第4話『襲来!第一王子!』
前回のあらすじ:今後の方針を決めました。
「エリカ・キュービック、エリカ・キュービックは居るか!」
(おっと…また説明が面倒そうな人が…)
第一王子『マーロイ・シュタットネス』
ゲームにおけるエリカの婚約者で、本編では彼の婚約破棄をトリガーとしてエリカ様がラスボスへの道を歩み始めるキャラだが…
(確かこの時系列では既に婚約者としてエリカとよく行動を共にしていたな…)
「おお!ここに居たか!探したぞ!」
「………!?」
お、おお…これは想定外。
というかこいつノックしねえな!?後なんで本人の部屋より先に客室開けた!?
…いや、ツッコミどころは多すぎるが…それよりも、エリカ様本人よりも先に私が出会ってしまったというのはマズい。
このままだとエリカ様からの好感度が…
「あ、あの…陛下…その、私は…」
「お前の偽物が現れたと聞いてな!居ても立っても居られずにこうして会いに来たという訳だ!だが安心しろ!俺の婚約者はお前だけなのだからな!」
それは本人に言ってあげて下さい陛下。
「いや、あの…」
「いや、大丈夫だ、何も言うな。お前の不安は分かっているつもりだ。だからこそこうして俺が直々に来ている訳だからな!」
いや何も分かってねえだろお前!
というか後ろの従者もすげえ目で見てるじゃん!誰か止めろよこいつ!
というかゲームでのこいつこんな暴走特急みたいなバカだったか…?
(…いや……バカだった………かも………)
いや、バカというのは語弊があるが、まあ、その、何と言えばいいか。
全体的にパッションで生きているのだ、こいつは。
(というかパッションで生きてなければノリで婚約破棄とかしないよな……)
「ん?どうした?何か考え事か?ああ!もしかして偽物のことを心配しているのか?何、安心しろ、悪いようにはしないつもりだ。少なくとも、ルイリオ殿が彼女のことを許されたのであれば、俺からは罰する資格は無いからな」
何でそういう所だけは聡明なんだよお前は。
………ていうかいつの間にか本物のエリカ様もこっちのこと凄い目で見てないか!?
いや、違うんです、違うんですエリカ様、今回はマジで巻き込まれただけなんです。
「マーロイ様………?」
「おお!噂をすればなんとやらだな!お前が件の新しいエリカのコピー (2)」
「ニエリカです」
「そう、ニエリカだったな!」
「いえ、あの、マーロイ様…わたくしは…」
「分かる、分かるぞ!お前が2人になってもこの俺は1人しか居ない…その事を気にしているんだろう!確かにそうだ!流石に俺も2人になることは出来ないからな…」
いや何も分かってねえよ!エリカ様も感情が迷子になっちゃってる表情してるよ!
「あの、マーロイ様…」
「ああ、確かに第2夫人…というのも考えた、だがそれをしたせいで内乱が起きた王家を俺はいくつも見てきている。それに俺は愛を分散させるなどそんな不誠実な事はしたくはない…」
「あの…」
「そこでだ!お前には俺の大親友であり、後の騎士団長とも噂されているカーヴィルを婚約者として宛てがおうじゃないか!どうだ?」
「は?」
ああもう、凄いことを言い出すなこの人は…
今バカみたいな発言をした王子の隣で困惑あるいは呆れた顔をしているのが、彼の親友であり、現騎士団長の息子、そして…最終的にはラスボス化エリカ様の側近でもある『カーヴィル・アドヴァンテス』だ。
彼はゲームでは婚約破棄されたエリカ様に寄り添い、叶わぬ恋と知りながら彼女のことを支える事になるのだが…
(いやいやいや、これが通るとなると時系列がめちゃくちゃに…)
「悪くない話だと思うが…駄目か?」
いやいや、悪くない話どころか馬鹿の二乗みたいな発言だということはご理解して頂きたく…
というかエリカ様も流石にそんな提案は飲め…
あ、まんざらでもない顔してる。
アレか、もしかしてエリカ様、本当はマーロイ様よりもカーヴィル様の方が好きだったりするのか。
「…その、ニエリカ・キュービックと申しますわ。カーヴィル様…不束者ですが、よろしくお願い致しますわ」
「…ああ」
「フッ…これにて一件落着だな」
ああ、口を挟む間もなく何か丸く収まってしまった…
そう、そうなのだ、このマーロイ・シュタットネスという男、馬鹿の暴走特急みたいな男ではあるのだが、最終的には何故か丸く収めてしまうのだ。
しかしあれか、少なくともマーロイ様とカーヴィル様の前ではニエリカではなくエリカを演じなければならないって事か、マジか。
というかこれは世界にどういう影響を与えるんだ、カーヴィル様がエリカ様の側についたせいでラスボスと側近が手を組むフラグが先に立って、けどそもそもエリカ様がラスボスになったのは婚約破棄のせいで…
いや、しかしこれなら仮に婚約破棄されたとしてもダメージを受けるのは私な訳で…別に私は婚約破棄されたところで別になんともなくて…じゃあ良いのか?
ああもう、頭がこんがらがってきた。
「これで少しは安心しただろう?エリカ。聡明な王子の婚約者になれたことを誇りに思うと良い!」
「…ええ、陛下、素晴らしい采配、見事です、関心致しました」
エリカ様からの「お前余計なこと言うなよ、黙ってろよ」という圧が強い視線を向けられながら、私は王子の勘違いからエリカとして返事をする他無かった。
…しかしながら、こうして思えば…偶然な上過程が間違っているとは言え、結論はそこまで間違っていない采配をするのは、やはり王になる存在として「何か」を持っているのは間違いないのかもしれない。
…あるいは、自分が道化、馬鹿を演じる事でヘイトを自分に向けさせるような態度を取ったということか?
そう考えると、実はこの王子がかなりの切れ者に思えてきたが…
「…ところでエリカ、お前…少し雰囲気が変わったか?何か別人のような…」
「…いえ、気の所為ですわ、陛下」
訂正、やっぱりこいつはただのアホだ。
先が思いやられ…頭が痛くなってくる私なのであった。
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