『魔王ルシファーの怪物退治!〜異世界転移した最強の魔王は魔物を持ち帰り現代を侵略する〜』感想
タイトル:魔王ルシファーの怪物退治!〜異世界転移した最強の魔王は魔物を持ち帰り現代を侵略する〜
作者:勇者れべる1
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093078060972340
キャッチコピー:現代の魔王が怪物ハンターになり、異世界で暴れまわる!
あらすじ:
狡猾で残忍な悪魔の王ルシファー率いる悪魔の軍勢は、大天使ミカエル率いる天使の軍勢と現代で争っていた。
形勢は天使が有利で悪魔は劣勢。
そんな時にルシファーが女神の手違いで異世界転移してしまう。
そこは異世界の魔王が統治する魔物がはびこる異世界だった。
メデューサ、セイレーン、キマイラ、ハーピー、人狼、吸血鬼、伝説や神話上の怪物達がそこにはいた。
ルシファーはそんな怪物達をハンターとして狩りつつ、現代に持ち帰り戦力にする事を思いつく。
最終的には異世界でも魔王となり魔物達を根こそぎ奪うのだ。
そして実は異世界には天使がいて、ここでも天使と悪魔のいざこざが……。
これは優れた洞察力と超常的パワーで怪物達に立ち向かう、ブラックユーモア溢れるダークファンタジー。
※感想を頂けると滅茶苦茶嬉しいです!
※主人公は善人ではありません。念の為。
※この作品はフィクションであり、現実の人物、団体、事件、宗教には関係ありません。
※カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ハーメルンに投稿中です。
※最終話は前話からのひっかけみたいな話になってますので、最新話で読むか決める場合は一つ前の34話から読む事をお勧めします。
実質最終話からのTrueEndみたいなオチなので。
読了時の文字数:100000文字完結済
送った星:☆
送ったレビュー:『モヒートを愛する最強魔王、異世界で無双!』
堕天使ルシファーが異世界に転移し、その世界で無双していくというのは面白いアイデアだなと思いました。
多くの魔物が登場し、それらを圧倒的な力でねじ伏せて配下にしていくルシファー。飄々としながら悪辣さを発揮する魔王の、痛快な活躍が存分に味わえます。
決して善人ではなく暴力も煽りも何でもアリな最強主人公が、やがては異世界の魔王すらも倒して天使の軍勢に牙を剥く。
そんなストーリーに心惹かれる、全ての愛すべき厨二病患者たちにオススメです。
感想
魔王が主人公で天使や悪魔が登場するということで、個人的に親近感を覚える作品ですね。
僕も人生で初めて書いたWeb小説の主人公が魔王であり、カクヨムでは天使や悪魔や世界中の神々と日本の神が戦う『やおよろズ!』という作品を公開していますので。
そんな天使や悪魔達が存在する世界で、人類は彼らの家畜・奴隷となっていた。ホワイトハウスの大統領椅子に座る魔王ルシファーは天使軍との争いの最中、異界の女神メナスと出会い、異世界に飛ばれてしまう。
カクテルのモヒートを生み出す能力のみを望んだルシファーは、見慣れぬ異世界で魔物達を殺したり服従させていき、『この世界の魔王』に君臨することを目論む。
そして異世界を支配する魔王を目指したルシファーは、元の世界で天使達との決着を付けることができるのか――。
現代日本に住む普通のサラリーマンや学生、ニートなどが異世界召喚されチート能力を得てハーレムを築き無双する、というテンプレは既に使い倒されていると思います。しかし悪魔王ルシファーが異世界に転移する、というのは珍しくて個性的な設定だと感じました。「いやもう同じような作品あるよ」と知っている方は、情報提供お願いします。
存在自体がチートとも呼べるルシファーなので、基本的に苦戦したり動揺したりすることはありません。常に余裕を持ち、あらゆる状況や敵に対応し、異世界に存在する魔物達に対しても、神話や伝承の知識があるので簡単に倒したり従えたりします。
悪魔なので当然、他者に対する慈悲や優しさといったものはほぼ持ち合わせていません。利用価値があれば部下として使役しますが、そうでない者の末路は語るまでもないです。
そういった傍若無人な最強主人公、倫理観を持ち合わせていないダーク系ヒーロー、そして軽快な煽り言葉や余裕を崩さない圧倒的強者といった主役の活躍が見たい人には、オススメの一作だと思います。
所謂『なろう系』とはまたちょと違うかもしれませんが、それでも異世界系Web小説として文章はシンプルであり、小難しいことを考えずにルシファーの無双っぷりを楽しめます。会話も地の文も短めでテンポ良く進み、1エピソードごとに敵となる魔物が現れてはその回のうちに倒す……といった感じなので、ストレスフリーで物語はガンガン進行していきます。
ただ逆を言えば、それは文章的に描写力が特別優れているというわけではなく、物語の展開としても起伏が少なくドラマ性に欠けている印象でした。
しかし数多くある文章の指摘点に対して「こうしろ、ああしろ」と言うことは簡単ですが、他人に指図されて即座に改善できるものではないので、やはり多くの作品に触れてたくさん書いて試行錯誤を繰り返すしかないと思います。言われてすぐに修正できる人は、才能や実力のある人です。
強いてひとつ言うなら、地の文における読点がちょっと少ないんじゃないかな?と読んでいて思いました。
【以下引用】
リィンの予想は正しかった。
山羊の頭は怪しく光ると口を動かし呪文を唱えた。
すると山羊の頭が再び光り出し魔術の雷をフォルスとリィンに向けて放った。
警戒していた為間一髪で避けられたがその瞬間獅子の口から炎が吐かれた。
