心を穿つ愛情の日本物語

ヒロインは双子の忌み子として間引かれたはずの咲耶と、帝であり神の血と力を持つ紫貴。
本作の素晴らしい点は、感情の起伏の表現と、設定と噛み合った咲耶の境遇だと思います。
この2つが蛇のように絡み合いながらも、混沌とならず、秩序だって進行していくストーリーラインは見事です。

基本的には、咲耶と紫貴を中心に進んでいきますが、咲耶の両親である父・恭一郎と母・香世子の優しさと愛情がなんとも心地良く和ませてくれます。
また、片割れの陽葉は一見傲慢ではあるものの、その裏にあるのは巫としての立場、そしてそれに縛られた懊悩。咲耶は己の力と双子の陽葉の力の間で板挟みになり、悩みながらもそれを受けいれて生きていこうとする力を持っています。決して、守られるだけのか弱い少女ではありません。

忌み子であった咲耶、呪いに犯された紫貴。
2人は苦しみを分かち合い、そして、最後にどのような結末を迎えるのか……?

心を抉るような設定と表現が巧みだからこそ、読み応えのある作品!
是非、ご賞味ください!

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