売上(儲け)

   当期純利益(残ったお金)


 こうなれば、黒字。儲かりましたでまずはメデタシ。

 残念ながらうまいこと儲からなかったら、こうなるよ。


借方 費用(経費)       / 貸方 売上(儲け)

                     当期純損失(持出のお金)


 これが、基本です。

 これをもとに、人間経営とやらの損益計算書を作ってみます。


借方 かけた情け(諸経費)          / 貸方 助けた結果(成果)

   当期純利益(得られた有形無形の財産)


 こんな感じで、どうでしょうか。

 簡単な事例でトレースしてみましょう。わかりやすく、現金で示しますね。


 手元に現金がない。よって、私はあなたに1万円の現金を借りた。

 その翌日、私はあなたに現金で1万円返すとともに、お礼に1000円渡した。

 さあこれを、この損益計算書に当てはめてみましょう。


1日目 借方 現金 10,000   / 貸方 借入金 10,000


2日目 借方 借入金 10,000  / 貸方 現金  11,000

     支払手数料  1,000


 こんな感じになりましょうか。

 ここで言う支払手数料というのは、一種利息のようなものかもしれませんが、1日で1万円に対し1,000円というのは年利にすると世にもすさまじいほどの利率になってしまいますので、そこはあくまでも前日助けていただいた御礼という趣旨でそのように表現しているまでです。

 助けてもらったお礼として利益をもたらしてくれた形のケーススタディーになりましたが、これが人間経営ということになってくれば期間も長いスパンになるし、それこそゼニカネの問題ではないと言われればもうそれまでという話にもなるのですが、その人の情けというものの構図はすべからくこの形をとっているのです。

 そしてその情けというものは、形を変えて天下の回りものとなって今困っている人をまた助けていくというイメージで、御理解ください。


 人の世の情けというものは、お金と同じように、世の中の人々のために天下を巡り巡っているのです。

 その構図はまさに、この損益計算書によって明確に表現されます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る