『チートなんざクソくらえ!!』感想

タイトル:チートなんざクソくらえ!!


作者:文月 澪


作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16816927862827263334


キャッチコピー:最弱主人公爆誕!!作者も主人公も行き当たりばったりな冒険譚!


あらすじ:

天使によって勇者に選ばれたルイ。

しかし彼は天使に暴言を吐き異界へと捨てられてしまう。

魔物が闊歩する異世界を仲間達と共に生き抜く最弱主人公の冒険譚!



読んでくださりありがとうございます!


短編を連載化しました!

短編として投稿していた1話を分け、加筆修正を加えています。

チートなし、ハーレムなしの異世界転移。

楽しんでいただければ幸いです!


感想・評価いただけると励みになります!!

よろしくお願いします!


小説家になろう、アルファポリスにも投稿しています。


読了時の文字数:75000字連載中


送った星:☆☆


送ったレビュー:『チート、過剰労働、そして価値観。全てがクソくらえ』

テンプレもしくは反テンプレ的な(どっち?)異世界転生ストーリーに見えて、主人公を取り巻く環境や価値観はなかなかに個性的だと思います。

レベルやステータスといった異世界モノではお馴染みの設定がありつつ、魔術や宗教についての設定など、世界観についてはシッカリと作り込まれています。

チート能力なんてものは持たず、それでいて現代日本人としての価値観や自分自身の『芯』を持った主人公が今後どんな活躍をしていくのか、期待できる内容です。



感想

7作目にしてようやく異世界転生モノを読んだ気がします。異世界モノはもう流行らないとかブームが終わったみたいな話を聞くと、時代が変わって自分も年を取ったなと感じます。


そんな私と同じアラサーな、現代日本に生きるごく普通のサラリーマン『禅堂累』。ある日唐突に天使と出会い、『ルイ・ゼンドー』として異世界へと強制的に転生(厳密には転移?)させられてしまう。

右も左も分からずチート能力も持たない状態でピンチに陥るが、現地人に助けられ彼らの仲間となり、自分に優しくしてくれた仲間達のためにもルイは異世界で逞しく生きていく――。


女神や天使といった存在に出会い、異世界に召喚され、ステータスオープンして確認し、冒険者と出会って街に行き自分もギルドへ……と、序盤の展開は本当にお手本のような異世界テンプレです。

しかしあらすじにもある通り、分かりやすいチート能力があるわけでも、萌えキャラ(死語)なヒロイン達が登場してイチャイチャハーレムを築く……という話でもないです。むしろショタからジジイまで男キャラの方が多いじゃねぇかこの作品!


冒頭はテンプレ的ですが、その後の流れや魔法・魔術の設定、この世界における宗教やそれに対する主人公ルイの考え方、そしてルイの価値観と対立する信者などは、なかなかにオリジナリティがあって面白かったです。

感想依頼時に「男主人公の口調、考え方が気になる」とコメントでありましたが、ルイ視点での口調や考え方、そして文章の書き方は特に問題ないと思います。なにか違和感を抱くような部分はありませんでした。


ただ「文章を軽くしたつもり」とありましたが、異世界テンプレ、もしくは異世界テンプレと見せかけて深い内容に引き込んでいく……にしては、序盤から文章が重めだと思います。

作者さん的にはかなり軽くしているのでしょう。苦心の跡がなんとなく垣間見えます。

ただ『異世界モノ』ということであれば、もっと軽くもっとライトにもっとシンプルにすべきかなと思います。設定や世界観の説明、主人公の思考など、「えぇええコレ大丈夫?伝わんなくない……?」と不安になるほど削って、会話を増やしてテンポは早めた方が良いです。もしWebで人気の異世界系を目指すのであれば、ですけど。


いやテンプレ異世界モノに見せかけて深いストーリーなんですよ、という方向であれば……序盤のテンプレ展開や、アラサーであるはずのルイの軽い言動や思考などは逆に重荷になっていると思います。

軽い作風にするのかシッカリとした世界を表現するのか、どちらかに振り切らないと、結局どっちつかずの印象になってしまうリスクがあります。

そうなると結果的に、テンプレ好きもテンプレ嫌いの読者も両方来なくなってしまうという、最悪の状態に陥ります。


あと「宗教について」というコメントもありましたが、作中における宗教や信仰に対して、日本人的な価値観をそのまま持った主人公が疑問や苦言を呈したりする、というのは面白いと思います。

その流れでヒロイン?と対立したり和解したりと、その展開は光る部分がありました。ここは間違いなく作品の強みや個性だと思います。


ただそういう展開が序盤から発揮されているわけではなく、連載中の最新話付近の流れです。

そのため、タイトルやあらすじ、序盤において読者の『期待感』がどこにあるのかよく分からない、というのが大きな欠点だと感じました。


テンプレはテンプレで「俺は異世界モノが好きで、そういうお決まりの流れが見たい」という読者が存在し、その読者の需要や期待に応える必要があります。

ハーレムものであれば「どんな可愛い女の子がたくさん出てくるんだろう」という期待。

チート、もしくは反チートであれば「どんな最強能力、もしくはゴミみたいな能力を駆使して活躍していくのか」という期待。

宗教対立でも「現代日本人の価値観を持った主人公が、異世界における宗教の矛盾や悪意を看破して論破し、ギャフンと言わせる展開」という期待。


などなど、作品を読む場合はその物語に対して、『期待』というものを全ての読者は持っています。

推理小説ならどんなトリックが出てくるのか、SFならどんな技術が出てくるのかな、とか。


今作においては、非チート非ハーレムなのは別に良いんですけど、じゃあどのポイントに期待して、ワクワクしながら読めば良いのか、そこが個人的にはちょっと見えなかったです。

例えば、作中の魔術がプログラミングじみていて、日本でプログラマーだった主人公が社畜時代のスキルを活かして新魔術(プログラム)を構築するとか。異物である主人公が、現地の信仰や価値観に新しい風を吹き込み、しかしそれを危険視した教会勢力に対して仲間達と共に立ち向かっていくとか。そういう話なんだろうな、というワクワクや期待感があれば、グイグイ読み進めることができます。


前にレビューした怪獣モノであれば「どんなデザインの怪獣が出てきて、どれくらい街で大暴れしてブッ壊して、自衛隊はどう対応して、少年少女はどんな奇跡を起こして解決するのか」と最初から最後まで『期待』を持ちながら読むことができました。


しかし『チートなんざクソくらえ』は、そういう『要』や『本筋』が7万文字の時点でもよく見えてこず、「これから面白くなりそう!」という期待感をうまく持てなかった印象です。


とはいえ、凄くライトでなくても文章自体は読みやすく、キャラ達の掛け合いや作中の設定・世界観などは、シッカリと書かれています。

魔術や宗教といった要素も、今後の展開次第でいくらでも面白くできる可能性に満ち溢れていると感じました。現在7万文字ですが、ルイの冒険や物語はまだまだ始まったばかりでしょう。本筋にはまだ入っていないのかもしれません。


ですので今後に『期待』です!

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