5.洞窟城(前編)
細かく砕かれたそれは、氷粒のように見えた。
※ ※ ※ ※ ※
作戦の開始前、サニディンから、
「懸念っていえば、いきなりぴんぴんした君が現れて、グラナドが幻覚と間違わないかって事くらいかな。まあ俺達が一緒なら、それもないか。」
と聞いていた。
今度の「中ボス」は、洞窟城(石造りの、きちんとした建物だが、見かけ上、背後の山に密着し、洞窟の入り口に門を付けたように見えた。)の地下にに空いた穴を守っている。城の周囲には、大きな刺を持つ、蕀の林があった。人工的に強化されたもので、以前は、外敵に向かって蕀の鞭を振るっていたが、何故か、今は動かない。
固まって、石化していた。石というより、砂を固めたみたいな質感だが、触れただけでは崩れない。しかし、力を入れると、簡単に曲がるし、細い物は崩れた。
少年兵と魔法使いを中心に集めている、ここの責任者は、人族のマヅダオス、サヅレウスという二人の「魔導大将」だ。
この二人は、マヅダオスが土魔法、サヅレウスは風魔法で、「ザラストに師事した魔法使い」という触れ込みだった。だが、実際は、マヅダオスは軍の防具開発部、サヅレウスは医療部門の責任者で、その役職ではエキスパートだが、魔法能力は「人並」だった。
彼等は、カリグリウス時代の精鋭部隊にいて、能力は高かったため、早く出世した。彼等の所属部門と地位には、政治的な権力はないが、それが幸いしてか、カリグリウスの周囲が乱れている時も、安定した地位を保っていたが、最後には、暗殺に加わったにもかかわらず、バドリウスにも仕え、さらに、今はザラストの配下になっていた。
この「寝返り歴」のため、魔族だけでなく、人族にも嫌われていた。だが、ザラストは好みなのか、こういう者をよく使った。
「一度、裏切った者というのは、意外に使えるからな。」
とセレナイトが言った。
「特に、裏切る時に、『正義』の怒りに燃えて、自分を完全に正当化するタイプはな。もう一度裏切ったら、大義があっても、非難は免れない。だがら、二番目の主が、どんな悪党であっても、『善人』とこじつけて、忠実に使える。
自分が『正義』でない事には、耐えられないから。
『大義』をちらつかせれば、なんでもやるし。」
なんとなくだが、ここに飛ばされる前、言い合いをしていた、若い騎士達の事を思い浮かべた。
「だけどさ、あいつらは、『裏切り』は二度目だろ。確かに、バドリウスは、まあ、あれだ。でも、それでザラストに着いても、『正義』なんて、だれか思うか?」
とサニディンが問い掛けた。しかし、皇帝が代わっても、人族内で地位を維持してきた彼等からしてみれば、仮に「正しい」と感じたとしても、いまさら、魔族に味方する訳にも行くまい。
「たぶん、本当に、『人目』を気にしないタイプなんじゃないか?人目っていうより、人とか社会とか、世間をほとんど気にしないタイプというか。」
専門用語でなんと言ったかは忘れたが。
「ラズーリ、ツボ付いたな。まあ、そうでなきゃ…。」
サニディンは、眼前にそびえる、崩れかけた穴蔵を指した。
「これを『楽園城』とは言わん。」
俺、サニディン、セレナイトは、三人で「楽園城」という名の洞窟――というか、崩れた砦というか、穴蔵というか――に、裏から忍び込む。
この城は、昔は、「巣穴城」「イバラ城」と呼ばれ、一応は観光名所だった。遠くからだが、独特の景観の見物に訪れる者はいた。近隣には、それで潤う町が点在していた。廃れて久しいが、マヅダオス達が、いきなり城を改築した時は、僅だが、歓迎する空気もあった。
イシュマエルとグラナドは、故郷を追われて、共に旅をして、ここに流れ着いた、という触れ込みで、潜り込んでいた。ただ、グラナドは、街の女性と恋愛中という設定で、時々、「外泊」として、本拠地に戻っていた。彼の恋人役はグロリアが担当し、グラナドが本拠地に戻るか、彼女が会いに行くかで、情報を交換した。
