選ばれし料理人ルネは、炎竜王ヴィクトールに魔法の料理を授ける「神の料理人」として力を発揮した。王からは「わが王冠」と称される。
しかし、ヴィクトール王はルネの大切なものを奪い、それがゆえにルネは出奔して霊山で死んだこととなった。
ある日、霊山で暮らしていたアメールは、食材から魔素マナを抽出できる「神の料理人」の力を隠し持って人知れず暮らしていた。
そこへヴィクトールの遺児エティエンヌが訪れたことにより、隠遁生活を送っていたアメールは「神の料理人」として、エティエンヌの「王冠」として求められることになる。
そうして食事による魔法を活かした戦記が繰り広げられます。
物語は折り返し地点に差し掛かった頃だと思いますので、今から一気読みをしてもじゅうぶんエンディングに間に合うでしょう。
ぜひ、一皿の魔術をご堪能くださいませ。
『神の料理人』ルネ・ブランシャール。様々な動植物に眠るマナを元に、魔法を扱える料理をつくれる料理人。
ヴィクトール国王・ヴィクトール・ド・ヴァロワに見いだされ、彼と特別な信頼関係があったことが冒頭で語られますが、その全貌は謎に包まれています。
ヴィクトール・ド・ヴァロワが亡くなって数十年、ルネ・ブランシャールも死にました。
あとに残ったのは、名を棄てた亡霊・アメール。
霊山エスカルデの山小屋で生活するアメールでしたが、ヴィクトールの第五王子にして後継者のエティエンヌ・ド・ヴァロワに見つかってしまいます。
ちょっとしたいざこざの後、仕方なくエティエンヌの元で働くことになったのですが、彼の性格はどうにもつかみ所がありません。
「被さってる見栄とか責任とか、全部取っ払ったら……本当のエティエンヌは、どんな奴なんだろうな」
そう、アメールも溢したほどに。
エティエンヌには共に歩んでくれる友が必要でした。かつての、ヴィクトールとルネ・ブランシャールのような……。
しかし、『神の料理人』ルネ・ブランシャールが何故亡霊となり、アメールとなったのか。その真相は謎に包まれています。
そして、国王としての責務を背負ったエティエンヌが持たねばならない重圧。彼はそれを背負って立派な王となれるのか?
謎と問題が混在するこの国で、アメールは何を成し、エティエンヌとどのような関係を築けるのか?
注目の作品です。
『神の料理人』と呼ばれていたルネ・ブランシャール。かつての国王に救われたことから格別の思いを抱いていましたが死に別れ、その思いは宙に浮いたままとなっていました。
霊山のマナで若返ったルネは、アメールと名を変えて日々を静かに過ごしていました。ある日、現れたのは、かつての国王の息子であるエティエンヌ。しかし、ルネが格別の思いを抱いていた、かつての国王とは似ても似つかない不肖の息子であったようで…。
そんな二人ですが、行動をともにするうちに関係性に変化が訪れていきます。まだ2章を読んでいる途中となりますが、マイナスから少しずつプラスになっていく感じがとても清いと感じました。
『神の料理人』の物語ですので、ファンタジー飯に関する設定も特筆するところです。美しく幻想的な描写で表現された料理の数々。また、魔法を発現させる戦術兵器としての側面もあって、これによって独特な世界観が構築されています。
ファンタジー飯とブロマンス、どちらの要素も美味しくいただける作品と思います。
『神の料理人』の料理を食べると、大いなる魔力を得る事ができます。
それは、戦争や社会の趨勢を変えることができるほどの力。
霊山に隠遁している男、アメール。
彼こそが『神の料理人』であり、かつて王に仕えて『神の力』という魔力を供給していた人物でした。
今は、山の厳しい自然の中でも、それなりに穏やかに暮らしていたのです。
そこへ現れたのが、エティエンヌ王子。
国内の混乱を治めるために、『神の料理人』の力を求めてやって来ました。
脅すような形で力を貸すよう求めてくる、エティエンヌ王子。
『神の料理人』アメールは……
さすがの文章力で綴られる、料理と戦いの異世界ファンタジー。
グルメなあなたも、ミリタリーなあなたも、満足させる逸品です。
この作品を食さないなんて、あまりにもったいないです。
食して『神の力』を手に入れましょう!
2章終わりまで拝読しました。
主人公は山奥で暮らすアメールと言う老人。彼は以前、強大な力を誇った王の「王冠」として、彼に仕えていたが、訳あってその元を離れ、別人として暮らしていたのでした。彼は王に見出された「神の料理人」であり、彼が料理した魔法の食材は、それを食べた特定の人物に「神の力」、つまり魔法を与えるのです。
一人ひっそりと暮らすアメールの元に、ある日「王子」を名乗るエティエンヌが訪ねてきます。王亡き後、戦乱が続く国を治めるために、彼もまた神の力を欲したのですが……
正体を隠しつつ神の料理人として若き王子に徐々に加担、そして惹かれていく主人公。王子の境遇を知り、徐々に彼の存在自体に惹かれていきます。折に触れて登場する主人公が料理を作るシーン、そしてそれを属するシーンの描写に重きが置かれていて、この物語の大きな鍵を握るのがタイトルの通り神の力を与える一皿。
今後王子がその料理を食べながら何を得、そして何を求めるのか。主人公と先王との間に何があって主人公が彼の元を離れたのか、そして、主人公は料理の腕をもって若き王子とどのように触れ合うのか。出てくる料理はもちろん、二人の関係性の行方も気になる秀作。引き込まれて一気に読めるので、今から読んでおくことを強くオススメ!