概要
この家の女は、夏に死ぬのよ。祖母はそう言った。
犀川ようさん主催『さいかわ葉月賞』参加作品です。
余命宣告を受けた女性、菊永佳水(きくなが・よしみ)。
自分はこの夏に死ぬだろうと予感し、それを受け入れている佳水だったが、
死出の準備を終えたあと、体調を崩して入院することになった。
担当の男性看護師、芝谷との交流を通して、佳水の心には小さな変化が起きる。
余命宣告を受けた女性、菊永佳水(きくなが・よしみ)。
自分はこの夏に死ぬだろうと予感し、それを受け入れている佳水だったが、
死出の準備を終えたあと、体調を崩して入院することになった。
担当の男性看護師、芝谷との交流を通して、佳水の心には小さな変化が起きる。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!風鈴送り
南部鉄器の風鈴。
実によい音だ。
キンシャラと鳴る玻璃の風鈴もよいが、南部鉄器の音はどこか冷たく、よそよそしい。
清涼なこの音色に送られて、その一族の女は夏に逝くのだという。
主人公は四十歳手前。
独身で、子はいない。
死病にかかり、身辺の整理はあらかたすでに終えてある。
家系は自分が最後である。
母をはやくに亡くし、祖母に育てられた。
一族の女はみな夏に死ぬ。
そのことを教えてくれた祖母も、もう七回忌だ。
角灯籠が流れる夜の川。
孤独死を心配されている主人公は周囲の人たちの勧めで、緩和ケア病棟に入院することになる。もはや治療など意味がない。静かに終わりに向…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想いは、情景と音に宿るものである――
あなたは、『夏の音』に何を思い浮かべますか?
蝉時雨と熱を孕んだコンクリートロード? それとも、川のせせらぎとお囃子のような子どもたちの笑い声? はたまた、西瓜を齧る軽快な音と縁側から見る緑葉?
沢山ありますが、代表的な『夏の音』といえばやはり風鈴の音色ではないでしょうか。
尾を引く、心洗い流すような澄んだ音。
この物語は、風鈴の音のように儚くも穏やかで、そして美しい。音の中に宿る記憶が万華鏡のように姿を変えながらも光り輝き続け、暗闇を照らしていきます。
命と、どう向き合っていくか。
大切なことを教えてくれる素晴らしい物語でした。
沢山の方に、お読みいただきたいです。