社会性と人間性 ~複式簿記の視点より 

与方藤士朗

序章 複式簿記の原理

第0話 複式簿記の基礎の基礎より

 どこの銀行でもいいです。あなたの通帳を見てください。

~ ネット通帳より、紙の通帳をできれば見てね。

 通帳には、お金の出入りが記されていますね。


 問題は、その位置。

 入って来たお金は右側、出たお金は左側。


出金(債務の履行) / 入金(債権の発生)


 このような形で書かれているはずです。

 これは、あなたのためを思ってそうなっているわけではありません。あくまでも銀行側の都合でそうなっていると思っていただいていいでしょう。

 銀行側から見れば、その通帳のお金の出入りは、こうなるはずです。


債権(自社の利益) / 債務(自社の借入)


 こちらからしてみれば銀行との関係は確かに1対1ですが、相手にしてみればどうでしょうか。それこそ、あんたの私的銀行(プライベートバンク)じゃねえんだよとでも言いたくなるような話にもなりましょう。

 というわけで、先方の都合の良くなるように、あの通帳のお金の出し入れの枠は出来上がっているというわけです。


 さて、銀行に限らずおよそ商売をしていれば必ずしなければいけないのは、確定申告。そのベースになるのは、複式簿記。その複式簿記は、基本的にこの二つの表で構成されています。


貸借対照表(B/S) balance seat

損益計算書(P/L) profit and loss


 さあ、これから1万円を使って何か商売しようとなった。

 あなたは1万円を投資します。その1万円は、支出なのか、収入なのか。そんなことは、この際どうでもいい。要は、その1万円がその事業においてどんな状態にあるかを一目でわかるようにしておかないといけないのです。

 その1万円というのは、確かにその事業において「資本=純資産」となる。

 一方、現段階ではそれで何かを仕入れたわけではない。

 よってその1万円は、現金として今、そこにある。

 その状態を、このように左と右に分けて記載します。

 左側は、借方。右側は、貸方。

 借りたり貸したり、そこは深く考えず、そういうものということで。


借方 現金 10,000 / 貸方 資本金 10,000


 これがもし、人から借りた1万円なら、こうなります。


借方 現金 10,000 / 貸方 借入金 10,000

                  資本金      0


 この借方とやらに記載されるのは、資産。つまり、あなたの事業にお金を持ってきてくれるシロモノがここに延々記されるわけ。現金、預貯金に始まり、クルマやら家やらのでっかいシロモノもあったりする。家賃が入ってくる土地や建物なんかもあるし、何なら、私のようなへぼ作家でも、作品作りのために先日揃えた電子書籍の時刻表なんかも、厳密にはここに入ってきますのよ。まあ、本来なら3万円前後かかるところを1万5千円弱で18冊、大正末期から昭和末期までの時刻表の復刻版を買いそろえましたもので、うまいこといい時期に買えたってことだぜ。

 今述べた本代程度のものは、経費ってことで損金になるくらいのことですけど、厳密にはこれも、資産やがな。それがあるからこそ作品が書けて少しは金目のものに繋がってくるわけだからね。


 逆に、貸方とやらに記載されるのはと言うと、これはいささかならずややこしいのだが(特に初心者)、負債、まあ借金の類と思っていただいても構わん、そういう性質のものがひとつ。これ、増えたらヤバそうだと思うでしょ。

 もう一つ、この事業の元手となっている資本、最近では純資産という名前で呼ばれているが、まあそんな名前はどうでもええけど、要は自分で用意した金目のもののことね。こっちはいくらあってもいいかもしれんが、いくら何でも自分で全部というわけにいかないのが辛いところよ。

 しかし、右の貸方のほうのシロモノはどちらも、自分のところから出ていく予定もしくはすでに出ているお金のおはなしってことです。


 ざっくりの説明はここまでとして、これは簿記の授業ではありませんので、とはいえ複式簿記がわからない人のための最低限の基礎知識ということで、まずは軽くおさらいもしくは予習ということで、御意識頂ければ幸いです。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


 さて、これからお話していくのは、この複式簿記の原理を使って、

社会性と人間性

 このふたつの関係を解くことにより、その人の言うなら「人間経営」を分析することで、人のあるべき道を探るためのたたき台としていく手法です。

 そういえば、私がかつて幼少期を過ごした養護施設のパンフレットには、

人間性・社会性を ~

と書かれていました。

 あ、この書き方、銀行の通帳の原理やな、と、すぐ気づきました。

 ですがここでは、複式簿記を使って言うなら人間経営の「プロ」を目指すためのお話となって参りますので、あくまでも


借方 社会性 / 貸方 人間性


という形で論を進めて参ります。

 なぜ借方が社会性で、貸方が人間性か。

 先ほどの復習をしておきますね。


借方 資産 / 貸方 負債と資本(純資産)


 これに合せて社会性と人間性をトレースしてみますね。


社会性 = 周囲からあなたに利益を与えてくれる性質のもの

人間性 = あなたが周囲に対し利益を与えられる性質のもの


 そして人間性についても、人から与えられたものは負債、自らのものとして確保できているものが資本=純資産という形で、分けて考えて参ります。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


 では次回より、この社会性と人間性の貸借対照表を説明してまいります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る