無理やり連れていった子供達については、親が行っても返さないが、自分からやって来た、一定以上の年齢の者に対しては、「締め付け」は緩かった。
マヅダオスとサヅレウスは、魔法はやはり大した事はなく、穴については、制御しかねていて、どうやら、積極的に使用したくない様子らしい。それでよく俺達を召喚できたな、と思ったが、元々は、向こうから「弾かれた」のだったな、と思い直した。
忍び込むにあたり、セレナイトかサニディンのどちらかは、守護対象のジェイデアの側にいなくてよいのか、と思ったが、今回は、時空魔法に強い(と見なされている)、守護者三人で行くほうがいいだろう、ということになった。穴を塞ぐのはセレナイトしか出来ないし、サニディンは、一度、中に入った事があった。
ジェイデアの護衛は、グロリア他、女性の飛び道具部隊が引き受ける。ミルファは、銃が使えるため、彼女達と行動を共にする。
このワールドの銃は、完全な魔法銃で、自分の使える魔法を弾にして発するため、銃の腕の他、精霊魔法が使える事が条件になり、使用者は少ない。魔法能力はそれほど高くなくて良いが、命中させるのは、訓練がいる。
これは、意外にも、魔族ではなく、人族の開発した武器だった。
人族では、精霊魔法が使える民族は、「魔族の仲間」として、居住地を山や離島に制限された歴史があった。彼等が独自に開発した、狩猟の道具、ということになる。
制限自体は、カリグリウス以前に、とっくに撤廃されていた。が、バドリウスが後に復活させてしまい、反抗した人々が、武器として使用するようになった。
《グラナドは、えっと、ラズーリさんの元気な姿を見たら、安心すると思う。》
ミルファは、俺をラズーリと呼ぶか、叔父と呼ぶか迷っていたようだ。
彼女は、母のラールから、俺の事を、「たいてい、何でも出来たし、なんだが、神様みたいな人だった。」と聞いていた。「本当に、神様だったの?」と聞かれた時は、当然「違う」と答えた。
ラールは、火のエレメントの時に、「何か変わった」と気付いていたようだ。
シェードは、医療・看護班を率いるトパジェンの護衛に着いた。護衛、と言っても、この作戦では、医療チームは、かなり前に出る。砦の中には、近隣から無理やり連れて来られた人族・魔族取り混ぜた、少年兵が大勢いた。
彼等には話を通していて、合図で、一斉に蜂起する予定だったが、中にはかなり衰弱した子供たちもいるので、作戦は、迅速な保護を優先していた。
《つまり、あんたは、自分の意思で、ずっと俺達の味方をしてくれてるんだな?》
彼は、「融合」やなんやかんやはどうでもいい、一番、肝心な所は、それだ、と断言した。
彼の周囲には、ホプラスと直接面識のある者はいなかった。(騎士団で同期のエイラスが、地元で陸地側の自治会長的な立場だったが、彼とは直接は話したことはあまりなかったそうだ。)
ただ、ロサマリナ市とラズーパーリは比較的近いので、ホプラスの墓所には、行ったことがある、と言っていた。墓に遺体が無いことは周知の事実だが、生きて目の前にいる(体は別だが)のに、「融合」の説明をしても、まだ分かりにくいようだった。
《とにかく、一緒に、やりとげよう。》
彼は、転送魔法は使えなくなっていた(ワールドにないためだろう。)が、素早さは上がっていたので、今回の役割は適任、ということだ。
魔法剣は、このワールドには同じ技はないが、剣に属性魔法を付けて、弱点をつく技はあった。俺は守護者なので、体に付加された技は使える。
新しい物を使ってみたい気持ちはあったが、敵は火属性ではないし、慣れた技のほうが、使い勝手は良い。
