恋人の恋人は成立するのだろうか?


私たちの心と頭に『ポリアモリー』という性別を超えた特別な関係について投げかけてくる、とても興味深いテーマのひとつを取り上げた希少な小説です。

恋人として一緒に過ごす曜日を限定する――付き合い始めの大切な約束を結ぶところから始まります。
しかし、物語が進むにつれ、お互いに働きかける思慮や独占欲……訪れる出会いと別れとが複雑に作用し合い、読者を飽きさせない工夫が素晴らしいです。

異なる心の在り方の中で芽吹いていく恋と愛。様々な想いと行動とが複雑に絡み合い、ほつれ、結び付きを強くしていくように縒り合っていく。この駆け引きがなんとも言えない魅力に映ることでしょう。

特筆したいのはポリアモリー同士の社会的な距離が近いことですね。これは物語の展開を設定する醍醐味の一つと言えそうです。
それらを一望に俯瞰する読者目線からは、キャストどうしの相互作用が引力とも斥力とも取れるため、緩急含めた面白さがこそばゆく感じるかもしれません。

さらには、作者様ご用達のチェコ文化の異国情緒を取り入れた興味深い思索的な融和も事欠いてはいけません。
物語をさらに深化させるための意匠が凝らされ、美しい旋律の調べと味覚の奥行きとを探求した心と舌を撫でていく楽しさもひとしおです。

最後になりますが、一人の男性に及ぼし合う複数の恋のパワーバランスが絶妙なんです。それに洗練された流麗で美しい文章と繊細な心の機微の描写は至高の領域を思わせる。
私から是非ともオススメしたい珠玉の一作です。

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