『天翔翼臣伝 白の貴公子は比翼の友と天を翔ける』感想
タイトル:天翔翼臣伝 白の貴公子は比翼の友と天を翔ける
作者:五色ひいらぎ
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093073351900944
キャッチコピー:その美貌、隠すこと能わず。俊英たる青年武将の下に、惹かれし男たちが集う
あらすじ:
かつて、宮中に傾国の美男がいた。
銀髪碧眼の異相、人間離れした美貌を持つ男は、一千余人の寵姫を抑えて帝の愛を独占した。だがやがて彼は、一児を遺して世を去った。
そして年月は流れた。
辺境の片田舎、鴻郡。若き太守「
彼の下に届いた「宰相を討て」の密命。天翔は、補佐役であり友でもある軍師「
父生き写しの美貌を持つ天翔の下には、やがて多くの者たちが集い来る。
旅の道士「
三国志風+五行+神仙幻獣+美形主人公の中華ファンタジー!
※基本ブロマンスのはずですが、男色系の要素が一部あるのでセルフレイティングを入れています。
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【主な登場人物】
■
主人公。辺境の片田舎「
銀髪碧眼の異相を持つ絶世の美男子。ただ、本人は父親譲りの容姿を恥じており、普段は黒頭巾で顔を隠している。
皇帝から宰相討伐の密命を受け、周碧海と共に都へ向けて兵を進めることとなる。
■
鴻郡の
黒髪に茶の瞳、謹厳実直が人の姿を取ったような青年。美形だが、天翔と並ぶとあくまで「人間の器量」どまりではある。
元は都の人間であり、知識・教養が非常に豊か。
歳は天翔よりも一つ下だが、知識の豊富さにより、天翔は彼に「師友」としての敬意を抱いている。
■
旅の道士。十六、七歳くらいに見える愛らしい少年である。
普段は粗末な道服を着ているが、顔形は不思議な気品に満ちている。
多くの強力な道術を使いこなす、味方としては非常に心強い存在。料理が上手い。
■
都で将軍職を歴任した名士。今は都の政争を避け、自らの領地に戻って力を蓄えている。
天翔と共に宰相討伐の密命を受け、同時期に都へ向けて進軍する。
天翔の面倒を幼い頃から見ており、辺境の鴻郡へ書物や師を手配したり、天翔の成長ぶりを気遣う手紙を送ったりしていた。
天翔は彼を「
■
天翔の父。前皇帝に楽士として仕え、人間離れした美貌で帝の寵愛を一身に受けた。
頻繁に皇帝へ銭を求めたため、世間の評判は非常に悪い人物であった。
天翔は父のことを恥じており、父に生き写しの容姿は彼のコンプレックスになっている。
読了時の文字数:87000字完結済
送った星:☆☆☆
送ったレビュー:『美しき貴公子が人間の醜さに立ち向かう、良作ブロマンス中華ファンタジー』
架空の古代中国世界を舞台に、五行の力や神獣・妖魔といった存在も登場する、王道?な中華ファンタジーです。
派手さや奇抜さはないものの、登場人物、展開、文章、心情描写、テーマ性などあらゆる要素で非常にハイクオリティであり、正直言って文句の付けようがないくらい完成度が高かったです。
中華ファンタジーやブロマンスといったジャンルにあまり馴染みがない人には面白さが伝わりにくいかもしれませんが、逆を言えばそういうジャンルが好きな人には自信を持ってオススメできる物語です。
感想を書くうえでは困るタイプの作品ですね。面白いので「面白い」以外に言う言葉が見つからないんですから。
感想
お次は中華を舞台にしたブロマンスファンタジーストーリーです。
専門外のジャンルなので詳しくはないですが、『ブロマンス』小説というのは要するに、男性同士の関係性に主眼を置き、BL(ボーイズ・ラブ)ほど直接的ではないけれど、友情だったり深い感情で結ばれた男性達の物語……って感じです。
違っていたら申し訳ない。補足や正しい解説があれば、コメント欄でお願いします専門家の方。
僕は男女のラブコメも百合ジャンルも好きですが、別に「男同士の作品なんてムリ!」ってタイプでもないです。
姉の影響で学生時代にテニプリとか戦国BASARAとかBLEACHの同人誌とか、銀魂黒バス黒執事とか読んでいましたし。
この作品ラインナップを見て、どういうことか分かる人は分かると思います。分からない人は分からないままで良いです。
そんな僕の視点から読んだ『天翔翼臣伝』は、古代中華を舞台とした良質なファンタジーです。
かつて、男性でありながらその美しさで帝の寵愛を一身に受けた呉玄雲。そんな父の美しさを引き継いだ天翔は、地方の太守として暮らしていた。だがそんな彼のもとにある日、幼い帝を蔑ろにし暴政を振るう悪しき宰相を討伐すべしと檄文が届く。
早速軍勢を率いて都に向かう天翔と軍師の碧海。しかし都で待ち受けていたのは予想だにしない事態と、人間が持つ二面性や欲望だった――。
結論から言うと、レビューに困るタイプの作品です。だって「面白い」以外に特に言うことがないんですもん。
……いや「コイツ6日目にして感想書くの面倒臭くなったから、いよいよ手抜きし始めたな」とか、そういうことじゃないです。信じてください!!