「今回の穴を塞ぐと、君達のワールド間とは、直接の行き来は出来なくなる。塞ぐ前に、向こうに送ることも考えたが、不安定な物には頼らないほうが良い。サニディンの時とは、状況も異なる。」
俺は、向こうで、グラナド達の姿が見えた話をしていたが、彼等は、出てきたストーンサークル付近をうろうろする事が多かったかららしい。
あれは「補整」の役割も果たしているらしく、実際、偶然にもあれが無ければ、「楽園城」に出ていたかもしれない。
「よし、行くぞ。」
俺とセレナイトは剣を抜いた。向こうで使っていた剣は、刃は無事だが、持ち手が曲がっていたので、直してもらっている。だから、ここで借りたが、俺の使う「両手剣」に相当するものはないので、「直剣」の中から、一番太いタイプを選んだ。それでも比較すると、細かった。
魔族の剣士は、重い盾は持たず、軽く薄い盾を魔法で強化するか、完全な魔法盾を使う。人族には正式の軍隊としては、重装兵がいて、大きな金属の盾を使っていたが、武器は片手槍だ。盾を使わずに、両手で剣を持って戦う剣士は、前述の属性剣を使用する場合が多く、ここでの「魔法剣士」とは、「無属性の魔法剣を使う神聖騎士」ではなく、「属性剣を使う剣士」を指していた。
「途中で出くわすとしたら、少年兵だが、彼等は、無理やり連れて来られたのが多いから、戦意はない。だけど、中は通路がくねっとして、見通しが悪いんで、出会い頭だと、咄嗟に攻撃してくるかもしれん。剣より、盾をメインにして、進んだ方がいいが、視界が悪くなるんだよなあ。」
サニディンに言われたので、透明度を上げた、水の盾を出してみた。彼は、
「へえ、そういう手があったか。さすが、新技か?」
と、えらく感心していた。
蕀を抜け、狭い内部に、裏口から回る。隠し扉ではない、ただの裏口だが、見張りも鍵もなかった。
入ってすぐは、がらんとした部屋だった。倉庫のようだが、特に何もない。中に通じる出入り口が、ぽつんとある。
そこから暫くは、微妙に蛇行した廊下と、石か土か、自然物の数段の階段が続くだけだった。遠くに花火のような音も聞こえる。
石の狭い廊下を難なく抜け、薄汚れてはいるが、赤い派手な敷物の、広い廊下に出た。とたんに、花火、いや、表の戦闘の音が、よりはっきりと聞こえた。岩の洞窟のような建物には、上方に、ガラスのない窓が無数に開いていて、空がモザイクのように見える。
表からは、数階建てに見えたが、違った。
「あれ?まじで、戦闘?戦意ないはずじゃ?」
「魔術士が二人とも、表にいるようだな。」
それで、中に誰もいないのか。中の警備に人数を確保できなかったのかもしれないが、無用心だ。
広目の回廊の中央に、敷物と同じ色に塗られた、派手だが、古い扉がある。ここも鍵は無いようで、蝶番が一部外れていた。
罠を警戒したが、気を付けよう、と言う前に、サニディンが、勢いよく開けた。
「探知魔法が使えないなら、勢いで押しきるしかない。ここまで来たんだ。」
だが、目的の場所は、地下だ。この、いかにも広間な扉は無視しても良いのではないか。
だが、これは正解だった。
扉を開けた途端に、火の玉が飛んで来た。俺とサニディンは、咄嗟に魔法盾を出した。セレナイトは、盾より広い、ベールのような保護幕を出した。俺たちではなく、部屋の中に向かって。
ベールの向こうには、グラナドがいた。
俺は、思わず彼の名を呼んだ。彼は、俺を見て、
「ラズーリ!お前、怪我は…。」
と言ったが、
「気をそらすな!」
と怒号が飛ぶ。
グラナドは、はっと振り向き、飛んで来る土礫を、土の盾で防いだ。礫は盾に防がれた。少し柔らかい表面に埋没している。盾を解除すると、埋まっていた礫は落ちた。
土礫に見えたそれは、金属片だった。弾丸のような、特定の形は取っていない。形は様々で、妙にぎらりとした尖った断面が、氷のように光っている。
