2.廃墟のキャンプ

捕まった男は、すぐに意識を取り戻した。本拠地には連絡を入れて、身柄は船長に預けた。湖上の事件だが、場所はハイコーネに近く、男は手前の港からハイコーネまでのごく短距離の旅だったので、恐らくハイコーネの警察の扱いになるそうだ。船舶組合からジェイデア側に引き渡すのが、こちらには都合が良いが、どちらにしても、その前に医師の治療を必要とした。


シェードが水中で格闘した時は、中々に手強い戦いぶりを見せたが、引き上げて見ると、あちこち骨折していて、内出血も見られた。


シェードのせいではなく、実力以上の魔法を、道具や薬で強化して使い続けた、その反動だったようだ。


グラナドは、乗り合わせた人々の、「中身の不一致」は一通り確認したが、彼は引っ掛からなかった。西の中規模な都市の身分証明書を携帯していて、それによると、人族となっていたが、使った魔法は、幻惑術の系列にあたる。どうやら魔族のようである。


俺達も、行く道である事だし、後は船長に任せ、先に進んだ。


一行にジェイデアが含まれていると勘違いしたのか、俺達の正体がばれたのか、どちらにしても、こちらの情報を把握した上での仕掛けだと思われる。


イシュマエルによると、三大公の、ジェイデアのレエル公爵家と、前女王パーミーナのバートリ公爵家は、仲が良かったが、残るツペシエ公爵家は、王位を巡る騒動以外にも、衝突することが多かったそうだ。だから、ツペシエに使えていた魔族が、ジェイデアに味方したくなくて敵についた、というのも有りだ、と言った。だが、俺は、人族の中でも立ち位置の怪しい(と思う)、出来立ての団体に、ここまで身を棄てて協力するかは疑問に思った。


だが、当面、俺達の問題は、ツペシエよりは、ハイコーネだ。


相手側にばれてる、と言うことなら、面倒はいらない、ストレートに乗り込むことにした。ジェイデア達はハイコーネ市長に話を通しているので、そのままで行く事になる。別行動の俺達は、奴等がキャンプに使用している、遺跡跡に直ぐに向かった。考えた設定も、先触れ等も一切無しだ。


どちらにしても、リアルガーが遺跡に残っていたら、顔を知られているイシュマエル、守護者の俺が居れば、強引な展開にはなったろう。


遺跡までは、すんなり進んだ。障害は、緩い上り坂程度だ。入り口には、「水の天女団」と、「オリエンタル」な雰囲気の看板がかかっていた。俺達のワールドなら、チューヤ風に南方風の色彩を添えた、といった所だ。遺跡の元の壁か、後から石と木で建てたものかわからないが、派手な絵の壁が建ち並ぶ。人の住居は、主にテントのようで、壁の残っている区画には、板で天井をつけている。


戦闘になる覚悟はしていたが、大半は難民のような者だから、戦闘はないだろう、と思っていた。だが、入り口近くで、槍で武装した兵士十人に、いきなり攻撃された。さらに、弓矢も飛んできた。槍は、イシュマエルの魔法で、あっけなく焼けた。木製だったようだ。兵士は俺とシェードで捉え、武装解除させた。矢はグラナドが盾で防ぎ、ミルファが射手の武器を狙って落とした。大きいが、柔らかい木で出来た弓で、矢も木製だった。


「向こうでも、今時は、こんなのは見ないわ。」


ミルファが珍しそうに言った。矢は俺達の所まで飛ばない物が大半だった。数は多いのだから、上に打ち上げていれば、効果は高かったろう。


槍も、太くもない木の棒に、石の切っ先をつけているのと、木の先を削ったものの二種類だ。火で焼かなくても、剣の敵ではない。


槍の兵士達は成人男性だが、弓は女性と、少年達だ。彼等に尋ねると、教祖の女性と親衛隊(リアルガーの事だろう)は、ハイコーネに呼ばれて、ここには居ない、自分達は、留守を守れ、と言われただけ、と答えが来た。


