『行き遅れのかかし令嬢ですが、このたび凛々しい国王陛下に赤ちゃん聖獣のお世話係に大抜擢されました』感想
タイトル:行き遅れのかかし令嬢ですが、このたび凛々しい国王陛下に赤ちゃん聖獣のお世話係に大抜擢されました
作者:綾束 乙@6/17期待外れ聖女発売!
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330667491966742
キャッチコピー:行き遅れのかかし令嬢、赤ちゃん聖獣のお世話で青年国王に認められる!?
あらすじ:
「かかし令嬢」と蔑まれている令嬢が、聖獣の赤ちゃんのお世話をするうちに、凛々しい青年国王とお近づきになって……!?
数十年に一度、王族が聖獣とともに、聖域で邪神を再封印する義務を負うローゲンブルグ王国。
若き国王ジェスロッドは、死闘の末、一角獣のユウェルリースと邪神を封じることに成功した。
だが、戦いののち、力を使い果たしたユウェルリースはなんと赤ん坊の姿となって……!?
聖獣が棲まう聖獣の館に入れるのは、ローゲンブルグ王家の血を引く者と、清らかな乙女のみ。
貧乏男爵家の出身で、「行き遅れのかかし令嬢」と蔑まれるソティアも、貴族達の令嬢達とともに、聖獣ユウェルリースのお世話係になるが、実家で幼い弟妹のお世話を長年していたソティアは、赤ん坊のお世話もお手の物。
赤ん坊になったユウェルリースの様子を見に来たジェスロッドにも認められ、そして……。
健気で心優しい行き遅れのかかし令嬢と凛々しい青年国王の恋物語、開幕です!
※完結まで毎日更新の予定です~!
読了時の文字数:150000文字完結済
送った星:☆☆☆
送ったレビュー:『行き遅れのかかし令嬢は、聖獣の子育てをしつつ国王との愛も育てる』
背の高さにコンプレックスを抱える貧乏貴族出身のソティアが、幼い子供達の面倒を見てきた経験を活かし、その子育てスキルで活躍していくストーリーは個性があって面白かったです。
悩みと長所がハッキリしているソティアを始めとし、各キャラクター達の心情も明確に伝わってきて、若き国王ジェスロッドとソティアの不器用な恋愛模様でキュンキュンします。
文章的にも非常に読みやすく分かりやすく、あらゆる要素で隙がない上に高クオリティです。
じれったい二人が子育てを共通点に交流し、少しずつ距離を詰めて愛や絆を深めていく。そういった甘々ラブストーリーが大好きな人にオススメです。
感想
所謂『令嬢モノ』は完全に専門外ですが、そんな時も心の中に乙女を宿すことで楽しんでいきます。ラスボス第二関門、感想レビューいきますわよ。
代々『邪神』の再封印を行う王国に生まれた若き国王ジェスロッド。聖獣ユウェルリースと共に邪神の封じ込めに成功するが、力を使い果たしたユウェルリースは赤ん坊の姿になってしまう。(※『聖獣』とありますが四つ足の獣ではなく、見た目はほぼ人間に近いです。そのため幼児の姿も、人間の赤ちゃんと大体同じです)
そんな聖獣の世話をするため、国内から清らかな貴族娘達が集められる。そんな中で貧乏男爵家出身の『ソティア』も参加するが、彼女は周りの令嬢達よりも背が高く年齢も二十代で、「行き遅れのかかし令嬢」と蔑まれていた。
しかし幼い弟妹の世話をしてきた経験から、ソティアは赤ん坊となった聖獣の世話も上手くこなしていく。そんな姿がジェスロッドの目に留まり二人は親しくなっていくが、宮殿には嫉妬や策謀、そして封印したはずの邪神の残滓が蠢いており――。
作者の綾束乙さんは前回の感想企画にも応募してくれた方ですが、既にカクヨム内の複数作品が書籍化したりコミカライズしていたりと、現在プロとしてバリッバリにご活躍されている作家さんです。
そんなプロ作家さんの作品を、僕みたいなカス虫がレビューするのは烏滸がましいですが……。『初心者もプロも参加してくれる感想企画』ってなると、ちょっとイイ感じに聞こえますね。お料理初心者から板前にまで愛用される、万能包丁みたいな企画を目指していきたいです。
話を作品に戻すと、今作の『行き遅れのかかし令嬢』は……まぁもうプロの作品だし、特に何も言うことはないよってのが本音です。
しかしそれで終わるわけにもいかないので、詳しくレビューしていきます。
まず何と言っても文章が巧い。Web小説として非常に読みやすく、スラスラスラスラ読めてしまいます。一文の長さ、会話の量、行の開け方など、Web小説を書く上でお手本にしても問題ないレベルです。
シンプルな文体でありつつ各場面や状況がハッキリとイメージでき、更に三人称視点であるにもかかわらず、各キャラクター達の感情が明確に伝わってきます。甘いドキドキ感や相手を心配する優しさ、それだけでなく不安や悩みや悪意や嫉妬なども、違和感なく脳内に入ってきて理解できます。このヤバさがどれだけ皆さんに伝わるか。
正直言って、上手い文章を「ほぉら、私の文章力は凄いだろう?」みたいな感じで見せつけるのは、実はそんなに大変なことではないと思います。難しい単語や難解な言い回しを使えばソレっぽく見えるんですから。
しかし『行き遅れのかかし令嬢』は、そういう押しつけがましい嫌味や凄さアピールしてくる部分がないまま、主役二人の距離感・甘酸っぱさ、嫉妬する他の令嬢達の醜い感情、そして全体を通しての描写力などを、純粋に100%表現しています。
どんな分野においても、『凄さを感じさせない』っていうのが一番凄いと思います。これは過去作に対しても同じ評価をしましたが、本当に文章的な欠点とか改善点とか、どこにあるのか逆に教えてほしいくらいです。
そうした凄まじい文章力で描かれるャラクター達も、非常に魅力的でした。互いに二十代でありながら、恋愛に不器用かつ初々しいソティアとジェスロッドの交流が微笑ましくじれったく、「いいからもう付き合っちゃえよ!!」ってテーブルを叩くザインみたいになりながら読みました。
子育て経験を活かして他のイジワル令嬢達を出し抜き、イケメン王子に愛されてひたすらイチャイチャして……って軽いノリではなく、ソティアのトラウマだったり内面も深く掘り下げられ、二人の距離感や少しずつ深まる絆というものが、凄く大事に繊細に描かれていった印象でした。
そして恋愛パートだけでなく、封印したはずの邪神をめぐる駆け引きや事件など、ひとつのストーリーとしての『軸』だったり『起伏』もシッカリしていたのが良かったです。
まとめると、こういったジャンルは専門外な僕が見ても面白いし、完成度が高っけぇな……と感じました。
なので、このジャンルに初めて触れるような、読んでみたいけど何の作品を読めば良いか分からない、といった人達にオススメな作品や作者さんだと思います。
令嬢モノに詳しい人が見れば、もしかすると欠点や弱点は色々あるのかもしれませんけど。それでも他のユーザー達からの評価を見る限り、ジャンルに慣れ親しんだ人が読んでも満足できる内容になっているのではないでしょうか。
流石はプロって感じ。益々のご活躍、お祈りしています!
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