『ガラス細工の心臓』感想
タイトル:ガラス細工の心臓
作者:シィータソルト
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330660655670437
キャッチコピー:脆い心臓は今日も保てるかわからない
あらすじ:
幼馴染で両片思いしている琥珀(こはく)と翡翠(ひすい)。翡翠の心臓は特殊な病気にかかっており、それはガラスでできていることである。刺激になることはなるべく避けたいところだが、片思いしている琥珀への気持ちで今日も一杯。治療方法は不明だが、とにかくこの気持ちを隠している。琥珀も翡翠への刺激になるだろうと隠しているといった具合に二人の気持ちは両片思いとなっているのだ。果たして、二人の気持ちは成就するのだろうか?
読了時の文字数:6000字完結済
送った星:☆☆
送ったレビュー:『ガラスのハートが砕けぬように』
『心臓がガラスでできている』という面白いアイデアをもとに、少女同士の甘くドキドキな恋愛模様が描かれた短編百合小説です。
お互いがお互いを想いつつ、心拍数が上がりすぎると危険なため告白できなかったり距離を詰め切れなかったり……と、アイデアやシチュエーションを最大限に活かし、そしてラストには意外なオチが待っているのが良かったです。
二人には今後とも末永くイチャイチャしてほしいですね。
感想
お次は短編百合小説。今日はもう終わりって言ったのに、短編ならイケるやろと思って手を出したのが運の尽き。非常にレビューが悩ましいです。
比喩ではなく『本当に心臓がガラスでできている』少女の翡翠と、幼馴染である琥珀の関係性や恋愛を描いた、短めの百合ストーリーです。
心臓がガラスでできているため激しい運動などできるはずなく、そして心拍数が上がらないよう精神的にもドキドキすることが憚られる思春期の少女・翡翠。そんな彼女に想いを寄せる琥珀との、互いに甘くじれったい心情や関係性が見事に描かれています。
個人的に百合ジャンルも好きなので、面白いアイデアに感心しつつ、サックリと読み終えることができました。
ちなみに百合カプだとレイマリめーさくてるもこスレミオちさたき純愛なかよし川エデレスとかが好きです。なに言ってるか分からない人は分からないままで良いです。
ただ依頼時のリクエストにあった「どうすれば編集者の目を惹くことができるか」という質問には、非常に答えにくいです。そもそもそんなん僕だって知りたい(正直者)。
個人的な推測を言うとするなら、編集者や出版社が数多あるWeb小説の中で『何か』に注目するのであれば、それは恐らく『ニーズがあるか』『独創性があるか』の大きく二つに分けられると思います。もちろん他にも色々あるでしょうけどね。
ニーズがあるというのは「多くの読者を獲得しているか」、そして「商品として出した時に利益をもたらすだけのポテンシャルがあるか」という点だと思います。
ただ短編小説においては、あまり関係ない部分なので今回は除外します。
そして『独創性』という部分では、今までに全くなかったワケじゃないけど、その作者ならではの発想や面白さ、目新しさを提示できているかどうか、というのが大事になってくるんじゃないかと思います。
今回の作品は「『ガラスの心臓』という言葉があるけど、じゃあ実際に心臓がガラスだったらどうする?」というアイデアが注目ポイントになります。
その発想自体は面白いと思いますが、取り立てて斬新なアイデアや特別話題になるようなテーマではないのかもしれません。
横浜駅が増殖して本州を覆うとか、主人公がスライムとか、変な間取りの家を調べていったらヤバイ真相に行き着くとか、それくらいのアイデアがないと編集者や出版社の目には留まりにくいのかなと思います。世知辛いですね。
ただ奇抜なアイデアでなくとも、地力が高ければ評価される可能性もあります。
その点で言えば、アイデアに対する文体や文章のチョイスも重要になるのかなと。
作中では三人称が採用されていましたが、たぶんこの内容なら翡翠か琥珀(おそらくこの場合は琥珀)の一人称視点で描いた方が良かったと感じました。そうすれば解像度が上がるというか、本人の心情をメインにした繊細な描写が更にできたのではないかなと思います。
Web小説にしては改行や余白が少なく、画面が文字でギュッと詰まってる印象を受けました。なので、それこそガラス細工のように繊細で透き通った文章を作中で描けていれば、更に評価が上がったのではないかなと思います。
こうして無責任に言うのは簡単ですけどね。
文体やスタイルを変えるというのは非常に難しいことですから、あくまで参考というか個人の意見として受け取ってください。
あと部長や先生といったキャラを出さず、短編ですし思い切ってメインキャラのみに限定するのもアリかなと。そうやって『二人きりの世界』を、更に濃厚に描くというやり方もあったと思います。
総じて、決して悪い内容ではないのですが、『編集者や出版社の目に留まるレベル』を求めるとなると、今までになかったと感じられるような斬新さ、そしてそれを表現しきる文章や構成というものが必要になってくると感じました。うーん大変。
そもそも短編って長編を書くより難しいですからね。限られたボリュームの中で、キャラや起承転結や発想力を示して綺麗にまとめないといけないんですから。
とはいえ翡翠と琥珀の関係性やお互いへの感情、『百合』という部分では百合好きとして何の文句も改善点もありません。
そこは自信を持って、今後も良質で尊い百合作品を生み出していってほしいと思います。
それを続ける中で、百合界隈に新風を巻き起こすようなアイデアが生まれ、シッカリとした技術で100%表現できれば、きっと編集者達は放っておかないはずです。
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