「長渕剛(ごう)」と「WOWOW(ウォウウォウ)」

 父は、読書家であり、英語の読解も良くできた。だから、漢字の読みも英語の読みも問題はないはずだった。しかし、一部、どうもしっくりこない読み方で食い気味に来る癖が治らなかった。これを癖と言うのであれば、それは生まれながらに持っている行動パターンであり、それを持って生まれた才能と呼ぶ人もいることだろう。

 私は、それを才能と呼ぶ人間のうちの一人である。私は、長渕剛の高い声で歌っていた時代のファンであり、初めて聞いた「乾杯」は、若い時代にレコーディングされたものだ。小学校5,6年の担任が「乾杯」が好きで、よく教室で賭けていた。それを、子供ながらに記憶し、お気に入りの記憶の中にしまい込んでいた。

 長渕剛を初めて知ったのは歌手としてだったが、初めて見たのは、歌番組の中の彼ではなく、テレビドラマ「家族ゲーム」の中の彼だった。ドラマで見る彼の姿。主題歌の曲の声のトーンと、私が初めて聞いた彼の「乾杯」をうたっている時の声のトーンは一致しなかったため、本当に若いころのレコーディングが本人なのかと疑ったりもしたが、紛れもなく彼だった。

 父が長渕剛を知ったのは、「乾杯」「とんぼ」がきっかけだった。聞くのはこの2曲だけだったが、歌番組が多かった当時、テレビに長渕剛が出演すれば、私に部屋に来ては、「長渕がテレビ出ているぞ」と伝えに来てくれた。「あの、長渕ごう!」

 「ごうと書いてつよしと読む」と最初は教えてあげていたものの、そんな記憶はどこ吹く風のように、「つよし」という記憶が父には残っていなかった。恐らく、父の辞書に「つよし」という文字はなかったのだろう。

 父のもう一つの才能は、「英語は読めてもWOWOWは読めない」という能力である。ちなみに、「WOWOWは、ワウワウ」と読む民放衛星放送局の一つだ。私の過程では、有料の衛星放送には加入していなかったので、通常視聴することはできなかったが、WOWOWで放映する番宣はたまに見かけた。

恐らくキャンペーンで、たまに無料視聴ができたかもしれない。だからこそ、父の脳裏にその言葉が残っていたのだと思う。WOWOWは、映画も音楽も取り扱っていたし、父は映画も好きだったから、WOWOWを覚えていたのだろう。

WOWOWの番宣では、ナレーターがしっかりと「ワウワウ」と発音しているし、我々家族も「ワウワウ」と発音して父を交えて会話をする。にも拘わらず、私が「ワウワウ」と発音した会話の直後に「ウォウォウ」とシラっと言って何事もなかったかのように会話を続ける。そのシラっとに、家族はイラっとするし、時折、ムカっときながらも「ワウワウね」と言い直して父に返す。からの、「ウォウォウ」の再配達は続いた。

『「長渕剛がWOWOWでライブやっているぞ」と言った時の作者の意図を答えなさい。』という現代語の入試問題があったとすれば、その回答は、「長渕GOがウォウォウでライブやっているぞ」というのが、模範解答例となる。

父のこの才能は、英語の発音からアクセントが抜けきらない人には大方当てはまるかもしれない。英会話を大学以降から話し始めた人の場合、母国語のアクセントが抜けきらないことが多い。勿論、アクセントがほぼ抜ける人もいる。その違いは何か?

アクセントが抜けない人の特徴は、聞こえたままを、真似ることができない。英語に限らず、外国語の発音が上手と呼ばれる方々は、往々にして、自分が倣ってきた英語の発音が、ネイティブから聞く発音と違うことに違和感を持ち、ネイティブが発音したままの音を出そうというモノマネが上手である。

モノマネのタレントが、海外アーチストの歌まねで英語の発音が美味いのは、文字通りモノマネが出来ているからに他ならない。

父の場合、ネイティブがどれだけ本物の発音を披露しようが、「ペンソl」と聞こえた英語は「ペンシル」と言い返す。その延長上に「ながぶちごう」が存在し、「ウォウォウ」も微動だにしない。

父の行動パターンから学ぶ経営ノウハウ

継続的な学習と柔軟性の欠如

父は読書家であり、英語や漢字の読みには問題がない。しかし、特定の発音や読み方に固執してしまい、正しい発音や読み方を身につけることができていない。これから学べる経営ノウハウは、継続的な学習と柔軟性の重要性である。変化する市場や新しい情報を柔軟に受け入れ、適応する能力が求められる。


細部への注意

父が「長渕剛」を「長渕ごう」と読み続けたり、「WOWOW」を「ウォウォウ」と発音し続けることから、細部への注意が欠けていることが分かる。経営においても、細部に注意を払うことは非常に重要である。顧客のフィードバックや市場の動向、競合他社の戦略など、細かい点を見逃さずに対応することが、成功につながるでしょう。


コミュニケーションの重要性

家族が父の誤った発音を正そうとしても、父は同じ発音を繰り返す。これは、コミュニケーションの重要性を示しています。経営者として、正確で効果的なコミュニケーションを行うことが重要である。従業員や顧客との間で誤解を生まないようにすることが求められる。


適応力と改善意識の欠如

父が発音を改善しないのは、適応力や改善意識の欠如を示している。経営においても、常に改善し続ける意識が必要である。市場の変化や顧客のニーズに応じて、ビジネスモデルや戦略を適宜見直し、改善することが成功の鍵となることを忘れてはならない。


顧客視点の欠如

父が家族の指摘を受け入れず、自分の発音を続けることから、顧客視点の欠如が見受けられる。経営においては、顧客視点を持つことが非常に重要。顧客のニーズやフィードバックを真摯に受け止め、それに応じたサービスや製品の提供を行うことで、顧客満足度を向上させることができるというものだ。


父の行動パターンから、経営においては継続的な学習と柔軟性、細部への注意、効果的なコミュニケーション、適応力と改善意識、そして顧客視点の重要性を学ぶことができた。これらのノウハウを実践することで、ビジネスの成功と持続的な成長を実現することができるようになると信じている。貴重な教えをありがとう。

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