さらにサヅレウスの事を聞いたが、最近来たサーマンとかいう男性がいる筈だが、いつも奥の「礼拝所」にいる、同一人物かどうか分からないが、礼拝所だろう、と、とにかく礼拝所行きを促された。


キャンプの人達は、武器を取り上げてしまうと、難民以外の何に見えるのか、というくらい、くたびれた様子の者ばかりだ。重ねて数人に少し話を聞いたが、以外に豊かに食べ物があるからここにいる、というのが主で、組織の主義主張の理解はしていたが、本気で信じている様子には見えない。


「食べ物はともかく、住居はなあ。これじゃ、ハイコーネ市の難民救済所のほうが、まだいいくらいだ。」


とイシュマエルが言った。俺は、


「正規の救済所が、ここて比べてまし、程度なのか?」


と疑問を挟んだ。


「グロリア情報だが、とにかく宿舎がすし詰めで、慣習の違いから、細かいトラブルが頻発していたそうだ。


市としては、もともと定住のためじゃなく、例えば遠隔地の親戚の所に行く途中の人達に、一時的な補助をしているだけだから。正直、一杯になるとは思ってなかったろうし、なっても拡大する気は無かった。


一時、やたらに条件が厳しくなった、とも聞いてる。それじゃ救済にならないって、改善はされてるが。」


このイシュマエルの返答に、女性が何人か、小声で肯定し、頷いていた。兵士の一人が、


「あなた方は、俺たちを立ち退かせるために、ハイコーネ市から来たのじゃ、ないんですか?」


と、恐る恐る尋ねた。


グラナドは、


「俺達は、魔族のジェイデア王女の配下の者だ。さっき話したサヅレウスという男と、リアルガー…親衛隊の、オレンジの鶏みたいな頭の奴に、用がある。


噂には聞いてるだろうが、サヅレウスは、子供を拐って、『楽園城』って所に立て籠ってた連中のリーダーの一人だ。


リアルガーは、それより前に、一時的に、俺達の仲間だった奴だ。合わなくて抜けて、それきりだったから、サヅレウスとの繋がりは知らなかったが、『交流があったらしい』と証言する者がいる。


俺達の目的は、その二人だ。教祖の女性や、他の幹部がどういう積りかにもよるが、引き渡しに応じてくれれば、他をどうこうする積もりはない。」


と言った。これを受けて、口々に数人が喋りだし、騒がしくなった。


「やっぱり、奴か。あいつが来てから、変になった。」


「オレンジの事?それは確かに、オディアネ様に関していうなら…。」


「あんたみたいなのが、様付けして、女神なんて呼ぶから、こうなったのよ。たかだか下っ端聖女じゃないの。」


「ちょっと、今、言ってもしょうがないでしょ。」


「だが、何かやらかしてるのは、これで解ったろう。やっぱりかよ。俺は驚かん。」


「騙されたの?」


「おい、それはないだろ。世話になっといて。あんたも、子供が怪我した時に…。」


俺達を無視して、細かい言い合いが続く。教祖にされている女性オディアネは、トパジェンと同じ聖女術の使い手らしい。それを、リアルガーが傀儡に利用したようだ。


シェードが、俺たちに、


「立ち退きと勘違いされそうだが、逃がさないと、戦闘になるだろ。どうする?」


と言った。


「俺がミルファと残る。」


とグラナドが言った。


「湖での件からすると、そこそこ強い魔導師がいると思ったが、そういうのは出払ってるようだ。後の守りが大事なら、強いのを一人は残し、キャンプの入り口で指揮を取らせると思うが、それをしていない。サヅレウスも、そこそこは強いが、一応軍人だったマツダオスと違い、医者だからな。


