第17話 青少年の社会問題に取組まれた偉人
この方はまさに、こういう方ですとしか言いようのない方です。
最初は自宅で学習塾を開いていたのですが、相次ぐ青少年の社会問題、高校中退に伴って発生した大検こと大学入学資格検定の普及、高校転入に関する正確な情報提供のための冊子作製、さらには不登校に関する相談窓口の設置等々、昭和後期から平成初期にかけて、様々な取組をされました。ときには自費出版で高校中退者の短歌を編集して発行されたり、さらには不登校の子どもたちのために18大学の学長さんからの手紙を収録した冊子をこれまた自費出版で発行されたり。
確かにこれらの取組は、その時々でマスコミにも大きく取り上げられました。そう言えばこの私も、その方のおかげで全国放送の番組にも取材を受けたことがありました。大検から大学に現役合格というのは、当時かなり珍しかったこともありまして、他にも地元の放送局の夕方のニュースに取り上げられたこともありました。
とはいえ、この方はそれで経済的な面において富を得られたかと言うと、そんなことはありませんでした。金銭面では、トータルで持出のほうが多かったように思われます。先程の不登校の子らへの学長からの手紙という冊子に至っては、そう言う問題ではないと言われてしまえばそれまででしょうが、金銭面では当時で確か38万円ほどかかったと言われていましたっけ。
この方の奥さんが医療関係のお仕事をされていましたので、旗から見ればそれでその方の家計は維持されているようにも見えましたが、まあ、そう言うことを御本人の前ではさすがに申し上げたことはありません。
さて、この方の財務諸表はどう表されるか。
確かに資産(社会性)欄の物理的な現金や預貯金については少なかったかもしれませんが、それ以外の資産が我々の比にならぬほどの比率を占めていたことは想像に難くありません。
その分、それこそ先程の冊子出版のための費用のことなどもありますから(さすがに無料ではなく実費弁償は頂いておられました)負債欄が金銭面において幾分なりとも発生していたでしょうけれど、純資産(まさにここはその言葉がピッタリです)は大いに充実していたと言えましょう。金銭面における負債欄以上に。
実のところ、世の中はこういう人のおかげで成立っているところもあるという典型例と言っても過言ではないでしょう。
この方の社会性と人間性をあてがった財務諸表を意識してみるに、人間というものはゼニカネだけで成立しているものではないことを痛感させられますね。
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