第2話 人間性を後天的に高めるための「負債」欄

 前回お話した純資産の欄は、先天的もしくは後天的に自らの血肉となる人間性の部分についてでしたが、今回は、後天的に自らの人間性を高める要素となる負債欄について論じて参ります。


 どんな企業であっても、一時的に負債が計上されることは普通にあります。

 いくらいわゆる「無借金経営」状態であっても、支払が確定していない債務や期限の到来していない支払予定の債務は、まさにここに当てはまるわけです。

 少なくとも、その時点においては。


 自己資本比率(貸方内における 負債 ÷ 資本 × 100)


 こういう指標がありますが、この指標はもちろん、高い方がいい。理想としては自己資本のみで負債は一切ない(自己資本比率100%)のが理想ですが、そう都合よく行くわけでもないことは言うまでもありません。

 こちらも、以前執筆したものを引用させていただきます。なお、多少のレイアウト及び表現の訂正を施しておりますことをご容赦願います。


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https://kakuyomu.jp/works/16817330656910794572/episodes/16817330660505223989

↑ 第64話 資本と負債~先天的か、後天的かの差


 次に、貸方の負債欄を述べて参ります。

 こちらは、後天的な、おおむね物心ついて以降の、人から影響を受けて得たものを指すとみていただいて、いいでしょう。

 実在の会社なら、負債欄がほとんどない健全経営の会社とやらもあるかもしれませんが、人が生きていく上では、会社経営以上にそうもいかないものであります。

 いろいろな人のおかげで、さまざまな恩恵や情け、さらには、かけがえのない財産やノウハウをいただくことがございます。

 そういったものは、この欄に当てはまるものと考えていただきたい。


 これは会社の経理と違いまして、ここにあるものは単なる負債ではなく、前の世代から後の世代に向けて託された財産やノウハウの立ち位置となる欄です。

 ですから、ここに記載されているものは、反面、借方の資産の欄にも形を変えて存在しているものであるとご理解ください。

 これがあるからこそ、「情けは人の為ならず」ということわざを立証する上で決して無視できない構造がこの貸借対照表上には隠れているのであります。


 先ほど資本の欄でも言い忘れましたが、あえて申し添えておきましょう。会社を設立するにあたり、例えば現金300万円を資本金にあてるとします。

 その金額は、資本金300万円として貸借対照表上の資本欄に記載されます。

 しかし同時に、借方の現金もしくは預貯金の欄に、厳密にはほぼ預貯金だが一部現金ですよ、みたいなところが真相かもしれませんが、それはともあれ、その資本金と同額のものが、借方に記載されます。そうすることで、借方・貸方ともに300万円という貸借対照表が出来上がるわけです。


 負債にしても、同じことです。

 誰かから得た情けというものは、負債欄と同時に、形を変えてその人の資産欄にも表れるものであります。

 そうなることで、その人の財産として人からの情けは刻まれていくものである。

 そしていつか、その人は別の人にその負債を返すかのごとく、情けをかける。

 そうすることで、負債を返済していくのです。

 そして得られた売上は、資本の増資や再生産の投資へと回っていく。


 そうしていく中で、その人は「人間経営」をしていくという流れです。


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 商業簿記以上に、人間経営においてこの「負債」欄は、人とのつながりの中で後天的に得られていくものです。だからこそ「人間性の拡大」を図るにあたっては、この負債欄をどんどん拡大していく必要さえもあります。

 もっとも、それを負債として残していくだけでは駄目であり、それを元手に更なる拡大再生産、要は先ほどの引用にもありましたけど、情けを人のためにこそ使うくらいの勢いで活用していくことで純利益を得て、それを負債の返済や資本たる純資産の増資へとつなげていくことで、人間性はもとより自らの社会性も磨いていくことができるわけです。

 要は、この負債欄を充実させることなしには資産欄である社会性も純資産の増資もおぼつかないわけである。

 後天的に人間性をブラッシュアップしていくにあたっては、何よりも質より量の側面もあるわけです。プロ野球選手の練習も去ることながら、私たち物書きを常とする者における日々の執筆と同じですな。

 それを徹底的に行っていくことで、人間経営をさらに充実したものへと発展させていくことができるわけであります。


 もっともこう言ってしまうと売上至上主義よろしく借入をいくら増やしてもいいからどんどん拡大路線で、という手法を容認しているようにも思えますが、それはしかしやり過ぎるとこれまた大きな弊害を生む可能性が出て参りますので、そこはやはり注意が必要というものです。

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