第3話夜伽の女2

 ラミロ国王との夜伽が終わった後も私は寝台から起き上がることが叶わなかった。

 意識がはっきりしない。

 高熱と激しい関節痛、腰が有り得ない程の鈍痛に見舞われ、体は到底動けなかった。


 窓から僅かに朝日が差し込み、小鳥の鳴き声も聞こえてくる。


「お目覚めになられましたか」


 気遣わしげで穏やかな声に目を開けると、見知らぬ美しい女性が覗き込むように私に声をかけて来た。

 白い肌、黒髪から一房の髪だけが紅く、長いまつ毛に縁取られた茶色の瞳を持つ美しすぎる女性は、よく見るとファブラ王国の侍女服を着ていた。


「……あ、あなた……は……?」


「失礼致しました。私は侍女のフェリシーと申します」


「……あの……?」


「ラミロ国王陛下より、ニラ様のお世話を仰せ使っております」


「え……?」


「お熱がおありになるので、ゆっくりとお休みください。侍医の診察では、伽と長旅の疲れが原因のようです。薬を処方させていただきました。お水もここに」


 フェリシーさんは私の額の布を取り換えてくれた。


「ラミロ国王陛下より、ニラ様の看病をするようにと仰せつかっております。どうぞご安心してください」


「……あ、ありがとう……ございます」


 フェリシーさんはその後も甲斐甲斐しく、私の世話に取り組んでくれた。

 私の首筋や胸元を湯で濡らしたタオルで丹念に拭ってくれた。

 体のベタつきがさっぱりしていく。

 髪を結い、服装も薄い布地のシュミーズを纏わされた。

 肌触りがよく柔らかい。

 きっととても高級なものに違いない。

 恥ずかしさに戸惑ったけれど、自由に動かせない体では、されるがままに任せるしかなかった。

 私の世話を終えたフェリシーさんは、寝台から離れ退室した。

 暫くすると眠気が襲って来て、逆らうことなく私は目を閉じた。



 次に目を覚ました時には、体がすっかり軽くなっていた。

 体の痛みがなく、頭もスッキリしている。

 処方してくれた薬が効いたのだと思う。


「ニラ様、お加減はいかがでしょうか?」


 部屋のソファに座っていたフェリシーさんが声を掛けてきた。


「……ありがとう、ございます。おかげで体が軽くなりました」


「それはよろしゅうございました」


 フェリシーさんは柔らかく微笑んだ。

 その笑みは、同性である私でさえ、見惚れてうほど美しかった。


「お食事を用意させていただきました。こちらにお持ちいたしますので、少しお待ちくださいませ」


 病み上がりということで、ベッドの近くにソファとテーブルが用意してくれる。そこに運ばれて来た食事は口当たりがとても良く、消化しやすい料理だった。


「……美味しい」


 思わずもらすと、フェリシーさんは安堵の表情を浮かべた。

 これは私の知らないことだけれど、昨夜はかなり魘されていたらしい。


 体調が回復した後も、夜伽は続いた。




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