「盾の表面を柔らかくして、受け止めるようにしてくれ。柔らかすぎると貫通してしまうが、硬すぎると、跳ねて、勝手な方向に飛んで行く。それで、あれだ。」
グラナドは、そう言いながら、怒号を飛ばした人物の方を、指し示した。
グラナドより少し小柄な、ほっそりした少年がいた。ルビーみたいに、真っ赤な目をしている。肌は浅黒く、髪も黒い。恐らく、魔族だろう。
彼は怪我をしていた。地べたに座っている。黒い服を着ていたが、所々、避けて血が滲んでいる。
傍らに、ローブ姿の白髭の老人と、十歳くらいの少年が二人と、赤く光る剣を持った、長身の、青い髪の青年がいた。
少年は二人とも、腕に少し、怪我をしていた。サニディンが、
「お前にしちゃ、手こずってるじゃないか。」
と、声をかけた。青髪の青年が、
「さっきまで、もっと、砂嵐みたいに、荒れ狂ってたんです。縄や鞭みたいでした。今は、なんとか、ここまで、押さえましたが。」
と説明した。彼の目は、片方が、紫に光っている。
傍らで、赤い目の少年が、咳き込んでいた。咳に血が混じる。白髭の老人が回復をかけているのだが、うまく働かないようだ。
グラナドは、セレナイトに、
「調度良かった。回復を頼む。あんたなら、なんとかなる。」
と、早口で言った。
青年は、
「回復が終わったら、彼等は外に出しましょう。彼が、あの傷です。かなり出血しましたから。」
と、剣を構え直した。刀身が赤みを増した。火の属性剣らしい。
彼が、イシュマエルだろう。魔法の専門家だと思っていたが、ジェイデアの護衛官なら、剣も得意なのは納得だ。
彼は、剣を地面に突き立てると、呪文を唱えた。グラナドが唱和する。先程のセレナイトのヴェールに似た、バリアが広がった。
剣を立てた場所の他に、二ヶ所、杖がたてられている所があった。三点で三角のバリアの基点になっていた。
床は土のようだが、それほど硬い物ではないようだ。
「もう、わかったろう。」
グラナドが、子供たちに向かって、言った。
「お前達の村がどういう所かは知らんが、この城は、魔族だろうが、人族だろうが、普通に暮らせる所じゃない。マヅダオス達は、お前たちを騙したんだ。」
それから、俺達に、
「残ってた子供達は、彼らで全部だ。後は、全部、表に行った。サヅレウスは、一緒に行った。マヅダオスは、留守を守っていたが…消えた。」
と語った。
「吸い込まれたのか?」
と俺は問い返したが、そうではなく、向こうから吸い上げたエレメントを、全て自分の体に取り込もうとして、体が消滅した、という話だ。
グラナドは事情を簡単に語った。
彼とイシュマエルは、魔力の高さで、うまく取り入った。
グラナドは子供の魔法教育、イシュマエルはマヅダオスの助手として、穴の管理を任された。グラナドは、村と城と本拠地を往復したが、子供を取り返したがっている大人達が、彼の目的を悟り、協力を申し出た。魔法が使えないと中は危ないので、村人のほとんどは、グロリアに話して、本拠地に回した。
魔法が使える者に関しては、「子供達が帰れないなら、協力するから、側にいたい。」という話にして、中に連れ込んだ。
「子供達は、全員無事だ。資質があまりないのに、魔力を搾り取られて衰弱している者もいたが、サヅレウスは、一応は医者だから、そういうものは休ませていた。だが、マヅダオスはな…。相方に比べて、勘だけは良かった。一緒に戦いに行ったのに、戻ってきて、俺が見張りの子供を説得してる所を見られた。その途端に、なし崩しに…。」
「能書き垂れてる間は、ないぜ。勢いの落ちた、今がチャンスだ。」
回復の終わった、赤目の少年が遮った。グラナドは、聞こえないように、「生意気なガキ。」と呟き、
