4.地への帰還

「帰り」は、あっさりしていた。グラナドは、あちこちに挨拶に回っていたらしく、昼になって、やっと捕まった。それから、夕方になる前に、ストーンサークルから帰る事になった。だがら、二人だけで話す機会はなかった。


セレナイトは、どこから帰っても同じだが、こちら側のワールド住人の手前があるので、儀式めいた手順がいる、だからストーンサークルから帰ってもらう、と言った。




ミルファは、泣いていた。グロリアもだ。トパジェンも涙ぐんでいた。シェードもだが、無理して、泣いていない振りをしていた。


イシュマエルは、グラナドに、


「もっと、色々、魔法の話をしたかったな。」


と言っていた。グラナドは、


「よせよ、調子が狂う。」


と言っていた。ジェイデアは、皆に、


「短い間だったけど、楽しかった。本当に、助かったよ、ありがとう。」


と、優雅な笑みと共に言った。セレナイトは、皆には、


「寂しくなるが、元気で。」


俺には、


「元気で…まあ、近いうちに、また。」


と、小声で言った。


サニディンは、


「アリョンシャに、宜しくな。クロイテスにも。」


と言ったが、


「…と、説明に困るか。」


と、笑っていた。俺は、


「ペンダントは、結局、君がもってるのか?」


と訪ねた。娘さん達からの贈り物で、中に、彼の両親の形見の、焼け焦げたボタンが入っている。彼が、自分自身の形見に、取っておいた物だ。


サニディンは、ああ、と答えた後、俺を抱擁し、


「元気で。無理はするなよ、ネレディウス。」


と言った。


「お前もな、ガディオス。」


俺は古い名前で答えた。彼は、グラナドに、


「殿下、お元気で。毎日、ご多幸をお祈りしています。」


グラナドは、


「神聖騎士アベル・ガディオス、お前は、立派な騎士だ。誇りに思う。世界が別たれた後も、ずっと。俺達は、お前を忘れない。」


と言った。ガディオスは、感極まって、泣いた。


サークルの中央に立つと、淡い光が、俺たちを包んだ。サークルの中、グラナドが身を寄せ、


「全員、寄れ。念のため、離れないようにしないと。」


と、皆に言った。俺は、光に合わせて、高揚する感慨と共に、右手でグラナドを引き寄せ、左手を、別れのために振った。




ジェイデア、イシュマエル、グロリア、トパジェン、サニディン、セレナイト。他にも、大勢の、仲間たちの顔。光に、七色に霞み始める。




俺達は、No.24601を後にした。




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勇者達の翌朝・新書(中編1) L・ラズライト @hopelast2024

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