慌ててリィンの手を繋ぎキマイラの背後に瞬間移動するフォルス。
しかし常に相手の背後を取るという戦士の習性が今回は裏目に出た。
キマイラは尻尾の蛇を操るとリィンの体を噛んだ。
噛み傷自体は致命傷ではないが毒が体に回ってしまった。
このままでは毒死してしまうだろう。
幸いフォルスには治癒能力があり解毒もできるがそれには時間と集中力を要した。
瞬間移動もこの状況では長距離の物は使えない為、逃げ出す事もできない。
万事休すとフォルスが思ったその時である。
ドスン!という大きな足音が地面に響いた。
もし僕が同じ文章を書くなら
リィンの予想は正しかった。
山羊の頭は怪しく光ると、口を動かし呪文を唱えた。
すると山羊の頭が再び光り出し、魔術の雷をフォルスとリィンに向けて放った。
警戒していた為間一髪で避けられたが、その瞬間獅子の口から炎が吐かれた。
慌ててリィンの手を繋ぎ、キマイラの背後に瞬間移動するフォルス。
しかし、常に相手の背後を取るという戦士の習性が、今回は裏目に出た。
キマイラは尻尾の蛇を操ると、リィンの体を噛んだ。
噛み傷自体は致命傷ではないが、毒が体に回ってしまった。
このままでは毒死してしまうだろう。
幸い、フォルスには治癒能力があり解毒もできるが、それには時間と集中力を要した。
瞬間移動もこの状況では長距離の物は使えない為、逃げ出す事もできない。
万事休す――とフォルスが思った、その時である。
ドスン! という大きな足音が地面に響いた。
って感じに読点を入れると思います。
「いやそれだと文章にブツ切り感が出て、テンポ悪くならなぁい?」って感じる人もいるかもしれません。しかし『魔王ルシファーの怪物退治』は作品全体を通して読点が少なめだったので、それが読みにくさというか文章の平坦さを更に醸し出してしまっていると僕は思いました。
文章以外の部分で言うと、魔王ルシファーが異世界に行くアイデア自体は面白いと思いますが、あんまりそれがワクワク感に繋がっていない印象もありました。
現代で既に天使や魔王が君臨しているのに、改めて異世界に行って魔物と出会っても、新鮮さや驚きは少ないと思います。
魔法も魔物も存在しない世界の普通の人間が転生し、そこでファンタジー的な存在に出会うからワクワクするのであって、ファンタジーな悪魔がファンタジー世界に行っても、ギャップやサプライズ感は薄いのではないでしょうか。
ただ惜しいところではあると思います。
僕の書いている『やおよろズ!』は世界の神々と日本の神々がガチンコで戦う話なので、そこで海外の雷神VS日本の雷神といったドリームマッチ感や「どっちが勝つんだ!?」といったワクワク感が出て、読者の皆さんからご好評をいただけた一つのポイントなのかな、と自己分析しています。
なので、ルシファーが異世界に存在する数多の強力で有名な怪物達と激戦を繰り広げていく――といった話になれば「面白そう!」となったかもしれません。ですが基本的に、ケルベロスであろうとメデューサであろうとキマイラであろうとサックリ倒します。
最強主人公なので、それはそれで良いのかもしれませんが、読者が作品に対する期待感や楽しさのポイントを、もっと明確に置いてほしかったなと個人的には感じました。
あと、『魔王』という主人公のキャラクター性も、更に魅力的にできたのではないかなと思います。
これまた自作の話になって申し訳ないですが、僕のデビュー作は魔王主人公でありつつ、ニート気質でやる気がないというキャラでした。名作『はたらく魔王様!』でも、異世界の魔王が現代日本にやって来てバイトする……といった感じで、『恐ろしい存在』という魔王のイメージを逆手に取っています。
今作のルシファーは魔王なので当然強いし、悪魔だから善人ではないし、他者を見下して常に余裕たっぷりです。しかしそれは「まぁ、悪魔王だからそうだよね」って感じで、意外性や印象深いキャラ性というのは見えてきませんでした。
ただ『神』に向ける感情だとか、モヒートを生み出して酒場を経営する部分は個性が光っていたので、その辺でもっと『単なる凶悪で強いだけの魔王ではない』という側面を見たかったなと思いました。
たとえば魔王ルシファーが異世界転移して悠々自適に酒場経営スローライフをしつつ、そこでトラブルに巻き込まれて魔物を倒して従えたり、同じく転移してきた強力な天使達と戦って部下や酒場を守る……みたいな話だと、『魔王と経営者』のギャップが出て、最近流行っぽい要素も組み込めるのかなと思いつきました。
色々と長々言いましたが、Webラノベとして読みやすい文章や会話、物語のテンポの良さ、読者ウケする要素や無双っぷり、後半では天使達とのドラマ性を感じさせる展開の片鱗など、要所要所で面白さに繋がりそうなポイントはいくつか見えました。
それらはまだハッキリした長所ではなく『芽生えそうな種』といった感じですが、これを大事に育てていけば、Webで人気の作品を生み出せるのではないでしょうか。見込みが全くない、というワケではありません。
険しい道のりかもしれませんが、作者さん自身が楽しんで書き、読者の皆さんと一緒に物語を楽しみたい気持ちがあるのであれば、今後とも頑張っていただきたいと思います。
僕もデビュー作は文章や展開がメッチャクチャでボロカスに叩かれて売れずに1巻打ち切りになりましたが、試行錯誤を10年続けたおかげで、来週また新刊を発売できるようになりました。
今持っている要素を、面白さに繋がる『種』が花開けるように、頑張ってください。僕も今まで頑張ってきて、今後とも頑張り続けるつもりです。
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