やっぱり私は、この狐に化かされているのかもしれない


運命からは逃げられない。でも、運命に従うつもりもない――。
アヤカシの花嫁となるためだけに、月城家に引き取られた紬は、進路や居場所、尊厳や家族、そして自由を奪われて生きてきた。
そしていよいよ、狐の当主へ嫁入りすることに。
自分を迫害する人間の贅を肥やすためだけに嫁入りさせられた紬は、彼らへの復讐のため、自殺行為に出る。

だがその計画は、夫となる狐のアヤカシ・詩に妨げられた。

「俺は、もっと人間と歩み寄りたいと思ってるよ」
「俺と一緒になる人は、幸せになってほしいから、望んで俺の妻になってほしい。それが、俺の望む結婚だよ」

花嫁とは名ばかりの生贄だと思っていた紬は、詩の誠意ある対応に戸惑う。けれど『愛』を奪われてきた紬は、信じることが出来ない。 
そこで二人は賭けをする。

「結婚は形だけのもので、俺からは紬の嫌がるようなことは何もしない」
「だけど、もし紬が俺のことを好きになったら、その時本当の夫婦になる」

期間は一年。
そして前提として、紬に何不自由ない生活を送らせる、と。
そして案内された先は……ゲームやマンガがある部屋だった。
生きるか死ぬかを考えて生きてきた紬は、突然降って湧いてきた娯楽に戸惑うばかり。
果たして、賭けの行方はいかに。

その他のおすすめレビュー

肥前ロンズさんの他のおすすめレビュー3,227