魑魅魍魎が跋扈する時代。人は夜を恐れ、光を求める。
その光であった筈の神々の血を継ぐ巫覡の者・神森家は、夜を討ち払うために戦いを繰り広げていた。
しかし――
主人公である咲耶。咲耶は当代巫の双子の姉妹であった。双子は忌むべきもの。間引かれる筈だった命。それが、片割れの死によって人生の帰路に立つ。
突然降りかかった、巫としての使命。
それまで、養父母によって大切に育てられ、家事手伝いをしてきた日々。
咲耶の不安は募るばかりだが、手を差し伸べたのは帝でもある紫貴だった。
不安な咲耶の心に寄り添う紫貴。
互いに使命を背負い、寄り添いながらも、強くあろうとする姿。
想い、想われるだけではない二人の姿。
尊いものがあります。
オススメです。
ヒロインは双子の忌み子として間引かれたはずの咲耶と、帝であり神の血と力を持つ紫貴。
本作の素晴らしい点は、感情の起伏の表現と、設定と噛み合った咲耶の境遇だと思います。
この2つが蛇のように絡み合いながらも、混沌とならず、秩序だって進行していくストーリーラインは見事です。
基本的には、咲耶と紫貴を中心に進んでいきますが、咲耶の両親である父・恭一郎と母・香世子の優しさと愛情がなんとも心地良く和ませてくれます。
また、片割れの陽葉は一見傲慢ではあるものの、その裏にあるのは巫としての立場、そしてそれに縛られた懊悩。咲耶は己の力と双子の陽葉の力の間で板挟みになり、悩みながらもそれを受けいれて生きていこうとする力を持っています。決して、守られるだけのか弱い少女ではありません。
忌み子であった咲耶、呪いに犯された紫貴。
2人は苦しみを分かち合い、そして、最後にどのような結末を迎えるのか……?
心を抉るような設定と表現が巧みだからこそ、読み応えのある作品!
是非、ご賞味ください!