特別な人同士であるための必要十分条件は、常にシンプル。

当作品の大切な要素であるポリアモリー。関係者全員の同意のもとに複数のパートナーと恋愛関係を持つことに対して、あなたはどう思うだろうか? 複雑?混乱?ひょっとすると不道徳?
しかし考えて欲しい、他人ではない特別な人同士であるためには何が必要だろう? 独占や束縛、あるいは曖昧模糊に過ぎる社会的規範や法律などではないことは明らかだ。きっとそこに必要なものは「信じること」と「尊重すること」の二つだけで、それらがお互いに必要十分条件として機能していればそれで成立するのではないだろうか。
そう考えた時に、本作品の作者が提示するポリアモリーという生き方は、三人の恋人の間で多少の解釈の違い・領域のずれはあっても、極めてシンプルであることに気付く。私たちがいわゆる「普通」の恋愛と考えているもの、それはかえってシンプルさを損なっていないだろうか?
大切な人との絆について深く考察させてくれるこの作品。ぜひお読みいただいて、かけがえのないものを失わないための道標にしてほしい。

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