6・初夜の屈辱
ようやくだ!
ローザリンデが俺のものになった。嬉しさのあまり快哉を叫びたい気分だ。挙式のときなぞ気持ちが高ぶりすぎて、誓いのキスをすることができなかった。上目遣いで睨んでいる彼女があまりに可愛すぎて、鼻血が出そうだったのだ。直視せずにこめかみへのキスで乗り切った。
だって式を挙げただけでは安心できない。初夜を終え彼女を『キズモノ』にしない限りは、離婚が簡単にできてしまう。
だからそのときまでは、なにもかもを我慢しなければならなかった。
だが!
ついに
どれほど愛おしく思っているかを伝え、星の数ほどの睦言を囁やき、お互いの境界がわからなくなるほどの甘いキスを繰り返して、俺に惚れさせるのだ!
男女のことに免疫のないローザリンデを怯えさせないよう昂ぶる気持ちを押さえて、ベッドサイドに座る彼女のとなりに腰掛けた。
さあ、聞け。俺の愛を――。
しかしローザリンデから返ってきた言葉は、
「酔っているのね」だった。
そう勘違いされるのも、仕方ないかもしれない。つい少し前までとの落差は激しいのだからな。だが思い込みの激しいローザリンデは、どんどんおかしな方向に進み、ついには俺がレイルズに惚れ薬をのまされたと決めつけた。
あげくに初夜を延期しようだなんてふざけたことを言い始めて。
そんなに俺とヤルのが嫌か。俺はお前以外にはモテるんだぞ。ヒュブナー派閥にだって俺のファンはいる。
怒りと苛立ちで、さすがの俺も余裕がなくなってきた。
彼女の言動を無視して、キスをする。薄目を開けて見ると、軽く唇を重ねただけなのに彼女はまっ赤になってオタオタとしている。
俺の中の欲が勢いよく湧き上がる。
もう丁寧に想いを伝えるのはヤメだ。ローザリンデには通じない。惚れ薬の誤解を利用し、実力行使あるのみだ。
俺の豹変ぶりに焦った彼女は、俺の名前を呼んでくれた。十八年の人生の中で初だ。嬉しくてますます気分が高まる。
彼女をベッドに寝かせて見下ろす。紳士的な態度は捨てても、ローザリンデを怖がらせることはしたくない。
そう考えていた俺に、腹をくくったらしい彼女が言い放った。
「あなたの覚悟に敬意を払うわ。どうぞ。手早くお願いね」
は? 手早く?
この日を一日千秋の思いで待っていたというのに?
いくらローザリンデがアホで男女の機微がわかっていないからといって、ひどくないか?
俺はさっきから可愛いと褒め、好きだと伝えているじゃないか。
俺がどれほどローザリンデを想っているか。はっきり、じっくりわからせてやる。
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