サヅレウスはジェイデアと同席したくないだろうから、残った、というのは間違いなさそうだ。だが、奴の守りに、割く人材は無い、と見える。


三人で、余裕だろう。」


そう言いながら、先程より、大きな土の盾を出す。見慣れてないのか、驚きの声が上がる。


俺とシェード、イシュマエルは、さっき不満めいた発言をしていた兵士を案内に、奥に向かった。


比較的綺麗な石壁に、屋根のある建物があり、そちらに向かおうとしたが、


「それはオディアネと親衛隊の宿舎です。」


と言われた。手早く中を見たが、誰もいなかった。派手な絨毯と、クッションが沢山あり、家具らしいものはない。クッションは寝台の代わりのようだ。


机や椅子もなくて、見通しは良かった。一番奥が衣装部屋なのか、刺繍入りのローブや、派手なアクセサリーが沢山あった。他に目を引く物はなく、期待した「装置」のような物はない。各部屋には、人が隠れるスペースはなかった。


石の宿舎の隣には、木の小屋が数件あった。遺跡というほど古くないが、昨日今日建てられた物ではない。


「親衛隊の炊事場や、浴場や何かの建物です。」


と案内人は言った。一応調べたが、ここにも人はいない。


「なんだか、生活感がないなあ。」


とシェードが言った。昼食にはまだ少し早いが、数時間前に誰かがここで朝食を取った気配も、これから昼食の支度を始めそうな雰囲気もない。例えるなら、特定のワールドの紹介をするのに使う、「平均的な住居のモデル」のようだ。


「もし、礼拝所とやらに、誰も何もなかったら、直ぐにハイコーネに向かおうか。」


俺は二人に尋ねた。シェードは、一言、そうだなあ、と言った。だがイシュマエルは、


「こっちはこっちで、押さえておかないと。セレナイトがいるなら、大丈夫だと思うが、リアルガー達がここに戻って、立て籠られたら、困る。礼拝所の設備にもよるが、本当に何もなければ、合流してもいいが。」


と答えた。ジェイデアの所に飛んで行きたがると思っていたが、冷静な答えだ。


次はいよいよ、肝心の礼拝所だ。


モザイクの石床の露出した区域だったが、周囲に石柱を建て、布を渡してある。入り口も布で、当然だが、鍵はない。ここまで来たら、中に人が居れば、気付かれるだろう。静かなのが不気味だが、グラナドの言った通り、サヅレウスを含め、数人しか居なくて、最初から戦闘は避ける積もりかもしれない。


俺は剣を構えながら、中に踏み込んだ。


矢が飛んできたが、入り口の物より、勢いも本数も少ない。剣で叩き落としても余裕だが、三人で盾を作り、防ぐ。


イシュマエルだけ盾を解除して、威嚇の火の玉を灯して見せた。中は薄暗く、彼の火が照らして、始めてはっきり見えた。


テント小屋としては大規模だ。しかし、何かの装置どころか、祭壇らしき物すらない。床に石のモザイクが疎ら、中央に渦巻く絵柄のようだ。その渦の中心に、五人いた。


一人は、色白で目がギョロっとした、中肉中背の男性だ。童顔で、年齢がはっきりしない所がある。回りに四人いるのは、十二、三歳くらいの少年たちだ。武器と言うには、お粗末な弓を持っていた。


「サヅレウス。」


イシュマエルが、中央の男に呼び掛けた。


サヅレウスは、イシュマエルを見て、一瞬だが、ほっとした。さすがに、一度は仲間だと思っていたわけだから、他の者が来るよりはましだ、と考えたのだろう。


だが、敵として現れた事は(何故か)承知していたようだ。武器はあっさり捨てて、


「こっちはこの人数だ。抵抗しない。」


と言った。さっき矢を射かけた事は、忘れたようだ。


彼等はあっさり捕まり、俺達は中を調べたが、驚くほど、何もない。空の薬瓶(薬草の香りがしたから、薬瓶と判断した)が五十余り転がっていただけだ。


グラナド達の所に引き返す間、サヅレウスは、イシュマエルに、何かと話しかけていた。悪気はない、逆らう気はない、と等々。あれだけやって、リアルガーの所に逃げておいて、それで通じると思っているのだろうか。