「お前は、じいさん達と出ろ…と言いたいとこだが、動かないほうがいいな。まともに喰らってんだ。片付くまで、座ってろ。」
と言った。確かに、少年は、立ち上がりはしたが、二人の子供に、左右から支えられている。
「完全に傷を塞ぐには、全部、金属片を取ってしまわないと。ここでは、無理だ。出血多量になる。」
サニディンが、真面目な声で言った。イシュマエルが、
「しかし、彼がいないと、魔法が…。」
と言った。最高の魔法使いの割に弱気だが、属性魔法の効きが弱まってるなら、慎重な発言と言うべきか。しかし、改めて少年を見て、ふらつく様子に、黙りこんでしまった。
「わかったら、大人しくしていろ。君まで庇う余裕はない。」
とセレナイトが冷静に言った。少年は、子供の手を振り払い、進もうとしたが、サニディンに阻まれた。
「その体じゃ、無理だ。無茶したんだろ。」
少年は、直も降りきろうともがいた。老人が、「その子は、私達を庇って…」と、おろおろと言った。
俺は、サニディンに支えられたままの彼に近づき、その目を覗きこんだ。
透明な、深みのある、赤い目だ。血が透けて見えているのではなく、茶色の変種のようだ。それでも、こんな色の目は、はじめて見た。
俺は、その目を真っ直ぐ見ながら、言った。
「今から、俺達は、穴を塞ぎに行く。腕は信用してくれて良いが、正直、何が起こるかわからない。こちらのご老人達だけで、戻すのは、危険だ。だから、ここにいて、いざという時には、彼らを守ってくれ。」
最後に、いいね、と、ホプラスの口調で念を押した。
少年は、少し考えてから、小声で了解した、と言った。
「流石だな。」
サニディンとグラナドが、同時に言った。どういう意味だと、突っ込む余裕は、残念ながら無かった。イシュマエルが、あ、と短く叫ぶ。
指した指先、広間の奥、きらきらした渦がある。金属片がまばらなため、厚みは感じさせず、渦の背後に、幅の拾い、下り階段が見えた。
地下への道は、ここにあったのか。それなら、そうと、と思ったが、サニディンも驚いていた。
「さっきまで、塞がれてたんだ。サヅレウス達の私室か、庭の古井戸の隠し階段からしか行けないはずだったが、吹き飛んだ拍子に、見つかった。」
グラナドが、俺達を見回しながら、説明した。何をどう吹き飛ばしたが気になったが、セレナイトが、
「あの向こうだな、行くぞ。」
と、剣を構え直した。
「腕」は飛んできたが、勢いはない。ただ、剣で攻撃を当てると、四散するので、盾でうまく止めないと、砂埃のようになって、視界を奪う。階段の方向に進めばよいので、それほど不自由はないが、タイミングをよく見て、吸い込んでしまわないように、注意する必要はあった。
盾にはまった欠片は、最初は灰のように白くなり、勢いがなくなったかに見えたが、いつまでも埋まっていると、ほんの少しだが、煌めきを取り戻してしまう。頃合いを見て、盾を解除して、床に落とした。
地下に降りてしまうと、欠片は飛んで来なくなったが、急激に脚が重くなった。
というよりは、壁に向かって、圧力を掛けられているようだった。だが、イシュマエルは、
「なるべく、入り口近くにいないと、引きずられます。」
と言った。
「押す力と、引く力は、交互に来ます。引く力のほうが強いんです。さっきの砂嵐は、切り替わる時に起こるようなんですが…。」
彼は、これに気づく前に、怪我人が出た、と付け加えた。
部屋の中央には、「鏡」があった。金属やガラスでできた物理的な鏡ではなく、水の魔法盾に似た、半透明の平たい板だ。表面は虹色を帯びている。色彩の中に、向こうの様子だろうか、人の顔や町並みが、ランダムに浮かんで消える。
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