主人公の天翔と、その周囲の登場人物達。それぞれの役割や個性がハッキリしていて、キャラ数や活躍シーンが多すぎも少なすぎもせず、絶妙な塩梅で成り立っています。
10万文字に届かないくらいのボリュームですが、その中での伏線や起承転結、訪れるピンチや切り抜け方など、実に堅実な作りです。
古代中華なので五行の要素を出しつつ、それらも一貫しれ作中で重要な役割を果たしていますし。
文章にいたっては、たぶんプロの作家や編集者が読んでも「いや、ココはもっとこうした方がいいよ」とか「こうすれば更に上手い文章になるよ」ってことは、たぶん言わないと思います。
中華モノなので知識が全くない人には難しい単語とかも多少出てきますが、基本的にはメチャメチャ読みやすいし巧みです。
中華ファンタジーとしてのディティール、登場人物達の想い、父と子の繋がり、そういう部分の描き方が分かりやすく、そして深く心に入ってくる文章の書き方になっています。
そのため、作品としての欠点や改善点はほぼほぼ無いです。
しかし感想や読者が増えない理由を個人的に考察するとなれば、『ジャンルの選択』と『読者の呼び込み』という部分になるでしょうか。
ブロマンスジャンルや中華ファンタジーのジャンル自体が――不人気というワケではありませんが――やはり異世界ファンタジーとか現代ラブコメ、悪役令嬢モノなどに比べれば、需要の絶対数は多くないのかもしれません。
『薬屋のひとりごと』があるじぇねぇか、ですって?論破やめてください。
中華ファンタジーということであれば、例えば『宮中で父親譲りの美しさを蔑まれ、自分の美しさを恨んだりあるいは逆に活用しつつ、成り上がっていく』だとか『群雄割拠する中華で王や武将達がそれぞれ五行の力を使って乱世統一を目指していく』とか、そういう派手さや人目を引くような要素がないと、新規読者は興味が湧かないのかもしれません。それが『読者の呼び込み』という部分です。
今作は言ってしまえば『国内全土を巻き込んだ大規模な内乱ではなく、主要人物周りで起きたクーデターと、それを防ぐ話』といった比較的小ぢんまりした物語です。国にとっては一大事なんですけど。
しかし例に出したような形にすると、テーマ性もストーリーも全然違ってきてしまいます。作者さんが表現したいことでもないでしょうし。
『天翔翼臣伝』はこのテーマ、この登場人物達、このボリュームで表現すべき内容は100%描ききっています。それはそれで凄いことです。
ここから読者や評価を伸ばすために改良を加えようとすると、全く違う話になってしまうでしょう。だったら読者ウケしそうな要素を組み込んだ新作を、イチから書いた方が早くね?となっちゃいます。
文章、キャラ、ストーリー展開、テーマ性とあらゆる部分で隙がなく、本当に欠点らしい欠点のない優等生的な作品です。
しかし粗が多かったり雑な部分があったとしても、夢中になるほど魅力的で多くの人を惹きつけている作品というのも、実際存在します。
そういった部分で、読者を呼び込む要素やニーズを把握・研究し狙っていければ――小説を書く基礎力はとてつもなく高いので、自分が楽しみつつ多くの読者も楽しませる作品を生み出せると思います。
どうすれば読者にウケるか、どんなものを書けば注目されるかは……そんなん分かってたら誰も苦労しないですよね。僕だって知りたい。
試行錯誤を繰り返していくしかないです。お互い頑張っていきましょう!
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