イシュマエルの話から、サヅレウスは、相棒のマツダオスと違い、よく言えば柔軟性があり、悪く言えば軽薄な質と聞いてはいたが。


イシュマエルも、無視すればいいものを、「それは、ジェイデアに言え。」「あんたに悪気があるかどうかの問題か?」などと、真面目に受け答えしていた。


戻ると、グラナドが早速、シェードに、


「お前、拘束魔法、使えよ。この前、コツを教えたばかりだろ。」


と軽く文句を言った。ミルファが、


「ねえ、でも、ここに連れてくるんだから、信者の人が、縛られた姿を見たら、何かあったかもよ。」


とフォローした。グラナドは、忘れてただけだろ、と軽く言い、風で拘束魔法をかけながら、


「ウィンドカッターの方と違って、試す機会は少ないかも知れないが、忘れないうちに練習しとけよ。」


と付け加えた。


ウィンドカッターは、シェードも得意なはずだ。彼に訪ねると、


「ランダムに、沢山出す方法を習った。」


と答えが来た。


シェードの魔法の先生は、火魔法使いだったらしく、「強化」のイメージは、「一点に集中して、一発の威力を大きく」だった。しかし、ウィンドカッターの場合は、素早さを利用して、複数出したほうが、結果としては強くなる。イメージは「周囲に広く拡散させるように」だ。


「ああいうのは、魔法院で、専門家に訓練受けたからだろうな。レイーラから、凄く優秀だとも聞いた。…悔しいけど、さすがだ。」


そう言って、シェードは、術を使うグラナドを見ていた。横顔に、僅に憧憬の色が見て取れたような気がした。グラナドが彼を呼び、俺も行こうとしたが、イシュマエルが、


「ここに来た時、一度、派手に喧嘩してた。」


と話しかけて来たので、足を止めた。


「喧嘩?何で?原因は?」


「そこまでは知らん。止めに入った時は殴りあいになってた。大怪我するほどじゃなかったし、理由は言わなかった。何時もの事、とは言ってたが。」


確かに出会いからして、相性は良くない。だが、殴りあいになった事は、一度もなかった。


「心配しなくても、今はあの通りだ。いきなり別世界に飛ばされたんだ。色々、鬱々としてたんだろ。」


イシュマエルは、俺の顔色を見て、そう続けた。俺は、ふと、


「君は、ジェイデア様とは、喧嘩したことは、あるのか?」


と尋ねた。彼は、いきなりだな、と、少し驚いた。


「護衛官が、手を上げるもんじゃないだろ。」


「幼友達だったんだろ。」


「ああ、そういう意味か。口喧嘩なら、山ほどあったな。


幼友達と言っても、俺は、ジェイデアの父親の運営する孤児院育ちで、ジェイデアは、公爵の息子…娘だからな。公爵は、本当に分け隔てのない人で、俺の事も実子同然に扱ってくれたが、本当に『対等』って訳にはいかない。


そういう事だから、あいつが悪くても、折れるのは俺だった。身分違いの…身分の差というやつだ。」


彼の紅い瞳、過った物を、俺は見逃せなかった。


「…折れたのは、身分のせいだけかな?」


彼は、意外なほど驚き、俺の顔を凝視した。


「ああ、それで、仕方なくって訳じゃない。ただ単に、いくら分け隔てがない、と言っても、身分差はあるのは事実だ、という意味だ。


たとえ、俺達二人が、どう思っていようと。」


彼は会話を打ち切るように、サヅレウスを、囲んで要る、三人の所に行った。俺も後に続いたが、シェードの、「ああ、もう、埒が開かんって、こういう事かよ。」との声が響き、グラナドが俺達のほうに歩いてきて、


