第16話『全く知らないヒロインと出会いました』
前回のあらすじ:ヒロインがデッケェですわ
さて、その後は入学式も滞り無く終わり、クラス分け等が発表されるのだが…
「…あの、そろそろ下ろして頂いても?」
『いーえ、駄目ですっ!ここが一番安全なんですから!』
私はと言えば、ママリアにしっかりと握りしめられて、まるで彼女が大切にしているお人形のような扱いを受けていた。
(まあ…確かに安全なのは一理あるかもしれませんが……いやこれ高ぁ…)
彼女に守ってもらうというのは確かに物理的にも精神的にも安全ではあるのだが…
周りの風景を見る限り、こうして持ち上げられている場所は恐らく普通に建物の2~3階分ぐらいの場所になるのだろう。
しかもそんな場所に足場もなく吊り下げられているような状態な訳だ、下手なジェットコースターよりもスリルがある。
「あ、あの…確かに安全なのは分かりましたが…普通にクラス分けとか見えないですし…シンプルに怖くて…」
『…え?あ!!!!ご、ごごご、ごめんなさい!!!!!わ、私ったらまた配慮が足りなくて…うう…』
しかもママリアの場合はこれが全部善意でやっているというのがまた迷惑というかなんというか。
…というか、本編ゲームのヒロインが悪役令嬢(のコピー)にベッタリって、良いのか、これ。
「…はぁ、まあ、悪意があってやった訳ではありませんものね。次からは気をつけなさい?」
『うう…寛大なお心遣い、感謝致します…』
「そうですよ、全く…ニエリカ様は甘すぎます」
も、モブーナまで、まさか小言を言いに来たのだろうか?
「いえ、単にクラス分けの方見てきたのでお伝えしようかと思い。ところで貴方、ママリアとか言いましたね?」
『…!?は、はいぃ…』
「ポッと出のヒロインの癖にニエリカ様を御守りしようだなんて100年早い!!!!それに、お嬢様にとって一番安全な場所すら分かっちゃいないじゃないですか!!!!」
うん?何か雲行きが怪しいぞ?
『ニエリカ様にとって一番安全な場所…』
「ええ、お嬢様にとって一番安全な場所、それは…」
『それは…?』
「私のお側です!!!!!!」
うん、そう言うと思ったよ。
しかもモブーナの場合はそれがまあまあ事実なのがたちが悪いというか、なんというか。
『は、はわ…ぁ…わ、私…私ったらなんて勘違いを………』
「大丈夫です、勘違いというのはいくらでもありますから、大事なのはそこから自分を顧みられるかです」
『そ、そそ、それは…も、勿論です!』
「よろしい、これからも一緒にニエリカ様の良き隣人でありましょうね、ママリア様」
『は、はい…!』
君たち、仲良くなるのは良いがその君たちの隣人本人を置いてけぼりにするのは良くないと思うなぁ!?
…まあ、とは言え変な軋轢が生まれなかっただけ良しとするか…
何かこう…『番長』とか言う単語が他の生徒の方から聞こえてきた気もするが…聞かなかったことにしよう、うん
ちなみにこの学校のクラス分けなのだが、1年時は全員が学科問わず平等に振り分けられ、2年からは学科ごとに振り分けられるという方式を取っている。
学科についても魔法を学ぶものから騎士としてのアレコレを学ぶもの、変わった所で言えば従者になるためのノウハウを学ぶ学科なんてのもあるそうだ。
なのでモブーナが一緒に居ることには何の不思議も無いのだ。
「まあ、従者学科のカリキュラム3年分はもう全て頭に叩き込んであるんですけどね」
「は?」
「そりゃあ私がニエリカ様と一緒に入学したのはニエリカ様のサポートをするためですから!!!!!従者学科は勿論、この学校の全学年全学科のカリキュラムを頭に叩き込んでありますよ!!!!!!分からないことがあったら何でも聞いて下さいね!!!!!」
「え、あ、は、はあ…」
…うん、やっぱりモブーナは規格外なことをこうして偶にしっかりと意識させられる。
本当に私の従者には勿体無いというか…彼女ならそれこそ文字通り何にでもなれそうではあるが…
「…コホン、前も言いましたが、私の優秀さはニエリカ様の持ち物欄を参照してバグっているからです、なので優秀なのはニエリカ様のお側にいるからこそということをお忘れなく」
「え、ええ…それは分かっているのだけれど…」
まあ、実際そうなのでもどかしいというかなんというか。
これも俗に言う愛とか推しとか、そういうやつなのだろうか…?
「…と、そんな事よりお嬢様、クラス分けですよ」
「そ、そういえばそうだったわね…」
で、クラス分けなのだが、私と同じクラスになったのはママリア、モブーナ、そしてマーロイの3人だった。
(他にも原作で攻略対象だった人の名前も見かけますが…まあ、一旦は置いておくことにしましょうか)
エリカとカーヴィルは相変わらずイチャイチャしていたり、ママリアが喜びのあまり飛び跳ねようとしたのを必死で制止したりと色々ありながらも、私の波乱な学園生活がこれからスタートす…
「おい」
「うわぁ!?だ、誰かしら!?」
なんてことを考えていると、急に声をかけられる。
赤髪のショートヘアーで褐色の女性の方で………
…うん?原作ゲームにこんなキャラ、居たかしら…?
「お前がニエリカ・キュービックか?」
「え、ええ…そうですけれども…貴方は…?」
「…はぁ、アタシの事なんか知らねえってか、チッ、これだからお貴族様は…」
…うん、そう言われても知らないものは知らなくて…いや申し訳ないとは思うんだけどもね?
…いや、思い返してみても本当に知らない、ゲーム内のメインキャラでは当然無いし、モブとかにもこんなキャラは居なかった…というかモブだとしたらあまりにも主人公っぽいデザイン過ぎる。
だとすると設定資料にしか居なかったキャラかとも思ったが…
(…うん、本当に全くもって記憶にないわ)
「…はぁ、まあいいさ、これからの学園生活でテメエはアタシの事を嫌でも意識することになるだろうさ!」
「は、はあ……」
そう言うと彼女は去ってい…いや結局名前何だったんだ?
まあ、もし同じクラスだとしたら自己紹介とかあるだろうし、そこで分かるだろうが…
「ごめんなさいね、彼女、少し血気盛んなのよ」
「は、はぁ…」
彼女のフォローを入れるように、丸眼鏡で茶髪の如何にも魔法使いという感じの女性に声をかけられ…いやお前も誰だよ。
メインキャラっぽい感じの人に2回も連続で声をかけられたけど2人とも全く知らない人だよ。
…あれ、もしかしてこのゲーム、ディアストじゃ無かったのか…?
「まあ、悪い人では無いから安心して。それじゃ、また教室で会いましょう?ニエリカ・キュービックさん?」
「はぁ…」
そう言うと彼女も去っていき…いやだから名前…
「…本当に何だったんですの」
…まあ、当然と言えば当然かも知れないが、彼女たちとは教室ですぐに再会することになるのだった。
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