歴史小説をあまり読まない方へ。新たな扉を開いてみませんか?

ジャンルは異世界ファンタジーとなっていますが、その要素としては瑞国という架空の中華風の国を舞台としているだけであり、ほぼほぼ歴史小説といってよいかと思います。ただ、歴史に詳しくなくとも、説明など配慮されていて読みやすい作品となっています。

この作品に出てくる登場人物たちは、腐敗してしまった国を良くしたいという強い意志を感じられ、とても魅力的に映りました。冤罪によって宦官にされた側仕えである楚清朗は、一度は人生を諦めて絶望の淵に立っていましたが、傲慢な皇太子である李翔令の本質に触れることで、国の未来を託すに相応しい資質を見出し、生きる目的を再び得ることができました。李翔令も、始めは己を愚物にせんとする宦官自体を良く思っていませんでしたが、楚清朗だけは違うと感じ、最後はその高潔さを誰よりも信頼するに至りました。

その過程が登場人物の心の内にも触れながら丁寧につづられており、文章に硬軟を織り交ぜることで、さらに際立って見える、そんな印象を持ちました。

国の支配権をめぐる水面下の闘争の中で、二人の絆は完全なものとなっていきます。楚清朗は李翔令に対して、当初は自身が終わりを迎えるための道具と思っていたところがあり、その後ろ暗さから李翔令を頼り切ることができずにいました。それゆえに楚清朗は命の危機にさらされることになるのですが……その最後には素晴らしい結末が待っていました。

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