第30話『ルイリオ様の真実』
前回のあらすじ:女神様に怒られました
女神様に託された世界の命運を放棄して洞窟暮らしを満喫していた私達の前に現れたのは…エリカ様の父、ルイリオ様でした。
「あ…る、ルイリオ様!?何故ここに!?」
「探したぞ、ニエリカ。君に…いや、君たちに頼みたい事があってここに来た。…聞いてくれるね?」
「え…それは…ルイリオ様の頼みとあれば勿論…け、けどルイリオ様、世界が書き換わって皆私達のことは覚えていないものだとばかり…」
「ああ…それはな…まあ、なんだ、私も君たち…いや、君と同じなのだよ、ニエリカ」
「私と、同じ…………まさか!?」
「ああ、そうだ。私も転生者だ」
まさかとは思ったが、いやしかし、そうか、そうだったのか。
しかしそう考えれば腑に落ちる、あの時すんなりと受け入れてくれたのは、他でもない自分自身がそうだったから、か…
「…そう、だったんですね」
「ああ、今まで黙っていて悪かったな。…ひとまず、この先は移動しなから話そう、馬車を用意してあるから乗りなさい」
「え、ええ………あ、でも馬車だとママリアが…」
「ふむ、そうか………ではこうしよう、ママリア君、少し良いかな?」
『は、はい…?』
そう言ってルイリオ様はママリアに手をかざし、何かを弄るような素振りを見せる。
すると…
「……!?」
ママリアの身長がどんどんと縮みはじめ…私達と同じくら…いやまだ2mぐらいあるなこれ。
まあそれでも現実的なサイズになったと言えるだろう。
「こ、これは…?」
「ああ、ママリアの魔力保有量の上限を弄らせてもらった。とりあえずこれでしばらくは大丈夫だろう。何、後で色を付けて戻すつもりだから安心してくれ」
「え、あ、はい…?」
ママリアは困惑しているような、がっかりしているような複雑な表情をしていたが、すぐに何かに気づいたような顔をすると、私とモブーナをぎゅっと抱きしめる。
「わっ、ちょっと!?」
「にへへ…そうだよね、この身長ならこういう事が出来るんだもんね~」
「ママリア様…」
「勿論いままでの身長が嫌…なんてことは絶対にないけど、偶にはこういうのも…良いのかも?」
やはりママリアにも思う所はあったのだろうか。
彼女にハグを返しながらそんな事を思う。
「………あの、そろそろ良いかね?」
「えっあっ、すみません、大丈夫です」
「…コホン、それでは、ひとまず家まで向かうぞ」
そうして、私はルイリオ様が用意してくれた馬車に乗り込む。
…馬車の中では何故かママリアの膝の上に乗せられることになったが…まあ、今日ぐらいは良いだろう、モブーナもそういう表情をしてたし。
そして、屋敷に向かう道すがら、ルイリオ様はぽつりぽつりと話し始める。
「さて…3人ともよく聞いてくれ、まず、世界が書き換えられたのは聞いているね?」
「え、ええ…王妃様の能力によるものだと」
「そうだ、君たちが居なくなった…いや、正確には居なくなったと思ったのを見計らい、世界の運命の書き換えを行ったんだ。『正しい運命の世界』を作り上げる為にな」
「ええ、そう聞き及んでおります」
「そしてその世界には君たちは存在せず、全ての出来事はゲーム通りに正しく進んでいくはずだった。だが君たちはここに居る、これは『彼女が書き換えた世界にとってのバグ』だ」
「彼女の世界にとってのバグ?」
「ああ、世界にとって想定外の挙動が発生した…その結果どうなるのか分かるかね?」
「…ま、まさか?」
「そうだ、世界にバグが広がりつつある。それもかなり酷い状態だ。…外を見てみろ」
彼に言われる通りに馬車から外を見る。
すると、そこに広がっていた光景は………酷いものであった。
体のポリゴンが崩壊し、四肢が伸び、あらぬ方向に曲がっている村人。
当たり判定がバグっているのか、押され合い融合した状態になってしまっている兵士。
天地逆の状態で頭を地面につけ、空中で足を動かす子供。
そして荒ぶる猫車によって撒き散らされるじゃがいも…
この街にとってバグは日常風景とは言え、ここまでの光景はゲームでも目にしたことは無かった。
「こ、これは………」
「彼女は無理に世界を書き換えようとした、その上君たちという世界にとってのバグが残っている…その結果がこれだ」
「…それで、私達に、この責任を取れと」
「いや、そこまでは言わん……が、残念ながら彼女に対抗できるのは君たちしか居ないのだ。戦力的な意味でも、今戦える者、という意味でもな」
「………」
「頼む、世界がより酷い状態を迎える前に…君たちで王妃を止めてくれ。…やってくれるか」
「…この状況でノーとは言えませんよ」
実際、世界がどうなっても良いかと言われれば…当然ノーに決まっている。
それに、こんな光景を見せられてしまっては…
それはモブーナとママリアも同じであったようで、2人とも神妙な面持ちになっていた。
「…けど、どうやって王城に向かうんですか?前に不法侵入した時と比べても警備は遥かに厳重になっているはずですが…」
「うちの地下を使う」
「地下…!?」
キュービック邸地下
その単語に一瞬頭痛がする。
「それ…は…」
「…まあ、そうだな、着いたら色々と話をしようか、君には話さなければならないことがまだ山程あるからね…」
「…分かりました」
キュービック邸の地下、そこに何があるのか。
私達は覚悟を決め、地下へと足を踏み入れる事になる…。
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