「呼んでも来ないと思ったら。」


と、言ってから、続けた。


「で、どうする。サヅレウスは捕まえ、こっちの損失なし、装置も金属も、起き上がる死体もなし。あやしい薬は、空き瓶だけ。中身については、奴は知らん。匂いからして、抗アレルギー剤の薬草だろう、魔法防御に効果がある、と言われているから、属性の違う魔法を、無理矢理使う時に、使用する事で、効果があるか、訊いてみたが、古い薬草だから、そういう説もあるが、医者ならそのための処方はしない、もっと良いものがあるから、と言ってた。これ以上は、何もないな。


こっちだけなら、最初に想定した、一番都合の良い展開になりそうだな。あっちの首尾はまだわからないが、合流するか?」


そこでちょっと考えた末、俺とミルファで、サヅレウスを港に連れていき、残り三人は、市内に向かう事にした。港には、ジェイデア達の乗ってた船に、サニディンが残っているはずだった。


道中、サヅレウスは、ミルファに、


「グラナドに、とりなしてくれるように頼む。知らない仲じゃないし。」


と言った。どうやら、グロリアとの面会を許可した事が、彼の裁量なようなのだが、俺が、「グロリアとは別人だ。」と言ったら、驚いた物の、納得はすんなりして、言い分は引っ込めた。ただ、その際、


「ああ、よく見たら、平たい。」


と言ってしまったため、ミルファに危うく撃たれそうになっていた。




港では、サニディンが待っていた。彼は女性二人と何か話していたが、俺達の姿を見ると、彼女達に「また、後で。」と笑顔で言っていた。


ガディオスは、女性に対しては生真面目で、妻も王都に出てすぐ付き合い始めた、最初の彼女だ。それが、サニディンになったら、こうだ。融合ではないのに、宿主に影響される事があるのだろうか。俺も人の事は言えないが。


サニディンは、サヅレウスを受取り、船に連れていったが、すぐ戻ってきた。


「ジェイデア様達は、まだ市庁舎だ。サヅレウスをとらえたら…。」


船が、派手に黒い帆を上げた。汽笛も鳴ったが、それは、別の船からだった。合図だ。


「リアルガーも連れ帰れそうだ。ノコノコ出てくるか、わからなかったが、拍子抜けするくらい、あっさり出た。


親衛隊の一番は、アクアロって奴で、教祖の兄だ。他にウォタイスって、前からキャンプを仕切ってた奴がいる。リアルガーは、その下あたり、良くて三番手の位置づけだ。上二人は、奴は邪魔らしい。発言しようとしても、遮られてたらしいから、三番にも届かないかもな。


教団にしたのは、奴の『功績』の筈だがな。


武装して人数引き連れてきちまったから、ハイコーネ市に言い訳しにくくなってる所を追求して、交渉はこっちのペースだ。もともと、通行許可の話だったが、うまい具合に展開したな。


武装はアクアロの希望らしいが、これもリアルガーのせいになりつつある。」


ずいぶんリアルタイムで詳しいが、通信か、と尋ねると、サニディンは笑って、


「さっきの彼女達だよ。ハイコーネ市は、自由な貿易都市らしく、会議は全部市民にオープンにしてるから、見学は自由だ。紛れてもらった。」


女性達は味方、情報のためか。軽い目的と疑ったのは悪かった。


「そっちは、どうだ?サヅレウス以外は。」


「ああ、何もなかったよ。驚くほど。」


キャンプの様子を説明した。一通り話終わった後、サニディンが、


「後は、待ちか?殿下達も、直ぐに戻ってくるかもな。」と言った。ミルファが、


「でも、大丈夫かしら。リアルガーって人、よく知らないけど、思い込みが激しくて、視野が狭い人って感じだけど、頭は回りそう。」


と思案顔で言った。サニディンが、笑いながら、


「大丈夫だろう。もともとどういう生活してたのか、セレナイトの世界だから見当つかないが、全部捨てて、本気でここで生きるのは、凄く難しい事に気付き始めた頃合いだ。頭も冷えたろ。仲間にも売られそうになってるしな。『詰んでる』と思うぜ。」


と言い、「まあ、根拠ないけどな。」と、明るく締めた。




明るい空が、暗くなる一瞬。


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