4・親友の協力
くそっ、ユリアーネめ。へんなこだわりを発揮して、相手の男を教えてくれないから特定するのに時間がかかってしまった。
ただ、それがグスタフで、しかも相思相愛らしいのだから驚いた。ふたりはお互いの気持ちに気づいていないが、俺の見立てが外れたことはない。神は俺の味方なのだ。
そして次はレイルズを味方につける。結婚式まであとひと月半ほどしかない。急いで行動しないと。
王宮の庭をひとり、急いで歩く。レイルズと温室で秘密の待ち合わせをしている。用件は、愛するヨゼフィーネへの誕生日プレゼントの相談だ。毎年のことだ。
いい加減、こっそり決めなくてもいいだろうと思うのだが、親友だからな。付き合ってやっている。
温室に入る。ここは御典医が使う薬草のためのものだから、滅多にひとがいない。密会に使うのには最適だ。中央には御典医や庭師が作業に使う机と椅子がある。
そこに向かい、見えるところまで来て足を止めた。
ローザリンデが眠っている。両腕を枕にして机に伏し、可愛い顔がこちらを向いている。足音を忍ばせて近寄る。
頭のそばに薬草図鑑があるから、勉強をしていたようだ。
すやすやと愛らしい寝息が聞こえる。
疲れて眠ってしまったのだろうが、あまりに危機管理がなさすぎる。あの事件からまだふた月も経っていないというのに。
それに不埒な男は世の中にたくさんいる。
――俺のような。
静かに手を伸ばし、指でローザリンデの頬に触れる。どこであれ、触れるのは初めてだ。柔らかくて温かい。鼓動が早まる。
絶対に俺のものにする。
グスタフであれ他の男であれ、渡さない。
しまい込んだ想いを爆発させたのは、ローザリンデだ。
屈みこみ、そっと頬に口づける。次のキスは眠り姫ではないローザリンデと。そう願いながら。
体を起こしたところで、背後の気配に気づいた。振り返るとレイルズが呆然と立ち尽くしている。
「ディートリヒ、お前……」
こんな場面を見られるだなんて、俺らしくないミスだ。だがこれはチャンスだ。ミスを利用し、レイルズの協力を取りつけてやる。
俺は視線を外し、
「愚かだろ。こんな間際になってまだ、諦めがつかないんだ」と親友に聞こえるぎりぎりの声量で、悲しげに呟いた。
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