『手のひらの花火』感想

タイトル:手のひらの花火


作者:京野 薫


作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093076210983908


キャッチコピー:その愛は、甘くて苦い


あらすじ:

中学教師の涌井由香里(わくいゆかり)は、1年の担任をしながら仕事に情熱を向けている日々だった。


波風立てないように、問題を起こさないように日々を進める。


そんな毎日に満足しながらも、どこかで「色付いた日々」を強く求めてもいた。

だが、同性愛者である自身の内面もあり、目立ち過ぎないよう過ごす日々を送る由香里の中で、入学と共に他県から転校してきたクラスの女子生徒「石丸有紀(いしまるゆき)」の存在が少しずつ大きくなって行く。


彼女と接するたび強まる禁じられた感情と色付く日々。


しかしそれは、ある出来事を切っ掛けに思いもしない方向へ由香里の日々を捻じ曲げていく……


★最初は数日おきの投稿予定ですが、基本毎週金曜の夕方〜夜に投稿となりますm(_ _)m


読了時の文字数:37000字連載中


送った星:☆☆☆


送ったレビュー:『触れてはいけない。それでも触れたい』

まだ連載中の作品ですがメチャメチャ面白かったです。

教師と生徒の禁断の関係、しかも対等ではなくむしろ教え子に日常や心情を侵食されていくような展開が続き、甘い百合モノとはまた違ったドキドキ感が押し寄せてきました。

揺れ動く感情や緊迫感の描写が巧みで、読めば読むほど目が離せなくなるストーリーだと思います。

今後の展開がどうなるか、そしてどんな結末を迎えるのか注目の作品です。



感想

連載中の作品に星3つを送ってしまうと、それ以上に評価できなくなるということなので、僕は基本的に連載中作品はあまり高評価しない傾向にあります。しかし今作は、マジで面白くて星3つ評価にしちゃいました。


中学教師の涌井由香里は同性愛者であることを周囲に隠しつつ、日々の仕事に追われていた。そんな時に教え子である一年生の『石丸有紀』が雨の中ずぶ濡れでいる姿を目撃し、自身の部屋に招く。

それをキッカケに、石丸有紀の存在を起点として、由香里の日常や歯車は徐々に狂い始めていく――。


教師と生徒の百合モノということで、読む前はアラいいですわねと軽い気持ちでいましたが、読み進めていくと作品の持つ『魔力』にどんどん吸い込まれていってしまいました。百合の花にしては棘や毒が凄いぞコレ。


主人公の涌井先生視点で語られることにより、彼女の内面の詳細な部分まで伝わってきて、感情移入や物語への没入感がとても増しています。

依頼時に「心情描写について」とのコメントがありましたが、心の描き方としては、かなりレベルが高い文章だと思います。

そして涌井先生の一人称視点であるため、魔性の生徒『石丸有紀』の底知れなさ、何を考えているのか分からない具合が際立ち、読者も先生と一緒に石丸さんに翻弄されてしまいます。でもそれが不思議と心地良かったりもしてね……。


中学一年生でありながら謎の魅力や妖艶さ、そして恐ろしさを感じさせる石丸さんのキャラ造形が素晴らしく、次の展開が見たくてどんどんページをめくってしまいます。コレ読者も石丸さんの甘い毒におかされているよね。

「展開の起伏について」という依頼時コメントがあり、そういう点で言えば派手な事件やクリフハンガー的要素は少ないです。

しかし石丸さんの言動とそれに右往左往する涌井先生の関係に注目が集まり、飽きない展開で続きが気になる構成になっていると思います。


ここからどんな展開になっていくのか、どういうオチが待ち受けているのか。感想企画が終わっても連載を追いかけたくなるレベルでした。


欠点や改善点・指摘点はないですが、『懸念』があるとすれば、まさにその『今後の展開』だと思います。

この手の作品は序盤が面白くて魅力的なだけに、途中で中弛みしたり、賛否が分かれる結末を迎えると、それまでの期待感や高評価が悪い方向に反転しかねないです。

また石丸さんの策士っぽさや大人を手玉に取る魔性っぷりが存分に発揮されていますけれど、匙加減を間違えると読者の反感を買いかねない危うさも秘めていると思います。

まぁその『危うさ』もキャラの魅力になっているんですけどね。周りが石丸さんを嫌いになっても、石丸さんの危うさを理解して守ってあげられるのは私だけなの……。


そんな感じで今後の展開に期待と不安を抱えつつ、目が離せなくなる作品です。

それはまさに石丸さんとの関係に対して期待と不安、興味と恐怖、愛しさと危うさを同時に感じている涌井先生のようで、そういう意味でも秀逸な物語でした。


早くオチが読みたいので、ラストまで全部一気に公開してくれませんかね(無茶な要求)

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