漬物がないとキレる

 是が非でも家で食べる父だったが、食卓に漬物がないとキレる。あと「ごはん」が美味しく炊けていない時も同じ態度だ。昭和も終わりに近づいたあたりに生まれた私からすると、そんなことでキレるなんて、と思えることではあるが、お酒が好きな父からすると、漬物はメインディッシュの一部。味噌汁もその仲間の一つ。いわゆる江戸時代のような食を好む人だった。おかずがどうであれ、漬物と味噌汁が欠けていると許せないタイプ。

 漬物に関しては、浅くつけられているものは好まず、ぬか漬けであれば、つけ過ぎて舌にピリッとくる感触があるくらいのものを好む。らっきょうで言えば、日本で人気の甘酢のらっきょうは嫌いで、塩らっきょうを好む。

 しかし、塩らっきょうはスーパーではあまり売られていない。過去に食品商社の卸で仕事をしていた私は、塩らっきょうを卸している競合他社の営業マンに、「私は塩らっきょうの方が好きなのですが、どうしてあまり売られていないんですかね?」

と尋ねたことがある。すると、塩らっきょうは売れないんだとか。その時に初めて塩らっきょうの需要の低さを知った。

 巷で出回る甘酢らっきょうを好まない父は、生のらっきょうが販売される時期になると、自分でらっきょうを漬けていた。漬物にうるさいせいか、父の作るらっきょうは確かに美味い。

 同様に梅干しにも同じことが言える。巷で人気の梅干しは、甘い梅干しが人気があるようだ。もちろん、塩っ辛い梅干しも売っているが、甘い梅干しの方が

多い。だから、最近は、母が自分で梅干しを漬けてくれるようになった。父もハッピーだったことだろう。


父への手紙

 漬物は確かに美味しいよね。お酒にとって、これ程ベストマッチした配偶者いません。漬物は、常にお酒のニーズに共感をして、サービスを提供してくれていたという、食品業界でも教えてくれなかった「最高の配偶者は、常に共感してくれる配偶者です」という言葉が頭の中に残すことができました。

 その頑固さも、捨てたものじゃないってことです。

 世の中の夫婦は、この共感を探し続けていたことを、教えてくれてありがとう。

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