《王命で敵対する公爵家の令嬢と結婚したのだが……。初夜のために惚れ薬を飲まされたと誤解されている。キレてもいいか?》
1・恋の爆発
自分が抱える気持ちに気づいたのは、いつだったか。
カーマン家と、建国以来対立しているヒュブナー家の令嬢、ローザリンデ。輝くような金の髪に、大きな目に浮かぶ忘れな草色の瞳。頬はバラ色で折れそうに細い腰。まるで絵物語に出てくる妖精のような可憐さだ。が、所詮はヒュブナーの娘。いかに見た目がよかろうと、憎むべき存在だ。
だというのに、俺は知らぬうちに彼女の姿を目で追い、声に耳をそばだて、男の影がちらつけば苛つくようになっていた。
ローザリンデは儚げな外見と中身がまったく合っていない。まず、バカだ。勉強のことじゃない。それは才女といっていいレベルだし、淑女としてのマナーは完璧だ。だが抜けているというか、思い込みが激しいというか、危なっかしいというか。どうにもおかしな性格なのだ。
俺たちカーマン派閥と口論するときだって、絶対に事実でないことは言わないし、直しようのないこと――たとえば容姿や生まれについては批判しない。そんな生真面目なのは、彼女だけだ。両家の対立は生易しいものではないのだから、配慮なんてするものじゃないのに。
あれでヒュブナー家の長女だというから、見下げたものだ。
俺はそう思っていたはずなのに、気づけば彼女の存在を感じ取ることに、全神経を使うようになっていた。
この感情はマズイと判断し、忘れ去ることにした。彼女はヒュブナーの令嬢で、婚約者がおり、そして俺への関心はまったくなかった。
何重にも鍵のかかった小箱に感情をしまいこみ、心の奥底に沈め、直視しない。
そうやってカーマン公爵家の跡取りとして、平静を保ってきたというのに。ローザリンデはたった一瞬で、俺が厳重に守ってきたものを爆発させた。
彼女への恋心を。
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